通所介護の個別機能訓練加算は、デイサービスで運動を行っているだけでは算定できません。機能訓練指導員の配置、居宅での生活状況の確認、多職種による計画作成、本人・家族への説明、訓練の実施記録、3か月ごとの居宅訪問と評価・見直しまでを一連の業務として運用する必要があります。さらに個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定する場合は、LIFEへの情報提出とフィードバック活用も必要です。本記事では、Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱの違いを確認したうえで、自事業所がどの区分を検討できるか、実務をどう回すか、次にどの計画書・文例・ツールを使うかまで整理します。
まず確認|Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱの違い
ⅠイとⅠロは、主に機能訓練指導員の配置体制が異なります。Ⅱは別の訓練を行う区分ではなく、ⅠイまたはⅠロを算定したうえで、LIFEへの情報提出と活用に関する要件を満たした場合に上乗せする月単位の加算です。
| 区分 | 単位 | 基本的な位置づけ | 人員配置 | LIFE | 主な確認ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| Ⅰイ | 56単位/日 | 基本となる配置区分 | 専ら機能訓練指導員の職務に従事する有資格者を1名以上配置 | Ⅰイ単独では不要 | 配置時間内に、計画作成への関与、直接訓練、効果評価を行えるか |
| Ⅰロ | 76単位/日 | Ⅰイより手厚い配置区分 | Ⅰイの配置に加え、専従の有資格者を1名以上配置。合計2名以上を同時配置 | Ⅰロ単独では不要 | 2名以上が重なる時間帯と、その時間帯に訓練を受けた利用者を特定できるか |
| Ⅱ | 20単位/月 | ⅠイまたはⅠロへの上乗せ | ⅠイまたはⅠロの体制が前提 | 必要 | 必要情報の提出、提出期限、エラー対応、フィードバック活用を継続できるか |
最初の判断:「機能訓練指導員が何人在籍しているか」ではなく、営業日ごと・時間帯ごとに何名を専従で配置でき、その時間帯に誰へ訓練を実施したかを確認します。Ⅰロを算定できない日でも、Ⅰイの要件を満たしていれば、その日はⅠイを算定できます。営業日ごとの体制が異なる場合は、利用者へあらかじめ説明しておく必要があります。
自事業所はⅠイ・Ⅰロのどちらを検討できる?
| 判断項目 | Ⅰイ | Ⅰロ |
|---|---|---|
| 基本配置 | 専従の機能訓練指導員1名以上 | Ⅰイの配置を満たす |
| 追加配置 | なし | 専従の機能訓練指導員をさらに1名以上 |
| 配置時間 | 具体的な一律時間はないが、計画・直接訓練・評価に必要な時間を確保 | 2名以上が同時に配置される時間帯を明確化 |
| 算定対象 | 要件を満たす体制で個別機能訓練を受けた利用者 | 2名以上の同時配置時間帯に個別機能訓練を受けた利用者 |
| 単位差 | 56単位/日 | 76単位/日 |
| 管理上の焦点 | 専従時間と業務実態 | 2名の勤務時間の重なりと利用者別実施時刻 |
たとえば、1人目を9時から12時、2人目を10時から13時に専従配置した場合、Ⅰロを検討できるのは2名が重なる10時から12時に訓練を受けた利用者です。9時から10時、12時から13時に訓練を受けた利用者は、ほかの要件を満たせばⅠイの対象となります。勤務形態一覧表だけでなく、当日のシフト、訓練実施時刻、担当者を照合できる運用が必要です。
機能訓練指導員になれる職種
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 看護職員
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ指圧師
- はり師・きゅう師(所定の実務経験要件を満たす者)
はり師・きゅう師は、理学療法士等の資格を持つ機能訓練指導員を配置した事業所で、6か月以上機能訓練指導に従事した経験が必要です。また、資格を保有していることと、加算要件を満たす形で専ら機能訓練指導員の職務に配置されていることは別です。資格証、雇用・勤務状況、専従時間、実際の担当業務を一緒に確認します。
個別機能訓練は「運動メニュー」から考えない
個別機能訓練の起点は「筋力をつける」ではなく、利用者が居宅で続けたい生活です。考える順番は、生活上の希望 → 必要な活動 → 必要な身体・認知機能 → 訓練内容です。運動の実施自体を目標にすると、デイサービス内で歩けても居宅生活が変わらない計画になりやすくなります。
ケース1|自分でトイレへ行きたい
必要な活動は、ベッドからの起き上がり、立ち上がり、方向転換、トイレまでの移動、下衣操作、便座への着座です。評価では下肢筋力だけでなく、手すりの位置、夜間の照明、尿意から移動開始までの時間、家族が介助できる範囲も確認します。訓練は、立ち上がり練習、実際の動線を想定した歩行・方向転換、支持物を使った下衣操作など、生活工程に結び付けます。
ケース2|台所で簡単な調理を続けたい
必要な活動は、台所までの移動、立位保持、物品の取り出し、両手操作、手順の確認です。居宅訪問では調理台の高さ、収納位置、椅子を置ける場所、家族が任せたい工程を確認します。訓練は長時間の立位だけでなく、椅子を使いながら安全に盛り付ける、冷蔵庫から必要な物を選ぶなど、本人が実際に担う工程へ調整します。
居宅訪問では何を見る?
