認知症のある利用者では、調理中であることを忘れてその場を離れたり、ガスや電気調理器具の消し忘れがみられたりすることがあります。一方で、長年家族の食事を作ってきた人にとって、調理は単なる家事ではなく、生活上の役割や自信にもつながっています。
ここでは、認知症により火の消し忘れがみられるものの、本人はできる限り自分で調理を続けたいと希望しているケースを例に、本人の役割を活かしながら安全につなげる第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 調理中にその場を離れてしまうことがある
- ガスや電気調理器具の消し忘れがある
- 同じ料理を何度も作ろうとすることがある
- 本人は「まだ料理できる」と考えている
- 家族は火事ややけどを心配している
- 家族が調理を止めようとすると本人が怒る
- 調理以外の家事や簡単な食事準備は続けられている
担当ケースに近い部分を選び、本人の調理能力、使用している機器、生活環境、家族の支援状況などに合わせて調整してください。
※文例はそのまま使用するのではなく、本人の認知機能、調理能力、住環境、使用している機器、家族状況などに合わせて調整してください。
利用者像の例
- 83歳・女性・要介護1
- 長男夫婦と同居
- アルツハイマー型認知症
- 食事、更衣、排泄、屋内移動は概ね自立
- 長年、家族の食事作りを担ってきた
- 現在も味噌汁や簡単な炒め物を作ることがある
- 調理中に電話や別の用事に気を取られ、鍋を火にかけたことを忘れることがある
- 一度、鍋を焦がしたことがある
- 家族は本人が一人でガスを使用することを心配している
- 本人は「何十年も料理してきたから大丈夫」と話している
- 食材を切る、盛り付ける、配膳するなどは現在も行える
- 通所介護週2回利用
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|料理を続けたい場合
ずっと家族の食事を作ってきたので、できることまで全部やめたくない。簡単な料理や家のことはこれからも自分で続けたい。
別の表現①|役割を重視する場合
家族のために食事の準備をすることが自分の役目だと思っている。できる範囲でこれからも家事を続けたい。
別の表現②|支援を受け入れられる場合
少し忘れることがあるので、危ないところだけ一緒に確認してもらいながら料理を続けたい。
家族の意向
おすすめ文例|本人の役割を残したい場合
本人にとって料理が大切なことは分かっているので、すべて止めたいとは思っていない。ただ、火の消し忘れが心配なので、安全にできることと家族が手伝うことを分けたい。
別の表現|安全への不安が強い場合
鍋を焦がしたことがあり、家族がいないときの調理は心配している。本人の気持ちを傷つけず、安全に家事を続けられる方法を考えてほしい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は長年、家庭内で調理を担ってきており、食事を作ることを自分の役割として大切にしている。現在も食材を切る、盛り付ける、配膳するなどの動作は行えており、調理能力がすべて失われているわけではない。一方、認知症による記憶力や注意力の低下から、鍋を火にかけたまま別の用事を始めることがあり、過去には鍋を焦がしたこともある。家族は火災ややけどを心配しているが、本人の調理を一律に禁止すると役割や自信の喪失につながる可能性がある。本人が安全に行える調理工程と支援が必要な工程を整理し、火を使用しない作業や家族と一緒に行う調理などを取り入れながら、本人の役割と安全の両立を図る必要がある。
別の表現|独居時間の安全を重視する場合
本人は現在も簡単な食事準備を行うことができ、調理を続けたいという意欲を持っている。一方、家族不在時に調理器具を使用すると、火の消し忘れや調理中であること自体を忘れることがあり、安全面への配慮が必要である。本人ができる家事を尊重しつつ、一人で過ごす時間には火を使用しない食事準備を中心とし、加熱調理は家族が在宅している時間に一緒に行うなど、本人の生活状況に合わせた支援方法を整える必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人がこれまで担ってきた調理や家事の役割を尊重し、現在安全に行える工程については継続できるよう支援する。食材を切る、盛り付ける、配膳するなど本人が行える作業を活かし、火を使用する加熱調理については本人の状態に応じて家族等が見守りや確認を行う。家族不在時の調理方法や使用する機器についても本人と家族で確認し、安全に食事を準備できる環境を整える。調理中の様子や失敗の有無を家族・関係職種で共有し、本人の能力や状態変化に応じて支援方法を見直す。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人の調理を続けたいという思いを尊重し、安全に行える調理工程や家事は継続する。火を使用する調理については本人の状態に応じて見守りや環境調整を行い、家族不在時にも安全に食事を準備できる方法を整える。
第2表の文例
火の消し忘れがある場合も、「料理をやめること」自体を目標にするのではなく、本人が安全にできる家事や調理の役割を続けながら生活できることを目標として考えます。
課題① できる料理や家事をこれからも続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
自分でできる料理や家事を続け、家族の役に立ちながら生活したい。
ニーズの別表現|自信を重視する場合
何でも家族に任せるのではなく、自分でできる家事を続け、自信を持って暮らしたい。
長期目標
安全に行える調理や家事を続け、家庭内での役割や生活の張りを持って過ごすことができる。
短期目標
食材の準備、盛り付け、配膳など、本人が安全に行える調理工程に継続して取り組むことができる。
サービス内容
本人が現在安全に行える調理工程を確認し、できる作業は本人自身に任せる。家族等は必要以上に先回りせず、危険がある工程のみ見守りや支援を行う。
