デイサービスやデイケア、介護施設で使える高齢者向け脳トレプリント5種類を無料で掲載しています。
今回のプリントは、単に計算問題や漢字問題をたくさん解くことを目的にしたものではありません。
- 注意を向ける
- 覚えて思い出す
- 情報を一時的に保持しながら考える
- 必要な情報を選ぶ
- 見やすい情報の中から判断する
といった認知機能を意識しながら、介護・リハビリテーションの現場で使いやすいことを重視して作成しています。
すべてA4サイズで印刷でき、1枚につきおおむね10〜15分程度を目安に取り組める構成です。利用者さんの状態に合わせ、問題数を減らしたり、ヒントを出したりしながらご活用ください。
※本資料は認知症の治療や、認知機能の改善効果を保証するものではありません。日中活動、認知刺激、コミュニケーションのきっかけとして使用することを想定しています。
「脳トレなら何でも同じ」ではありません
一般的に「脳トレ」と呼ばれるものには、計算、漢字、間違い探し、クイズなど、さまざまな課題があります。
一方、認知機能には記憶だけでなく、注意、遂行機能、ワーキングメモリ、言語、視空間認知、処理速度など複数の働きがあります。
介護文例ナビでは、問題を大量に並べるだけではなく、「この課題では主にどの認知機能を使うのか」を意識して資料を作成しています。
また、認知症に対する非薬物的な関わりについては、すべての「脳トレ」に同じ効果が確認されているわけではありません。本サイトでは「脳トレをすれば認知症が改善する」と考えるのではなく、その方が持っている力を活かしながら、考える・思い出す・話す・選ぶ機会を作ることを大切にしています。
① 注意を向けて探す脳トレ
たくさんの情報の中から必要なものを探し、一定時間注意を向け続ける課題です。
主に意識する認知機能
- 選択性注意
- 持続性注意
- 視覚探索
こんな場面に
- 見落としが多い
- 途中で別のものに注意が向きやすい
- 一つずつ確認する活動を行いたい
職員さんへのポイント
速さを競う必要はありません。「上から順番に見てみましょう」「まずこの列だけ探してみましょう」など、見る範囲を区切ることで取り組みやすくなる場合があります。
間違えた場所を繰り返し指摘するよりも、探し方そのものを支援することを意識してください。
② 覚えてから思い出す脳トレ
いくつかの情報を覚え、少し別の課題を行ったあとに思い出す内容です。
記憶課題では、「覚えられなかったか」を見るだけでなく、どの程度のヒントがあれば思い出しやすいかという視点も大切です。
主に意識する認知機能
- 記銘
- 保持
- 想起
- エピソード記憶
職員さんへのポイント
思い出せないときには、「食べ物でしたね」「赤いものでした」「最初の文字は『り』でした」など、段階的にヒントを増やしてみてください。
完全な自力回答だけを正解とせず、手がかりを使って答えにたどり着ける経験も大切にします。
③ 覚えながら考えるワーキングメモリ課題
ワーキングメモリとは、一時的に情報を頭に置いたまま、その情報を使って考えたり行動したりする働きです。
日常生活では、例えば「3つ頼まれたものを覚えて取りに行く」「説明を聞きながら作業を進める」「金額を覚えながら計算する」といった場面でも使われます。
主に意識する認知機能
- ワーキングメモリ
- 注意
- 情報処理
- 遂行機能
職員さんへのポイント
難しすぎる場合は、覚える情報を3つから2つに減らすなど調整してください。逆に簡単な場合は、「声に出さず覚えてみましょう」「少し時間を置いてから答えてみましょう」などの方法で負荷を調整できます。
重要なのは難しい課題に挑戦させることではなく、本人が考え続けられる程度の難易度にすることです。
④ ヒントを使いながら思い出す課題
このプリントは、記憶課題が難しくなっている方でも参加しやすいよう、手がかりを利用できる構成にしています。
利用者さんに渡すプリント自体には認知症の病名を記載せず、診断名を意識させるのではなく、一つの活動として自然に取り組めることを優先しています。
職員さんへのポイント
「覚えていないですね」「さっきやりましたよ」と繰り返し訂正する必要はありません。思い出すことが難しければ、次のように支援量を調整します。
- 自由に思い出してもらう
- カテゴリーのヒントを出す
