通所介護計画書で食事や栄養について記載するとき、「全量摂取する」「栄養状態を維持する」「食事介助を行う」といった表現だけになっていないでしょうか。
食事は、単に必要な栄養を摂取する行為ではありません。食事場所まで移動し、安定した姿勢を保ち、食具を操作し、食物を認識して口へ運び、咀嚼・嚥下するまで、多くの身体機能と生活動作が関係しています。また、本人にとっては好みの料理を味わうこと、人と同じ食卓を囲むこと、季節を感じることなど、生活の楽しみや社会参加という意味もあります。
そのため通所介護計画書では、単に「何割食べたか」だけを見るのではなく、なぜ食事量が減っているのか、どこまで本人自身で食べられるのか、食事を本人らしい生活としてどう継続するのかまで考えることが重要です。
通所介護計画書で食事・栄養支援をどう捉えるか
同じ「食事摂取量が少ない」という状態でも、原因は一つではありません。
- 食欲そのものが低下している
- 食事姿勢が崩れて疲れやすい
- 箸やスプーンを操作しにくい
- 口腔内の痛みや義歯の不具合がある
- 咀嚼しにくい
- むせや飲み込みにくさがある
- 認知症により食事だと認識しにくい
- 周囲が気になり食事へ集中できない
- 便秘や体調不良がある
- 本人の嗜好と提供される食事が合っていない
「食べない人」とまとめず、食事行為のどこに問題があるのかを整理することが、適切な目標とサービス内容につながります。
食事は工程ごとにアセスメントする
| 項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 食事への意欲 | 食欲、好み、食事への関心、拒否の有無 |
| 食事場所までの移動 | 歩行、車いす、移乗、疲労 |
| 姿勢 | 座位保持、体幹傾斜、足底接地、テーブルとの位置 |
| 食具操作 | 箸・スプーン操作、上肢機能、巧緻性 |
| 食物認識 | 料理への注意、認知機能、食事開始の理解 |
| 口腔 | 歯、義歯、口腔内の痛み、乾燥、汚れ |
| 咀嚼 | 噛みにくさ、食物の偏り、口腔内へのため込み |
| 嚥下 | むせ、湿性嗄声、飲み込みにくさ、食後の状態 |
| 摂取量 | 主食・副食・水分の摂取状況、日による差 |
| 食事時間 | 食べ終わるまでの時間、疲労、途中で止まるか |
| 食後 | 口腔内残留、疲労、咳、体調変化 |
食事摂取量だけで栄養状態を判断しない
一回の食事を完食したからといって、栄養状態に問題がないとは限りません。反対に、デイサービスで一回食事量が少なかっただけで、低栄養と判断することもできません。
必要に応じて、体重変化、BMI、食事摂取状況、水分摂取、食欲、口腔状態、疾患、活動量等を合わせて確認します。低栄養状態やそのリスクが疑われる場合は、ケアマネジャー、看護職、管理栄養士、医療職等と情報を共有します。
避けたい目標と改善例
| 弱い表現 | 改善例 |
|---|---|
| 全量摂取する | 本人の体調に合わせて食事を楽しみ、必要な食事と水分を無理なく摂ることができる。 |
| 栄養状態を改善する | 食事摂取と体重を保ち、体力を維持して在宅生活を継続できる。 |
| 食事介助を行う | 自分で口へ運べる部分は継続し、疲労時のみ必要な介助を受けて食事できる。 |
| むせないようにする | 本人に適した姿勢と方法で安全に食事を摂り、食事の楽しみを継続できる。 |
| 水分を摂る | 本人が好む飲み物も活用し、日中に必要な水分を無理なく摂取できる。 |
食事・栄養の目標・サービス内容 文例集
1.自分で食事を摂れるケース
長期目標
自分で食事を摂る能力を維持し、食事を楽しみながら現在の生活を継続できる。
短期目標
安定した姿勢で食具を使用し、自分のペースで食事を摂ることができる。
サービス内容
食事姿勢、食具操作、摂取量、食事時間を確認する。食器を本人が取りやすい位置に配置し、自分で食べる時間を十分に確保する。職員が先回りして介助せず、疲労や動作困難がみられた部分のみ支援する。
2.途中から食事介助が必要になるケース
長期目標
自分で食べられる力を生かしながら、必要な食事量を無理なく確保できる。
短期目標
食事前半は自分で摂取し、疲労した際に必要な介助を受けて食事を継続できる。
サービス内容
自力摂取できる時間、疲労がみられる時点、姿勢の変化等を確認する。本人が自分で食べられる間は見守りを基本とし、疲労や動作低下がみられた際に必要な介助を行う。
