通所介護計画書【歩行・転倒予防】目標・サービス内容の文例集|生活範囲を狭めない支援

通所介護計画書で歩行や転倒予防について記載するとき、「転倒しないよう見守る」「下肢筋力を維持する」「安全に歩行する」といった表現だけになっていないでしょうか。

転倒予防は重要ですが、転倒を恐れるあまり歩く機会を減らし、家族や職員がすべて介助してしまうと、本人の活動量や生活範囲がさらに縮小することがあります。歩行支援では、単に「転ばないこと」だけでなく、本人がどこへ行きたいのか、何のために歩くのか、その移動を続けるために何が必要なのかまで考えることが重要です。

通所介護計画書では、立ち上がり、立位保持、歩行開始、直進歩行、方向転換、段差、歩行補助具の操作などを具体的に評価し、本人が自宅や地域で続けたい生活につなげて目標とサービス内容を設定します。

歩行・転倒予防を通所介護計画書でどう捉えるか

歩行能力は、単独で存在する能力ではありません。トイレへ行く、食卓へ移動する、玄関まで歩く、家族と買い物へ行く、庭に出るなど、さまざまな生活行為を支えています。

そのため、「歩行能力を維持する」という目標だけでは、本人にとって何のための歩行なのかが分かりません。

例えば本人が「自分でトイレへ行きたい」と希望している場合、必要なのは歩行距離だけではありません。椅子やベッドから立ち上がり、歩行補助具を操作し、方向転換し、便座へ安全に着座するまでの一連の動作が必要です。

歩行を生活行為の一部として捉えることで、通所介護で何を支援すべきかが具体的になります。

転倒リスクは「歩ける・歩けない」だけで判断しない

転倒には、身体機能だけでなく、環境、認知機能、服薬、体調、心理面など複数の要因が関係します。

  • 立ち上がり直後にふらつく
  • 方向転換で足が交差する
  • 歩行器を置いたまま歩き始める
  • 急いでトイレへ向かう
  • 疲労すると歩幅が小さくなる
  • 痛みをかばって左右差が大きくなる
  • 認知機能の低下により危険を予測しにくい
  • 暗い場所や段差で足元を確認しにくい
  • 転倒への恐怖から身体を硬くして歩く

このように、転倒歴の有無だけでなく、「どの場面で」「どのように不安定になるのか」を具体的に把握する必要があります。

アセスメントで確認したいポイント

評価項目確認する内容
立ち上がり足部位置、前方への重心移動、支持物、介助量、疼痛
立位保持ふらつき、支持物の必要性、両脚支持、片脚支持
歩行開始最初の一歩、歩行補助具操作、すくみ、ふらつき
直進歩行歩幅、左右差、足部の運び、姿勢、速度
方向転換足の踏み替え、歩行補助具操作、急な回転
段差足の上げ下げ、手すり使用、玄関や敷居への対応
持久力歩行距離、息切れ、疲労、休息後の回復
認知面危険認識、歩行補助具の理解、声かけへの反応
心理面転倒恐怖、歩行への自信、外出への不安
生活環境自宅動線、段差、照明、家具配置、手すり、敷物

「転倒予防」で避けたい目標と改善例

弱い表現改善例
転倒しない歩行器を使用し、自宅の居室からトイレまで安全に移動できる。
歩行能力を維持する現在の歩行能力を保ち、自宅内で必要な場所へ自分で移動できる。
下肢筋力をつける椅子から安定して立ち上がり、家の中を移動できる。
安全に歩行する杖を使用し、玄関まで歩いて家族との外出を継続できる。
見守りを行う本人が自ら歩く機会を確保し、方向転換や疲労時に必要な見守りを行う。

