認知症のある利用者のケアプランでは、物忘れや見当識の低下だけを見るのではなく、本人がこれまでどのような生活を送り、今後どのような暮らしを続けたいと考えているのかを丁寧に把握することが大切です。この記事では、夫婦二人暮らしの認知症利用者を例に、本人・家族の意向から、第1表の課題分析・総合的な援助の方針、第2表のニーズ・目標・サービス内容まで、一連の流れが分かる文例を紹介します。
※文例はそのまま使用するのではなく、利用者本人の生活歴、希望、心身状態、家族状況などに合わせて調整してください。
認知症のケアプランを作成するポイント
認知症のケアプランでは、「物忘れがあるから見守りが必要」という書き方だけでは、本人らしい支援につながりにくくなります。認知機能の低下によって実際の生活で何が難しくなっているのかを確認するとともに、現在も本人が行えていること、長年続けてきた習慣や役割、本人が大切にしている生活を把握します。そのうえで、本人のできることを活かしながら、必要な見守りや支援を組み合わせて在宅生活の継続につなげます。
利用者像の例
- 78歳・女性・要介護2
- 80歳の夫と二人暮らし
- 長女は市外在住で週末を中心に訪問している
- アルツハイマー型認知症、高血圧、変形性膝関節症
- 屋内移動は自立、屋外は夫の付き添いがあれば歩行可能
- 同じ内容を繰り返し尋ねることや、予定を忘れることが増えている
- 更衣・食事は概ね自立しているが、入浴準備や服薬管理には確認が必要
- 以前は近所のスーパーへの買い物や料理を楽しみにしていた
- 通所介護週2回、訪問介護週1回を利用している
本人・家族の意向
本人の意向
忘れてしまうことは増えたけれど、できることまで人にやってもらいたくない。これからも夫とこの家で暮らし、体調の良い日は近所へ買い物にも行きたい。
家族の意向
本人が自宅で暮らしたいという気持ちはできるだけ大切にしたい。最近は同じことを何度も確認したり、服薬を忘れそうになることがあるため、必要なところは周囲で支えながら、夫婦二人の生活を続けてほしい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
本人は認知症による物忘れを自覚しながらも、夫と住み慣れた自宅でこれまでの生活を続けたいという思いが強く、買い物や身の回りのことも可能な範囲で自分で行いたいと希望している。現在、基本的な身の回りの動作は概ね行えている一方、予定の管理、服薬確認、入浴準備などでは忘れることが増えている。また、外出時には道順への不安がみられる。本人が現在行えている生活動作や役割を維持しながら、認知機能の低下によって困難となっている部分を家族や介護サービスで補うことで、本人の自尊心を守り、夫婦での在宅生活を継続できるよう支援する必要がある。
総合的な援助の方針
本人が大切にしてきた生活習慣や「自分でできることは自分で行いたい」という思いを尊重し、現在の能力を活かした生活を継続できるよう支援する。通所介護による活動・交流・入浴機会を確保するとともに、訪問介護や家族による服薬・生活状況の確認を行い、認知症による生活上の不安を補う。本人だけでなく夫の負担や体調にも配慮し、家族や関係職種で状態の変化を共有しながら、夫婦が安心して在宅生活を継続できる環境を整える。
第2表の文例
課題(ニーズ)① 住み慣れた自宅での生活を続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
物忘れがあっても、できることは自分で行いながら、夫と住み慣れた自宅で安心して暮らし続けたい。
長期目標
必要な支援を受けながら、自分で行える生活動作を継続し、夫婦で安定した在宅生活を送ることができる。
短期目標
予定や服薬など忘れやすい部分について周囲の確認を受けながら、身の回りのことを可能な範囲で自分で行うことができる。
サービス内容
本人が自分で行えている生活動作を見守り、予定や服薬など忘れやすい部分について家族・訪問介護・関係職種で確認し、生活リズムを整えられるよう支援する。
課題(ニーズ)② 安全に入浴し清潔を保ちたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
自分でできることを続けながら、安全に入浴し、気持ちよく清潔な生活を送りたい。
長期目標
必要な見守りや介助を受けながら定期的に入浴し、清潔で快適な生活を継続できる。
短期目標
通所介護で入浴の準備や声かけを受けながら、自分で行える洗身や更衣動作を継続できる。
サービス内容