3.食欲が低下しているケース
長期目標
本人が食べられる量を保ちながら体力を維持し、在宅生活を継続できる。
短期目標
体調や好みに合った食事を無理なく摂り、食事の時間を苦痛なく過ごすことができる。
サービス内容
摂取量だけでなく、食欲、体重変化、便通、口腔状態、体調、本人の嗜好を確認する。食欲低下が継続する場合は、家族・ケアマネジャー・看護職等と情報を共有し、必要に応じて管理栄養士や医療職へ相談できるよう連携する。
4.体重減少・低栄養リスクがあるケース
長期目標
必要な栄養と水分を摂り、体力を保ちながら本人が希望する在宅生活を継続できる。
短期目標
食事摂取量や体重の変化を確認しながら、本人に合った方法で食事を継続できる。
サービス内容
食事摂取量、体重変化、食欲、水分摂取、口腔状態等を継続して確認する。低栄養リスクが疑われる場合は管理栄養士等と情報を共有し、本人の生活状況や嗜好も踏まえた支援方法を検討する。
5.食事姿勢が崩れやすいケース
長期目標
身体への負担が少ない姿勢で食事を摂り、自分で食べることを継続できる。
短期目標
足底を支持した安定した座位を保ち、食事中の姿勢を維持できる。
サービス内容
椅子や車いすの座面高、足底接地、体幹姿勢、テーブルとの距離等を確認する。本人が食具を操作しやすく疲れにくい姿勢へ調整し、必要に応じて機能訓練指導員等と姿勢について共有する。
6.むせがみられるケース
長期目標
本人に適した方法で安心して食事を摂り、食べる楽しみを継続できる。
短期目標
本人に適した姿勢と食事方法で、体調を確認しながら食事を摂ることができる。
サービス内容
食事中のむせ、咳、声の変化、食事時間、疲労、口腔内残留等を観察する。普段と異なる変化や継続した問題がみられる場合は、看護職・ケアマネジャー等へ共有し、必要に応じて医師・歯科医師・言語聴覚士等による評価につなげる。介護職のみで食形態や嚥下方法を判断しない。
7.認知症により食事へ集中しにくいケース
長期目標
安心できる環境の中で食事を楽しみ、自分のペースで必要な食事を摂ることができる。
短期目標
職員の分かりやすい声かけを受けながら、食事へ注意を向けて自分で食べることができる。
サービス内容
周囲の音や人の動き、食器数等が食事への集中に影響していないか確認する。本人が食事を認識しやすい環境を整え、「こちらから食べましょう」など短く具体的な声かけを行う。本人が自分で食具を使用できる場合は職員が先に介助せず見守る。
8.水分摂取量が少ないケース
長期目標
本人に合った方法で水分を摂り、体調を保ちながら日常生活を継続できる。
短期目標
本人の好みに合った飲み物を選び、食事時や活動の合間に水分を摂ることができる。
サービス内容
本人の好み、飲みやすい温度や容器、飲水しやすい時間帯を確認する。食事、入浴、活動等に合わせて無理のない範囲で水分摂取の機会を設け、摂取状況や体調を確認する。
9.口腔状態が食事に影響しているケース
長期目標
口腔内を良好な状態に保ち、苦痛なく食事を楽しむことができる。
短期目標
食後の口腔ケアを継続し、口腔内の痛みや義歯の不具合等を職員へ伝えることができる。
サービス内容
歯・義歯・口腔内の汚れ、乾燥、痛み等を確認し、本人が行える口腔清掃を継続できるよう支援する。口腔状態の変化が食事摂取に影響していると考えられる場合は、家族・ケアマネジャー等と共有し、必要に応じて歯科職へつなげる。
10.独居で自宅での食生活が不安定なケース
長期目標
必要な食事を確保し、体力を保ちながら住み慣れた自宅での生活を継続できる。
短期目標
通所利用日に食事と水分を摂り、自宅での食事状況について必要な支援を受けることができる。
サービス内容
通所利用時の食事摂取量、食欲、体重等を確認するとともに、本人との会話から自宅での食事状況を把握する。食事を抜くことが増えた、食品が確保できていない等の変化がみられる場合は、本人の意向を確認したうえでケアマネジャー等と情報共有する。
摂食嚥下に問題が疑われるときの考え方
むせがあるからといって、介護職の判断だけで食事形態を変更したり、水分へとろみを付けたりすることは適切ではありません。
また、むせがないことだけで安全に嚥下できているとも判断できません。
食事中の咳、声質の変化、口腔内残留、食事時間の延長、食後の疲労、発熱等、普段との変化を具体的に観察し、看護職やケアマネジャーへ共有します。必要に応じて医師、歯科医師、言語聴覚士等の専門的評価につなげます。