課題② 火事ややけどを心配せず安全に食事を準備したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
火の消し忘れなどを心配せず、安全に食事の準備を続けたい。
長期目標
本人の調理能力に合った方法や環境が整い、事故なく安全に食事準備を行うことができる。
短期目標
加熱調理を行う際に家族等の見守りや確認を受け、安全に調理を終えることができる。
サービス内容
加熱調理時は家族等が在宅している時間を中心とし、調理開始から終了まで安全確認を行う。使用する調理機器や台所環境についても本人の状態に合わせて見直し、安全に扱える方法を検討する。
課題③ 一人でいる時間も安心して食事をとりたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
家族がいない時間にも危ない調理をせず、自分で食事を準備して安心して食べたい。
長期目標
家族不在時にも本人に合った安全な方法で食事を準備し、安定した食生活を継続できる。
短期目標
家族が準備した食事や火を使わずに用意できる食品を活用し、一人でも安全に食事をとることができる。
サービス内容
家族不在時には本人が安全に準備できる食事を分かりやすく用意する。本人がどの方法なら一人でも安全に食事を準備できるか確認し、必要に応じて訪問サービス等とも情報を共有する。
課題④ 家族も火のことを心配し続けず安心して生活したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
本人の料理する楽しみを大切にしながら、家族も火事の心配を抱え続けず安心して生活したい。
長期目標
本人が安全な範囲で調理や家事を続け、家族も過度な不安を抱えることなく在宅生活を継続できる。
短期目標
本人が一人で行うことと家族が見守ることを整理し、家族・関係職種で共通した支援方法を持つことができる。
サービス内容
本人が安全に行える調理工程と危険がある工程を家族・関係職種で共有する。調理中の失敗や状態変化がみられた場合には支援方法を再評価し、本人の能力に合わせて見守りや環境調整を行う。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 自分でできる料理や家事を続け、家族の役に立ちながら生活したい。 | 安全に行える調理や家事を続け、家庭内での役割を持って生活できる。 | 食材準備・盛り付け・配膳等の安全な工程を継続できる。 | 本人ができる工程は本人に任せ、危険な部分のみ見守り・支援する。 |
| 火の消し忘れなどを心配せず、安全に食事の準備を続けたい。 | 本人に合った調理方法が整い、事故なく食事準備を行える。 | 加熱調理時に見守りを受け、安全に調理を終えることができる。 | 加熱調理は見守り可能な時間を中心とし、安全確認を行う。 |
| 家族がいない時間にも、安心して食事をとりたい。 | 家族不在時にも安全な方法で食事を準備し、食生活を継続できる。 | 準備された食事等を活用し、一人でも安全に食事をとれる。 | 火を使用せず準備できる食事を分かりやすく用意する。 |
| 本人の料理する楽しみを大切にしながら、家族も安心して生活したい。 | 本人の役割と安全が両立し、家族も過度な不安なく在宅生活を継続できる。 | 本人が行うことと家族が見守ることを整理し共有できる。 | 安全に行える工程と危険な工程を共有し、状態変化に応じて見直す。 |
認知症・火の消し忘れ・調理のケアプランで意識したいポイント
「料理できる・できない」の二択にしない
調理には、献立を考える、食材を準備する、切る、加熱する、味付けする、盛り付ける、片付けるなど多くの工程があります。加熱だけが難しくても、その他の工程は継続できる場合があります。
火の消し忘れが起こる場面を確認する
毎回危険なわけではなく、電話が鳴ったとき、複数の料理を同時に作ったとき、家族が不在のときなど一定の条件で失敗が起こることがあります。どの場面で注意が途切れるのかを確認します。
本人の役割をいきなり奪わない
長年家族の食事を作ってきた人にとって、「もう料理をしないで」と言われることは大きな喪失感につながる場合があります。危険な工程だけを支援し、本人ができる準備や盛り付けなどを役割として残します。
家族不在時と在宅時で方法を分ける
家族がいる時間には見守りながら調理し、一人になる時間は火を使わず準備できる食事を利用するなど、時間帯によって方法を分けることで安全と本人の役割を両立できる場合があります。
環境側から安全を考える
本人の能力だけを問題にするのではなく、現在の調理機器や台所環境が本人に合っているかも確認します。本人の理解力や操作能力、生活状況に合わせて、より安全に使用できる環境を検討します。
状態変化に合わせて再評価する
今は家族の見守りがあれば安全に調理できても、認知機能や身体機能の変化によって状況は変わります。一度決めた方法を固定せず、失敗やヒヤリとした場面が増えた場合には支援方法を見直します。
文例を使うときのポイント
- 調理工程を分けて、本人ができることを確認する
- 火の消し忘れが起こる状況や時間帯を把握する
- 本人がこれまで調理をどのような役割として担ってきたか確認する
- 危険だからと調理全体をすぐに禁止しない
- 本人が一人になる時間帯の食事準備方法を確認する
- 調理機器や台所環境も本人の状態に合わせて見直す
- 家族の不安や見守り負担にも配慮する
- ヒヤリとした場面や状態変化に応じて支援方法を再評価する
まとめ
認知症のある利用者に火の消し忘れがみられる場合、危険だからと調理そのものをすべて止めるのではなく、本人がどの工程まで安全に行えるのかを具体的に確認することが重要です。
食材を切る、盛り付ける、配膳するなど本人ができることを役割として残し、加熱など危険が高い工程のみ必要な見守りや支援を行うことで、安全と本人らしい生活を両立できます。家族不在時の食事方法や台所環境も含めて支援体制を整え、本人の状態変化に合わせて継続的に見直すことが大切です。
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