認知症があり一人暮らしをしている利用者のケアプランでは、「独居だから危険」と判断するのではなく、本人が現在どのような生活を送れているのか、どこに支援が必要なのかを具体的に整理することが大切です。
ここでは、物忘れが増えているものの、住み慣れた自宅で一人暮らしを続けたい利用者を例に、本人・家族の意向から第1表、第2表までつながるケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 認知症があり一人暮らしをしている
- 身の回りのことは概ね自分で行えている
- 服薬や予定を忘れることが増えている
- 食事内容が簡単なものに偏ることがある
- 家族は近隣または離れた場所から支援している
- 本人はできる限り現在の自宅で暮らしたいと希望している
- 通所介護や訪問系サービスによる見守りが必要になっている
自分の担当ケースに近い部分を選び、本人の生活状況に合わせて調整してください。
※文例はそのまま使用するのではなく、本人の生活歴、希望、心身状態、家族状況、地域との関係などに合わせて調整してください。
利用者像の例
- 82歳・女性・要介護1
- 夫とは死別し、一人暮らし
- 長女は車で約30分の場所に住み、週1~2回訪問している
- アルツハイマー型認知症
- 屋内歩行・更衣・排泄は自立
- 簡単な食事の準備や洗濯は現在も行っている
- 服薬したことを忘れ、再度服用しようとすることがある
- 曜日や通所予定を間違えることがある
- 外出機会が減り、自宅で一人で過ごす時間が長くなっている
- 本人は「この家が一番落ち着く」と話している
- 通所介護週2回、訪問介護週2回を利用
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|自宅での生活を続けたい場合
忘れることは増えたけれど、今の家ならどこに何があるか分かるし、自分でできることもまだある。娘に心配をかけすぎず、できるだけこの家で暮らしていきたい。
別の表現①|自立への思いが強い場合
まだ自分でご飯を用意したり洗濯もできているので、できることは自分で続けたい。困ったときだけ手伝ってもらいながら暮らしたい。
別の表現②|住み慣れた地域への思いが強い場合
長く暮らしてきた家とこの地域が一番安心する。近所の人とも顔なじみなので、できる限りここで生活を続けたい。
家族の意向
おすすめ文例|本人の希望を尊重したい場合
本人は自宅での生活を強く希望しているため、できる限りその気持ちは大切にしたい。ただ、薬の飲み間違いや食事、体調の変化を一人で把握することには不安があるため、サービスを利用しながら安全に生活してほしい。
別の表現|家族が頻繁に訪問できない場合
毎日様子を見に行くことは難しいため、介護サービスや地域の支援を利用しながら本人の生活を支えてほしい。大きな変化があったときには早めに家族へ連絡してもらえると安心である。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は物忘れが増えていることを自覚しながらも、長年暮らしてきた自宅に強い愛着を持ち、できることは自分で続けながら一人暮らしを継続したいと希望している。現在、屋内移動、更衣、排泄、簡単な食事準備や洗濯などは自ら行えており、生活する力は保たれている。一方で、服薬の重複や予定の失念、食事内容の偏りなど、認知機能の低下による生活上の不安がみられる。本人が現在持っている生活能力や役割をできる限り維持しながら、服薬・食事・体調・予定管理など困難になっている部分を家族や介護サービスで補い、状態変化を早期に把握できる見守り体制を整えることで、本人が安心して住み慣れた自宅での生活を継続できるよう支援する必要がある。
別の表現|社会的孤立にも配慮する場合
本人は身の回りの多くのことを自分で行えており、現在の自宅で生活を続けたいという意向がある。一方、認知症の進行に伴い服薬や予定の管理に支援が必要となっており、外出機会の減少から一人で過ごす時間も長くなっている。本人の自立した生活を過度に制限することなく、定期的な訪問や通所による見守りと交流機会を確保し、家族や関係職種が生活状況の変化を共有することで、安全と本人らしい生活の両立を図る必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が住み慣れた自宅で、自分で行える生活動作を続けながら安心して暮らせるよう支援する。本人の自立している部分は見守りを基本とし、服薬、食事、予定管理など認知症により不安が生じている部分について、訪問介護・通所介護・家族が連携して支える。定期的な外出や交流の機会を確保するとともに、体調や生活状況の変化を関係者で共有し、必要に応じて支援内容を見直しながら在宅生活の継続を支える。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人のできることと自宅で暮らしたいという思いを大切にし、服薬や食事など不安のある部分を介護サービスと家族で補う。定期的な見守りと交流機会を確保し、生活状況の変化を早期に把握しながら、一人暮らしを安心して継続できるよう支援する。
第2表の文例
独居の場合も、すべてを「見守り」にするのではなく、本人の希望や生活上の課題ごとにニーズ・目標・サービス内容をつなげて考えます。
課題① 住み慣れた自宅で一人暮らしを続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
忘れることが増えても、自分でできることを続けながら、住み慣れた自宅で安心して生活したい。
ニーズの別表現|本人の自立意欲を強く出す場合
必要なところは支えてもらいながら、今できている家事や身の回りのことを続け、一人での生活をできるだけ長く続けたい。
長期目標
必要な支援や見守りを受けながら、自分で行える生活動作を継続し、安心して在宅生活を送ることができる。
短期目標
訪問や通所による定期的な見守りを受けながら、食事、着替え、洗濯など現在行えている生活動作を継続できる。
サービス内容