「全量摂取」を目標にしすぎない
食事摂取量は重要な情報ですが、毎回全量摂取することがすべての利用者にとって適切な目標とは限りません。
体調、疾患、活動量、本人の食欲などによって食事量は変化します。本人へ無理に完食を求めることで、食事そのものが負担になることもあります。
「何割食べたか」だけでなく、本人が自分で食べられているか、食事を楽しめているか、継続した体重減少がないか、食生活全体が保たれているかを合わせて評価します。
栄養・口腔・機能訓練を別々に考えない
高齢者では、食事・栄養と身体機能は相互に影響します。
例えば、食事摂取量が低下して体力が落ちれば、歩行や立ち上がり等の活動が減る可能性があります。一方、活動量が低下すれば食欲が低下することもあります。また、口腔状態や嚥下機能の変化によって食事量が減少する場合もあります。
そのため、食事だけを切り離して見るのではなく、機能訓練指導員、看護職、介護職、管理栄養士、歯科職等が必要な情報を共有し、本人の生活全体を見ながら支援を検討することが重要です。
モニタリングで確認したいポイント
- 食欲に変化がないか
- 主食・副食の摂取状況が変化していないか
- 体重が継続的に減少していないか
- 自分で食べられる範囲が減っていないか
- 食事姿勢が崩れやすくなっていないか
- 食具操作が難しくなっていないか
- 食事時間が長くなっていないか
- むせや咳などに変化がないか
- 口腔内の痛みや義歯の不具合がないか
- 水分摂取状況が変化していないか
- 便秘等、食生活に影響する体調変化がないか
- 本人が食事を楽しめているか
- 自宅での食生活に変化がないか
状態が変化したときに確認すること
急に食事量が減った場合、「好き嫌い」と決めつけず、普段との違いを確認します。
- 体調不良はないか
- 口腔内に痛みはないか
- 義歯に問題はないか
- 咀嚼や嚥下に変化がないか
- 便秘や腹部症状がないか
- 薬剤変更等がなかったか
- 認知状態や覚醒状態に変化がないか
- 活動量が低下していないか
- 食事環境が変化していないか
介護職が原因を診断するのではなく、具体的な変化を把握し、適切な専門職へ情報をつなげます。
専門職として意識したい食事の自立支援
食事介助では、安全性や時間効率を優先するあまり、本人がまだ食具を使用できる段階から全介助になってしまうことがあります。
多少時間がかかっても本人が自分で食べられるのであれば、その能力を使う機会を確保することが重要です。食器配置、食具、姿勢等を調整することで自力摂取できる範囲が広がる場合もあります。
一方で、疲労が強い状態で自力摂取だけにこだわる必要もありません。本人の状態に応じて、自分で行う部分と介助を受ける部分を調整します。
食事は「栄養」だけではなく生活の楽しみでもある
食事は一日数回繰り返される生活行為であり、利用者にとって大きな楽しみになることがあります。
栄養量や安全性だけに注目すると、本人の好きなもの、食習慣、一緒に食べたい人、季節感などが見えにくくなります。
本人の意思や選択を尊重しながら、安全性と栄養状態を支えることが、通所介護における食事支援の基本です。
まとめ
通所介護計画書の食事・栄養支援では、「全量摂取」「栄養状態の維持」「食事介助」といった表現だけではなく、本人がどのように食事を続けたいのかを具体的に考えることが重要です。
食欲、姿勢、食具操作、口腔、咀嚼・嚥下、食事時間、体重、水分等を多面的に確認し、本人が自分で行える部分を残しながら必要な支援を行います。
そして、食事を単なる栄養摂取としてではなく、体力の維持、生活機能、社会交流、本人の楽しみまで含む生活行為として捉えることで、本人らしい在宅生活につながる通所介護計画を作成できます。
関連ページ
参考
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
- 厚生労働省「栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング(通所・居宅)」
- 厚生労働省「口腔・栄養スクリーニング様式」
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「摂食嚥下障害の評価」


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