居宅訪問は「家を見るため」ではなく、生活目標と訓練内容を結び付けるために行います。計画作成時に居宅生活を確認し、その後も3か月ごとに1回以上訪問して、生活状況と計画の進捗を確認します。
- 移動環境:段差、手すり、床面、家具配置、屋外までの動線
- 起居・排泄:ベッドの高さ、立ち上がり方法、トイレまでの距離、便座周辺
- 家事:台所の高さ、収納、洗濯物を扱う場所、休憩場所
- 外出:玄関、上がり框、門扉、道路状況、普段の移動手段
- 本人の役割:食事準備、片付け、ペットの世話、趣味、近隣交流
- 家族支援:見守れる時間、介助方法、負担、本人に任せたい工程
居宅で実際に行えている動作と、本人・家族の説明に違いがある場合もあります。危険な動作を無理に再現させず、環境、普段の方法、支援状況を組み合わせて判断します。
算定開始から3か月評価までの流れ
1.居宅訪問
生活環境、本人の役割、できている工程、支援が必要な工程を確認
↓
2.生活状況・ニーズ把握
本人・家族の希望と、通所介護で支援する生活課題を整理
↓
3.多職種で計画作成
目標、訓練項目、実施時間、担当職種、評価方法を具体化
↓
4.本人・家族へ説明
生活目標との関係、実施内容、評価方法を共有し同意を記録
↓
5.個別または5人程度以下の小集団で訓練
利用者ごとの計画に沿って機能訓練指導員が直接実施
↓
6.実施記録
訓練内容、本人の反応、介助量、結果、次回の確認点を記録
↓
7.3か月ごとの居宅訪問・評価
身体機能だけでなく、活動・参加と居宅での変化を確認
↓
8.説明・計画見直し
本人・家族の意向を再確認し、継続・変更・次目標を判断。Ⅱを算定する場合はLIFE提出とフィードバック活用を組み込む
個別機能訓練計画書はどう作る?
計画書は、本人・家族の希望 → 生活上の課題 → 長期目標 → 短期目標 → 訓練内容 → 評価の順でつなぎます。多職種で作成し、各職種が把握した生活状況やリスクを反映します。
| 例 | 記載内容 | 問題・改善点 |
|---|---|---|
| 悪い例 | 下肢筋力向上を図る | 何の生活動作につなげるか、達成を何で判断するかが分からない |
| 改善例 | 手すりを使用して居室からトイレまで移動し、日中の排泄動作を見守りで行える | 生活目標、使用環境、必要な支援、評価する動作が明確 |
訓練内容は「立ち上がり10回」だけで終わらせず、その訓練がトイレ移動のどの工程に必要かを記載します。目標の期間、介助範囲、使用する福祉用具、観察項目も決めておくと、3か月評価で達成度を判断しやすくなります。
個別機能訓練計画書の書き方・文例を見る / 長期・短期目標とサービス内容の文例を見る
個別機能訓練は何人で実施する?