- 二択にする
- 答えを一緒に確認する
正誤だけを見るのではなく、どのような支援があれば参加できるかを見ることも介護現場では重要です。
⑤ 見やすさと注意の向けやすさに配慮した課題
このプリントは、一度に提示する情報量を抑え、見る場所が分かりやすくなるように設計しています。
認知機能の状態によっては、問題の内容よりも紙面の情報量が多いことで取り組みにくくなる場合があります。そのため、情報を詰め込みすぎない・見る場所を明確にすることを意識しています。
職員さんへのポイント
迷っている様子があれば、「まずここを見てみましょう」と位置を示して構いません。疲労や集中力低下がみられた場合は、無理に続けず休憩してください。
1枚で10〜15分程度取り組める資料を目指しています
デイサービスなどの介護現場では、数分で終わるプリントを何枚も準備すると、印刷や配布を行う職員の負担も大きくなります。
そのため介護文例ナビでは、単に問題数を増やすのではなく、問題を読む、考える、答える、思い出す、ヒントを使う、職員と会話する、振り返る、といった過程を組み合わせ、1枚でもある程度まとまった時間取り組めることを目標にしています。
10〜15分はあくまで目安です。5分で十分な方もいれば、職員と会話しながら20分かけて行う方がいても構いません。
脳トレは「難しいほど良い」わけではありません
プリントを渡しても、問題の意味が分からない、どこから始めればよいか分からない、文字が多くて見る気になれない、失敗が続いて嫌になってしまう、ということがあります。
難しい場合は、次のように調整してください。
- 問題数を減らす
- 選択肢を少なくする
- 一緒に読む
- 職員が最初の1問を一緒に行う
- 指差しでも回答できるようにする
- 大きな文字の資料を使う
「できる問題を探す」のではなく、「できる方法を探す」という視点を大切にしています。
重度認知症の方も参加しやすい方法を考える
一般的な脳トレプリントは、ある程度の読解力や認知機能が保たれていないと、そもそも問題に取り組むことが難しい場合があります。
介護文例ナビでは、同じものを選ぶ、大きな文字を読む、身近な写真を選ぶ、季節を感じる、好きなものを選択する、指差しだけでも参加できる、職員との会話を中心に進める、といった正解することよりも「参加できること」を重視した活動を大切にしています。
認知機能や生活場面に合わせて脳トレを選ぶ
注意機能、記憶、ワーキングメモリ、遂行機能、言語、視空間認知、計算、生活場面などを意識した30種類の資料を、目的に合わせて選べます。
さらに、軽度・中等度・重度など状態に応じた課題や、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症などで報告される認知機能の特徴に配慮した設計も検討します。
ただし、疾患名だけで一律に課題を決めるのではなく、実際の認知機能、生活状況、本人の興味・関心を確認しながら使用してください。
介護文例ナビの脳トレ資料について
介護文例ナビでは、「プリントを渡して終わり」ではなく、「なぜこの課題を行うのかが職員にも分かる資料」を目指しています。
子ども向け教材のようにならず、高齢者が自然に取り組めること。認知機能が低下していても参加できる方法を考えること。介護職員が専門的な知識をすべて持っていなくても、声かけや難易度調整ができること。そして、利用者さんにとって「またやってみよう」と思える活動になること。
これらを大切にしながら、現場で使いやすい無料資料を増やしていきます。
参考資料
- 日本神経学会監修「認知症疾患診療ガイドライン」
- NICE “Dementia: assessment, management and support for people living with dementia and their carers”
- アルツハイマー病における記憶機能に関するレビュー
- レビー小体型認知症の認知機能特性に関するレビュー・メタ解析
※本記事および資料は、医師による診断・治療の代替を目的としたものではありません。認知症の症状や状態に変化がある場合は、主治医や医療・介護の専門職にご相談ください。


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