歩行・転倒予防の目標・サービス内容 文例集

1.自宅内を杖で移動しているケース

長期目標

杖を使用して自宅内を安全に移動し、現在の在宅生活を継続できる。

短期目標

杖を使用し、立ち上がりから方向転換を含む短距離歩行を安定して行うことができる。

サービス内容

立ち上がり、歩行開始、方向転換、歩行時のふらつきや疲労を確認する。本人の身体状況に合わせて下肢機能訓練、立位バランス練習、歩行練習を行い、施設内移動でも可能な範囲で本人が歩く機会を確保する。

2.歩行器を使用しているケース

長期目標

歩行器を使用して自宅内の必要な場所へ移動し、自分で行える生活動作を継続できる。

短期目標

歩行器を適切に操作し、居室からトイレ程度の距離を安定して移動できる。

サービス内容

歩行器との距離、ブレーキ操作、方向転換、立ち上がり時の使用方法を確認する。本人が安全に操作できる方法を統一し、施設内でも実際の生活を想定した移動機会を確保する。

3.立ち上がり時にふらつくケース

長期目標

自分で椅子から立ち上がり、必要な生活場所へ安全に移動できる。

短期目標

手すり等を使用し、立ち上がり後に姿勢を整えてから歩き始めることができる。

サービス内容

足部位置、体幹の前方移動、立ち上がり直後のふらつきを確認する。本人に合った椅子高や支持物を使用し、立ち上がり後に立位を安定させてから歩行を開始する練習を行う。

4.方向転換時に転倒しやすいケース

長期目標

自宅内で方向転換を含む移動を安全に行い、トイレや食卓へ自分で移動できる。

短期目標

急いで身体を回さず、小さく足を踏み替えながら安定して方向転換できる。

サービス内容

方向転換時の足の運び、歩行補助具操作、ふらつきを確認する。トイレや椅子への接近など生活場面を想定し、急な回転を避けて足を踏み替える方法を練習する。

5.転倒恐怖から歩かなくなったケース

長期目標

転倒への不安を軽減し、自分で行ける場所へ移動する生活を続けることができる。

短期目標

職員の見守りのもと、本人が安心できる距離から歩行を再開できる。

サービス内容

転倒した場面や現在不安に感じている動作を確認する。本人が成功しやすい環境と距離を設定し、見守り下で歩行する機会を設ける。できたことを本人と共有し、無理に距離を延ばさず段階的に活動範囲を広げる。

6.自宅でトイレまで歩きたいケース

長期目標

自分のタイミングでトイレへ移動し、できる限り自立した排泄を続けることができる。

短期目標

歩行補助具を使用し、立ち上がりからトイレまでの移動を安定して行うことができる。

サービス内容

立ち上がり、歩行、方向転換、便座への接近までの一連の動作を確認する。トイレ動作に必要な距離や動作を踏まえた歩行練習を行い、通所利用中の排泄場面でも本人が歩く機会を確保する。

7.玄関段差が外出の妨げになっているケース

長期目標

玄関を安全に出入りし、家族との外出や通所利用を継続できる。

短期目標

手すり等を使用し、一段の段差を安定して昇降することができる。

サービス内容

下肢支持力、足の上げ下げ、手すり使用、段差昇降時のふらつきを確認する。自宅玄関の段差高や支持物等を把握し、実際の環境を想定した段差昇降練習を行う。

8.疲労すると歩行が不安定になるケース

長期目標

体調に合わせて休息を取りながら、必要な移動や外出を継続できる。

短期目標

疲労が強くなる前に休息を取り、安定した状態で歩行を再開できる。

サービス内容

歩行距離、疲労、息切れ、歩幅や姿勢の変化を確認する。本人が無理をする前に休息できるよう声をかけ、歩行と休息を組み合わせながら適切な活動量を確認する。

9.認知症があり歩行補助具を忘れるケース

長期目標

安心できる環境の中で移動する機会を保ち、現在の歩行能力を生活の中で活用できる。

短期目標

職員の分かりやすい声かけにより、歩行補助具を使用して安全に移動できる。

サービス内容

歩行補助具を忘れやすい場面や時間帯を確認する。本人の目に入りやすく手に取りやすい位置へ配置し、「歩行器を使って一緒に行きましょう」など短く具体的な声かけを行う。行動を一律に制止するのではなく、安全に移動できる方法へ誘導する。