個別機能訓練は、必ずしもマンツーマンだけを意味しません。機能訓練指導員が直接、個別または5人程度以下の小集団で行います。ただし、小集団で全員が同じ運動をすることが目的ではありません。利用者ごとの計画と生活目標に基づき、負荷、支持物、介助方法、反復回数、観察点を調整します。
同じ立ち上がり練習でも、トイレ移乗を目指す人、台所作業を続けたい人、屋外歩行を再開したい人では、開始姿勢、支持物、連続回数、評価する動作が異なります。集団の効率性と個別計画の固有性を両立させる必要があります。
誰が訓練を実施する?
加算に係る個別機能訓練は、配置要件を満たす機能訓練指導員が直接実施し、計画作成と効果評価にも主体的に関与します。介護職、看護職、生活相談員などは、多職種での情報共有、利用者の誘導、安全確認、日常場面での実施補助、生活上の変化の報告を担えますが、必要な機能訓練指導員の配置と直接実施を置き換えるものではありません。
実務では、機能訓練指導員が目標・禁忌・中止基準・介助方法を示し、介護職等が日常場面で観察した変化を返す流れを作ります。「誰が、いつ、どの計画に基づいて実施したか」を記録で追えることが必要です。
実施記録をどう残す?
- 実施日・実施時間・担当者
- 実施した訓練項目と負荷・回数
- 本人の反応、疼痛、疲労、安全面
- 介助量、見守り範囲、使用した福祉用具
- できた工程と難しかった工程
- 前回や普段との変化
- 次回確認すること、計画見直しが必要な兆候
「訓練実施。変化なし」では、計画との整合や効果を確認できません。たとえば「手すりを使用した立ち上がりを5回実施。開始時は軽介助、4回目以降は見守りで可能。右膝痛の増悪なし。次回は方向転換時の足運びを確認する」のように、事実、支援、結果、次回の確認点をつなげます。
3か月ごとの居宅訪問・評価・見直し
Ⅰイ・Ⅰロでは、個別機能訓練開始後も3か月ごとに1回以上、居宅を訪問して生活状況を確認し、本人・家族へ進捗を説明し、必要に応じて計画を見直します。評価は訓練回数だけでなく、身体機能、活動、参加の変化を確認します。
| 評価領域 | 確認例 |
|---|---|
| 身体機能 | 立ち上がり、歩行、バランス、関節可動域、疼痛、持久力 |
| 活動 | トイレ、入浴、屋内移動、階段、家事、更衣 |
| 参加 | 外出、趣味、家庭内役割、地域活動、人との交流 |
- 達成:維持のため継続するか、次の生活目標へ進む
- 一部達成:環境、介助方法、負荷、訓練項目を調整する
- 未達:疼痛、認知機能、体調、参加頻度、環境、目標設定の妥当性を分析して計画を見直す
個別機能訓練の評価メモシートを見る / 計画書の作成・見直し確認シートを見る
個別機能訓練加算(Ⅱ)とLIFE
個別機能訓練加算(Ⅱ)は、ⅠイまたはⅠロを算定する利用者について、個別機能訓練計画等の情報をLIFEへ提出し、フィードバックを機能訓練の適切かつ有効な実施に活用する場合に、1月につき20単位を上乗せする区分です。Ⅱだけを単独で算定するものではありません。
- 対象となる利用者・加算区分を確認する
- 必要な評価項目を計画書と日常記録から収集する
- 提出期限と担当者を決める
- エラーや未提出を確認し、修正履歴を残す
- フィードバックを会議で確認し、目標・訓練・評価方法の見直しへ反映する
「入力して送信した」で終わらせず、データから読み取れる変化と現場の観察を照合します。2026年5月以降は国保中央会運用LIFEへ移管されているため、利用登録・操作方法・提出様式は厚生労働省「LIFEの移管に係るQ&A」と「科学的介護」の最新案内で確認してください。
算定開始前の実務チェック
- 機能訓練指導員の資格証と、はり師・きゅう師の実務経験要件を確認した
- 勤務時間と専従配置を勤務形態一覧表・シフトで確認した
- Ⅰイ/Ⅰロの対象時間帯と利用者を区別できる
- 計画作成時と3か月ごとの居宅訪問を行える体制がある
- 多職種で作成する計画書様式と説明・同意の記録方法を決めた
- 実施日時・担当者・訓練内容・結果を残す方法を決めた
- 3か月評価の期限を管理できる
- Ⅱを算定する場合のLIFE提出・エラー確認・活用担当を決めた
- 体制届、添付資料、算定開始月を指定権者の最新案内で確認した
届出様式や締切は指定権者によって異なる場合があります。国の告示・通知だけで判断せず、算定開始前に所管する都道府県・市区町村等の最新案内を確認してください。
ⅠイとⅠロ、どちらを取るべき?
