在宅介護では、主介護者の急病や入院、家族の突然の不在などにより、これまでの介護体制を急に維持できなくなることがあります。普段は家族の支援によって安定して生活できていても、緊急時の受け入れ先や連絡方法が決まっていなければ、本人・家族双方が大きな不安を抱えることになります。
緊急時に慌ててショートステイ先を探すのではなく、平常時から本人の生活情報や医療情報、介助方法、緊急連絡先等を整理し、利用可能な事業所を確認しておくことが重要です。ここでは、急な介護困難に備えてショートステイ利用体制を整えておきたいケースを想定し、居宅サービス計画書第1表・第2表の文例を紹介します。
この文例が参考になるケース
- 主介護者が一人で介護を担っている
- 介護者自身にも持病がある
- 他にすぐ対応できる家族がいない
- 主介護者が急に入院する可能性がある
- 家族の急な不在時の支援先を決めておきたい
- 本人だけで数日間生活することが難しい
- 服薬や排泄、食事等に支援が必要
- 普段からショートステイ先に慣れておきたい
- 緊急時の連絡方法や受け入れ先を整理しておきたい
※文例はそのまま使用するのではなく、本人のADL・IADL、認知機能、医療上の留意点、家族構成、緊急時に対応できる支援者、利用可能な事業所、本人・家族の意向などに合わせて調整してください。
想定する利用者像
家族と二人で在宅生活を続けている。本人は屋内移動や食事は概ね自分で行えるが、服薬管理、入浴、排泄の一部、外出等には家族の支援を必要としている。近隣に日常的な介護を代われる親族はおらず、現在の生活は主介護者の支援によって成り立っている。
主介護者自身にも持病があり、「もし自分が急に入院したら本人をどうすればよいか」と不安を感じている。本人も家族がいない状態で一人で生活することには不安があるため、緊急時に利用できるショートステイ先を確認し、必要な情報を事前に整理しておくことを検討している。
利用者及び家族の生活に対する意向
本人の意向
おすすめ文例
できるだけ今の家で生活を続けたい。家族に何かあったときには、一人で無理をせず安心して過ごせる場所を利用したい。
別の表現
普段は自宅で暮らしたいが、急に家族がいなくなったときのことは心配である。困ったときに安心して泊まれる場所を決めておきたい。
家族の意向
おすすめ文例
自分が急に入院したり介護できなくなったりした場合にも、本人が困らないようにしておきたい。利用できるショートステイ先や必要な情報を事前に整えておきたい。
別の表現
普段は自宅で介護を続けたいが、何かあったときに頼れる場所がないことが不安である。緊急時でも本人が安全に生活できる体制を作っておきたい。
居宅サービス計画書 第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
以上の利用者及び家族の意向を踏まえ、本人は今後も家族と住み慣れた自宅で生活を継続することを希望している。現在の日常生活は主介護者による服薬管理、入浴、排泄等の支援によって成り立っているが、介護者自身にも持病があり、急病や入院等によって突然介護を行えなくなる可能性がある。他に日常的な介護を担える家族がいないため、緊急時に本人が一人で生活を継続することは難しい。介護が困難となってから受け入れ先を探すのではなく、平常時から利用可能なショートステイ事業所を確認し、本人の生活習慣、服薬、健康状態、介助方法、緊急連絡先等を整理しておく必要がある。本人が環境変化による不安を感じにくいよう、必要に応じて事前利用等も検討しながら、緊急時にも生活が途切れない支援体制を整えることが課題である。
別の表現
以上の利用者及び家族の意向を踏まえ、本人は家族の支援を受けながら安定した在宅生活を送っているが、現在の介護体制は主介護者への依存度が高く、介護者に急な体調不良や入院等が生じた場合には生活を維持できなくなる可能性がある。本人・家族ともに緊急時への不安を感じているため、ショートステイを含めた代替支援を事前に整理しておく必要がある。本人の身体状況や医療情報、日常の介助方法を関係者間で共有し、緊急時にも速やかに必要な支援へつながるよう連絡体制と受け入れ先を確認しておくことが必要である。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が希望する在宅生活を継続するとともに、主介護者の急病や入院等が生じた場合にも本人の生活が途切れないよう、平常時から緊急時の支援体制を整える。本人のADL、認知機能、食事、排泄、入浴、移動、服薬、睡眠等の生活状況と、健康管理上の留意点を整理し、必要に応じてショートステイ事業所や関係職種と共有する。緊急連絡先、かかりつけ医、服薬内容、保険証類、本人が安心しやすい関わり方等についても家族と確認し、急な利用時に必要な情報を速やかに伝えられるよう準備する。本人が初めての環境で強い不安を感じる可能性がある場合には、平常時に短期間のショートステイ利用や見学等を行い、事業所や職員に慣れる機会を作る。緊急時にはケアマネジャー、家族、ショートステイ事業所、必要に応じて医療機関等が速やかに連携し、本人の安全と生活継続を確保する。主介護者の健康状態についても継続的に確認し、緊急時対応だけでなく、介護者が無理をしている場合には通常時のサービス利用も見直す。本人と家族が「何かあっても支援につながる」という安心感を持ちながら在宅生活を続けられるよう支援する。
別の表現