通所介護で体調を確認したうえで入浴支援を行い、本人が自分で行える洗身・更衣動作は見守り、困難な部分のみ介助する。
課題(ニーズ)③ 人との交流や外出の楽しみを続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
家の中だけで過ごすのではなく、人と話したり外へ出たりしながら、楽しみのある生活を続けたい。
長期目標
安心して外出や他者との交流を続け、本人らしい楽しみや生活の張りを持って過ごすことができる。
短期目標
定期的に通所介護を利用し、職員や他利用者との会話や本人が興味を持てる活動に参加できる。
サービス内容
本人の生活歴や好みに配慮した活動や交流機会を提供し、安心して通所を継続できるよう分かりやすい声かけや環境調整を行う。
課題(ニーズ)④ 家族も無理なく介護を続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
本人の希望する自宅生活を大切にしながら、夫や家族も無理をしすぎず安心して介護を続けたい。
長期目標
家族の介護負担が過度に増えることなく、本人と家族が安心して在宅生活を継続できる。
短期目標
通所介護利用中に夫が休息や自分の時間を確保し、心身の負担を軽減できる。
サービス内容
通所介護利用中の本人の状態や変化を家族と共有するとともに、介護負担や困りごとを確認し、必要に応じてケアマネジャーや関係職種で支援内容を検討する。
第2表の完成イメージ
各項目をつなげると、次のような第2表になります。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 物忘れがあっても、できることは自分で行いながら、夫と住み慣れた自宅で安心して暮らし続けたい。 | 必要な支援を受けながら、自分で行える生活動作を継続し、夫婦で安定した在宅生活を送ることができる。 | 忘れやすい部分について周囲の確認を受けながら、身の回りのことを可能な範囲で自分で行える。 | 本人の生活動作を見守り、予定や服薬など忘れやすい部分を家族・訪問介護等で確認する。 |
| 自分でできることを続けながら、安全に入浴し、清潔な生活を送りたい。 | 必要な支援を受けながら定期的に入浴し、清潔で快適な生活を継続できる。 | 入浴準備や声かけを受けながら、自分で行える洗身・更衣を継続できる。 | 通所介護で入浴支援を行い、本人が行える動作は見守り、必要な部分のみ介助する。 |
| 人と話したり外へ出たりしながら、楽しみのある生活を続けたい。 | 外出や交流を続け、本人らしい楽しみを持って過ごすことができる。 | 通所介護で会話や本人が興味を持てる活動に参加できる。 | 本人の生活歴や好みに配慮した活動・交流機会を提供する。 |
| 家族も無理をしすぎず、安心して介護を続けたい。 | 家族の負担が過度に増えることなく、在宅生活を継続できる。 | 通所介護利用中に夫が休息や自分の時間を確保できる。 | 本人の状態を家族と共有し、家族の負担状況に応じて支援内容を検討する。 |
認知症のケアプランで意識したいこと
認知症のケアプランでは、できなくなったことだけを並べるのではなく、本人が現在も行えていることや長年続けてきた生活習慣を把握することが重要です。本人が話す希望が現実的に難しい場合でも、その言葉の背景にある「自分で決めたい」「家族と暮らしたい」「これまでの生活を失いたくない」といった思いを捉え、支援方法を考えます。
また、家族の負担軽減についても、単に「レスパイト目的」と記載するだけではなく、家族がどのような介護を担い、何に負担を感じているのかを整理します。本人の希望と家族の生活の両方を尊重し、サービスによって無理なく在宅生活を続けられる状態を目指します。
文例を使うときのポイント
- 本人の言葉や生活歴を必ず一つは反映する
- 「認知症だから」ではなく、生活上どのような支障があるかを書く
- 本人が現在できていることも課題分析に含める
- ニーズ・長期目標・短期目標・サービス内容を一つの流れとしてつなげる
- 家族の希望だけで本人の生活目標を決めない
まとめ
認知症のある利用者のケアプランでは、認知機能の低下だけでなく、本人の生活歴、できること、本人・家族が望む暮らしを丁寧に把握することが大切です。本人の言葉から課題分析を行い、総合的な援助の方針、ニーズ、長期目標、短期目標、サービス内容まで一貫性を持たせることで、本人らしい生活を支えるケアプランにつながります。


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