20単位の差だけでⅠロを選ぶのではなく、対象人数、利用回数、2名を同時配置できる時間、人件費、記録管理、欠勤時の代替体制を比較します。
試算例:対象利用者10人が月8回利用し、すべての回で要件を満たすと仮定すると、Ⅰイは56単位×10人×8回=4,480単位、Ⅰロは76単位×10人×8回=6,080単位です。差は月1,600単位で、1単位を仮に10円として考えると約16,000円です。ただし実際の請求額は地域区分等で変わり、ここから追加配置に必要な人件費や管理時間を考える必要があります。
対象者が多く、既存の勤務体制で2名の重複時間を安定して確保できる事業所はⅠロを検討しやすくなります。一方、追加配置のために新たな人件費が大きく発生する、欠勤時に体制を維持できない、実施時刻を利用者別に管理できない場合は、Ⅰイを確実に運用する方が現実的です。
運営指導に備えて確認しておきたいこと
- 勤務形態一覧表、シフト、実際の専従配置が一致しているか
- Ⅰロは2名同時配置の時間帯と利用者別の実施時刻を確認できるか
- 計画作成時と3か月ごとの居宅訪問記録があるか
- 機能訓練指導員、介護職、看護職、生活相談員等が共同して計画を作成した経過が分かるか
- 本人・家族へ計画と進捗を説明した記録があるか
- 計画の目標・訓練項目と実際の実施記録が一致しているか
- 3か月評価の結果が見直し判断へつながっているか
- ⅡではLIFEの提出記録とフィードバック活用を確認できるか
これらは「この書類さえあればよい」という一覧ではありません。公式要件と、事業所が算定根拠を説明するための実務資料を区別し、届出内容・勤務実態・計画・記録が同じ運用を示しているか確認します。
個別機能訓練加算で確認しておきたい運用上のポイント
- 居宅訪問が写真や間取りの確認だけになっていないか
- 本人が続けたい生活と目標がつながっているか
- 利用者全員が同じ運動・同じ目標になっていないか
- 計画にない訓練が慣例的に続いていないか
- 評価期限を過ぎていないか
- 本人・家族への説明内容と日付を記録しているか
- 職員の勤務変更後もⅠイ・Ⅰロの配置要件を満たしているか
- LIFE提出が目的化し、計画見直しに使われていない状態になっていないか
介護文例ナビで次にできること
| 次の作業 | 使えるページ |
|---|---|
| 計画書を作りたい | 個別機能訓練計画書作成ツール |
| 書き方を確認したい | 個別機能訓練計画書の書き方・文例 |
| 目標設定に迷っている | 長期・短期目標とサービス内容の文例 |
| 評価を行いたい | 個別機能訓練の評価メモシート・計画書の作成・見直し確認シート |
| 通所介護の加算全体を確認したい | 通所介護・デイサービスの加算一覧 |
まとめ
個別機能訓練加算は、居宅生活を確認し、生活課題を整理し、目標と計画を作り、訓練を実施し、3か月ごとに評価・見直す仕組みを評価する加算です。Ⅰイ・Ⅰロは実際の専従配置と訓練時間で判断し、ⅡはLIFEへの提出と活用を加えます。制度上の書類をそろえるだけでなく、「利用者が何を続けたいか」を起点に、デイサービスでの訓練が居宅での活動や参加へつながっているかを確認することが中心です。
主な確認資料
最終制度確認日:2026年10月22日
更新履歴:2026年10月22日 公開前QAでLIFE移管資料を追記し、制度数値・人員配置・居宅訪問・評価要件を再確認。
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」(2026年度対応版)
- 令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」
- 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)」
- 厚生労働省「LIFEの移管に係るQ&A」(令和8年5月以降)
本記事は実務上の確認手順を整理したもので、個別事業所の算定可否を保証するものではありません。算定時は最新の告示・通知・Q&Aと指定権者の案内を確認してください。


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