緊急時に初めて対応方法を検討するのではなく、平常時から本人に必要な支援と連絡先を整理し、介護者不在時にも速やかに支援へ移行できる体制を作る。本人の状態については、できることと介助が必要なことを具体的に整理し、ショートステイ利用時に必要となる服薬、食事形態、福祉用具、排泄方法、夜間の対応等を共有する。主介護者以外の家族や支援者についても、どこまで対応可能かを確認し、実際に支援できる人を明確にしておく。急なショートステイ利用に備えて、本人が安心して持参できる物品や必要書類等も家族と確認する。本人や家族の状況が変化した場合には緊急時の対応方法も見直し、実際に機能する支援体制を維持する。
居宅サービス計画書 第2表の文例
ニーズ1
ニーズ
家族に急なことがあっても、安心して生活できるようにしておきたい。
長期目標
主介護者が急に介護できなくなった場合にも、必要な支援を受けながら安全に生活できる。
短期目標
緊急時に利用できるショートステイ先や連絡方法を本人・家族・支援者で確認できる。
サービス内容
緊急時の連絡先、利用可能なショートステイ事業所、支援開始までの流れを整理し、本人・家族・関係職種で共有する。
ニーズ2
ニーズ
急にショートステイを利用することになっても、自分のことを分かってもらいたい。
長期目標
緊急利用時にも本人の生活習慣や介助方法が共有され、普段に近い支援を受けることができる。
短期目標
本人の生活情報、服薬、介助方法、健康上の注意点等を事前に整理できる。
サービス内容
本人の生活歴、ADL、服薬、排泄、食事、睡眠、福祉用具等の情報を整理し、必要時に速やかに事業所へ提供できるよう準備する。
ニーズ3
ニーズ
いざというときにも、不安を感じすぎず過ごせる場所を持っておきたい。
長期目標
自宅以外にも安心して過ごせる場所があり、必要時に無理なく利用できる。
短期目標
必要に応じて事前利用や見学を行い、事業所の環境や職員に慣れることができる。
サービス内容
本人の不安の程度を確認し、必要に応じて平常時から短期利用や見学等を行う。安心できる過ごし方や関わり方を事業所と共有する。
ニーズ4
ニーズ
家族にも自分の体調を大切にしてもらい、無理なく介護を続けてほしい。
長期目標
家族が自身の健康を維持しながら、緊急時にも一人で介護を抱え込まずに在宅生活を支えることができる。
短期目標
家族が体調不良時に無理をせず、早い段階で支援者へ相談できる。
サービス内容
主介護者の健康状態や介護負担を確認し、体調悪化時には早期にケアマネジャー等へ相談できるよう支援する。必要に応じて通常時のサービス利用も調整する。
第2表の完成イメージ
| ニーズ | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 家族に急なことがあっても、安心して生活できるようにしておきたい。 | 主介護者が急に介護できなくなった場合にも、必要な支援を受けながら安全に生活できる。 | 緊急時に利用できるショートステイ先や連絡方法を本人・家族・支援者で確認できる。 | 緊急連絡先、利用可能な事業所、支援開始までの流れを整理して共有する。 |
| 急にショートステイを利用することになっても、自分のことを分かってもらいたい。 | 緊急利用時にも本人の生活習慣や介助方法が共有され、普段に近い支援を受けることができる。 | 本人の生活情報、服薬、介助方法、健康上の注意点等を事前に整理できる。 | 生活歴、ADL、服薬、排泄、食事、睡眠等の情報を整理し、必要時に速やかに提供できるよう準備する。 |
| いざというときにも、不安を感じすぎず過ごせる場所を持っておきたい。 | 自宅以外にも安心して過ごせる場所があり、必要時に無理なく利用できる。 | 必要に応じて事前利用や見学を行い、事業所の環境や職員に慣れることができる。 | 本人の不安を確認し、平常時から短期利用や見学等を行い、安心できる関わり方を共有する。 |
| 家族にも自分の体調を大切にしてもらい、無理なく介護を続けてほしい。 | 家族が自身の健康を維持しながら、緊急時にも一人で介護を抱え込まずに在宅生活を支えることができる。 | 家族が体調不良時に無理をせず、早い段階で支援者へ相談できる。 | 介護者の健康や負担を確認し、必要に応じて通常時からサービス利用を調整する。 |
ケアプラン作成時のポイント
緊急時への備えでは、「必要になったらショートステイを探す」という計画では十分ではありません。実際に利用できる可能性のある事業所、誰が連絡するのか、本人の情報を誰が持っているのかまで具体的に整理しておくことが重要です。
また、緊急時には普段介護を担っている家族自身が対応できない可能性があります。そのため、主介護者しか分からない情報を減らし、本人の生活や医療に必要な情報を関係者と共有できる形にしておくことが大切です。
文例を使うときのポイント
「緊急時」といっても、介護者の入院、家族の急用、災害等で必要な対応は異なります。本人が一人でどこまで生活できるのか、誰に連絡できるのか、何日程度の支援が必要になる可能性があるのかを整理して文例を調整します。
本人が初めてのショートステイを強く不安に感じる場合には、緊急時だけ利用しようとすると受け入れが難しくなることがあります。平常時から見学や短期間の利用経験を持つことで、いざというときに利用しやすくなる場合があります。
まとめ
緊急時への備えは、実際に問題が起きてから始めるのではなく、在宅生活が安定しているうちに整えておくことが重要です。
ショートステイ先、連絡体制、本人の生活・医療情報を事前に整理し、必要に応じて本人も事業所に慣れておくことで、主介護者に急な事情が生じた場合にも本人の生活を途切れさせず、安心して在宅生活を継続できる支援につなげます。


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