10.家族が転倒を心配し過介助になっているケース

長期目標

本人が安全に行える移動を自分で続け、家族にも無理のない在宅生活を継続できる。

短期目標

本人が一人で行える移動と、家族の見守りや介助が必要な場面を整理できる。

サービス内容

通所利用中の歩行能力や介助量を確認し、本人が安全に行えている動作を家族・ケアマネジャーと共有する。本人が行える動作まで家族が代行しないよう、見守る場面と介助する場面を整理する。

「転倒しなかった」だけで評価を終わらせない

転倒事故がなかったことは重要ですが、それだけでは歩行支援の評価として十分ではありません。

例えば半年間転倒していなくても、本人がほとんど歩かず車いすで過ごすようになり、自宅でも家族がすべて付き添うようになっていれば、生活機能は低下している可能性があります。

反対に、歩行速度そのものに大きな改善がなくても、歩行器を使用して自分でトイレへ行けるようになったのであれば、本人の自立度や生活の自由度は大きく向上しています。

モニタリングで確認したいポイント

  • 転倒や転倒しかけた場面があったか
  • 立ち上がり時の介助量に変化がないか
  • 歩行補助具を適切に使用できているか
  • 方向転換時のふらつきが増えていないか
  • 歩行距離や移動範囲が変化していないか
  • 疲労や疼痛によって歩く機会が減っていないか
  • 自宅でトイレや食卓まで移動できているか
  • 玄関や屋外へ出る機会が減っていないか
  • 本人の転倒恐怖が強くなっていないか
  • 家族による介助量が増えていないか
  • 本人が希望する外出や役割を続けられているか

転倒したときに計画をどう見直すか

転倒が発生した場合、「見守りを増やす」「歩かせない」という対応だけで終えず、転倒した状況を具体的に分析します。

  • どこで転倒したか
  • 何をしようとしていたか
  • 立ち上がり・歩行・方向転換のどの場面だったか
  • 歩行補助具を使用していたか
  • 疲労や疼痛がなかったか
  • 急いでいなかったか
  • 床面や照明等の環境要因がなかったか
  • 本人の身体機能や認知状態に変化がなかったか

原因を整理したうえで、歩行方法、環境、福祉用具、介助方法、活動量等を見直します。転倒したという事実だけを理由に本人の歩行機会を一律に奪わないことが重要です。

専門職として意識したい「安全」と「自立」のバランス

転倒を完全にゼロにすることを優先すると、本人の移動や外出を必要以上に制限する支援になりやすくなります。一方で、本人の希望だけを優先して危険な歩行を続けることも適切ではありません。

重要なのは、本人の身体能力、認知機能、環境、歩行補助具、家族の支援力を踏まえ、どの条件であれば本人が安全に移動できるかを具体的に整理することです。

本人が一人で行えること、見守りが必要なこと、直接介助が必要なことを明確にし、本人の能力を使う機会を残しながら安全性を高めることが、通所介護における歩行・転倒予防支援の基本になります。

まとめ

通所介護計画書の歩行・転倒予防では、「転倒しない」「筋力を維持する」といった抽象的な目標だけでなく、本人がどの場所へ何のために移動したいのかを明確にすることが重要です。

立ち上がり、立位、歩行、方向転換、段差、持久力、認知機能、環境等を具体的に評価し、本人が安全に歩くための条件を整理します。そして、機能訓練だけでなく、送迎、排泄、食事、入浴等の日常生活場面も本人が能力を使う機会として活用します。

転倒を防ぐために生活を狭めるのではなく、安全性を確保しながら本人が自分で移動できる範囲を保つことが、生活機能の維持と本人らしい在宅生活の継続につながります。

関連ページ

参考

  • 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
  • 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準」
  • 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定 関連様式」

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