本人が自分で行えている生活動作は見守りを基本とし、困難となっている部分のみ支援する。訪問時には生活状況や体調を確認し、変化がみられた場合は家族・ケアマネジャー・関係職種で情報を共有する。
課題② 薬を安全に飲み、体調を整えて生活したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
薬を飲み忘れたり重ねて飲んだりすることなく、体調を整えて安心して生活したい。
長期目標
周囲の確認を受けながら服薬を継続し、体調を安定させて生活できる。
短期目標
本人が分かりやすい方法で薬を管理し、支援者の確認を受けながら飲み忘れや重複服用を防ぐことができる。
サービス内容
本人が理解しやすい服薬方法を関係職種で検討し、訪問時に服薬状況を確認する。飲み忘れや重複がみられる場合は家族、主治医、薬剤師等と情報を共有し、安全に服薬を継続できる方法を検討する。
課題③ 食事をとり、健康的な生活を続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
自分でできる食事の準備を続けながら、毎日きちんと食事をとって元気に過ごしたい。
長期目標
必要な支援を受けながら食生活を整え、体調を維持して自宅での生活を継続できる。
短期目標
簡単な食事準備を自分で行いながら、支援者の確認や準備された食品を活用し、一日を通して必要な食事をとることができる。
サービス内容
本人が行える食事準備は継続できるよう見守り、訪問時に食事摂取状況や冷蔵庫内の食品状況を確認する。必要に応じて家族や配食等も活用し、無理なく食生活を維持できるよう支援する。
課題④ 人とのつながりを持ち、安心して過ごしたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
一人で家にいるだけでなく、人と話したり外へ出たりしながら、安心して楽しく過ごしたい。
長期目標
地域や家族、介護サービスとのつながりを保ち、孤立することなく安心して生活できる。
短期目標
定期的に通所介護へ出かけ、職員や他利用者との会話や活動を楽しむことができる。
サービス内容
通所介護で本人が安心して過ごせる環境を整え、本人の興味や生活歴に合わせた交流・活動機会を提供する。利用状況や生活上の変化について家族・ケアマネジャーと共有する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 忘れることが増えても、自分でできることを続けながら、住み慣れた自宅で安心して生活したい。 | 必要な支援や見守りを受けながら、自分で行える生活動作を継続し、安心して在宅生活を送ることができる。 | 訪問や通所による見守りを受けながら、現在行えている生活動作を継続できる。 | 本人が行える動作を尊重し、訪問時に生活状況・体調を確認する。 |
| 薬を安全に飲み、体調を整えて安心して生活したい。 | 周囲の確認を受けながら服薬を継続し、体調を安定させて生活できる。 | 分かりやすい方法で薬を管理し、飲み忘れや重複服用を防ぐことができる。 | 服薬状況を確認し、必要に応じて家族・医療職等と管理方法を検討する。 |
| 自分でできる食事の準備を続けながら、毎日きちんと食事をとって元気に過ごしたい。 | 食生活を整え、体調を維持して自宅生活を継続できる。 | 支援を活用しながら必要な食事をとることができる。 | 食事摂取状況や食品状況を確認し、必要に応じて家族や配食等を活用する。 |
| 人と話したり外へ出たりしながら、安心して楽しく過ごしたい。 | 地域・家族・介護サービスとのつながりを保ち、孤立することなく生活できる。 | 通所介護へ出かけ、会話や活動を楽しむことができる。 | 本人の興味や生活歴に合わせた活動・交流機会を提供する。 |
認知症・独居のケアプランで意識したいポイント
「一人暮らし=できない」と考えない
独居であっても、本人が長年の習慣や環境を手がかりに多くの生活動作を行えていることがあります。支援者がすべて代行するのではなく、本人が現在行えていることを確認し、その力を生活の中で使い続けられる支援を考えることが重要です。
「見守り」を具体的な支援内容にする
「見守り」という言葉だけでは、誰が何を確認するのかが分かりません。服薬、食事、体調、室内環境、予定など、本人の生活で不安となっている部分を整理し、家族・訪問介護・通所介護・医療職など、それぞれが確認する内容を明確にします。
安全と本人の自己決定のバランスを考える
家族や支援者が心配するあまり、本人が行えている活動まで制限すると生活意欲や役割を失うことがあります。危険性だけではなく、本人にとってその生活を続ける意味も考え、安全を確保するために必要な支援を組み合わせます。
状態変化を早く把握できる関係を作る
一人暮らしでは、体調や生活状況の変化が周囲から見えにくい場合があります。サービス利用時の様子、家族からの情報、本人の言葉などを関係者で共有し、小さな変化を早めに把握できる体制を整えておくことが重要です。
文例を使うときのポイント
- 本人が一人暮らしを続けたい理由や思いを反映する
- 現在自分で行えている生活動作を具体的に記載する
- 「独居だから危険」という課題設定だけにしない
- 服薬・食事・外出など実際に困っている場面を明確にする
- 誰が・何を確認するのかをサービス内容に落とし込む
- 家族の支援可能な頻度や距離も考慮する
- ニーズ・目標・サービス内容のつながりを確認する
まとめ
認知症があり一人暮らしをしている利用者のケアプランでは、安全面だけに目を向けるのではなく、本人が現在持っている生活する力と、自宅で暮らし続けたいという思いを丁寧に捉えることが重要です。
本人が自分で行えることを維持しながら、服薬、食事、予定管理など困難となっている部分を必要な支援で補い、家族や関係職種が変化を共有できる体制を整えることで、本人らしい一人暮らしの継続につながります。
関連するケアプラン文例
夫婦二人暮らしの場合は「ケアプラン文例【認知症・夫婦二人暮らし】」も参考にしてください。


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