認知症のある利用者を高齢の配偶者が介護している場合、本人への支援だけでなく、介護を担う家族の体力や生活にも目を向ける必要があります。配偶者が「まだ自分でできる」「人に頼りたくない」と介護を抱え込み、気付かないうちに負担が大きくなっていることもあります。
ここでは、認知症の妻を高齢の夫が支えながら、夫婦二人で在宅生活を続けているケースを例に、本人・家族の意向から第1表、第2表までつながるケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 認知症のある本人を高齢の配偶者が介護している
- 本人の基本的なADLは比較的保たれている
- 服薬や予定、入浴などに声かけや確認が必要
- 配偶者が食事準備や家事、服薬確認などを担っている
- 介護者自身にも体力低下や疲労がみられる
- 子どもは別居しており、日常的な支援には限界がある
- 本人・家族ともに夫婦での在宅生活を希望している
担当ケースに近い部分を選び、本人と家族それぞれの生活状況に合わせて調整してください。
※文例はそのまま使用するのではなく、本人の生活歴、希望、心身状態、介護者の状況、家族関係などに合わせて調整してください。
利用者像の例
- 79歳・女性・要介護2
- 82歳の夫と二人暮らし
- 長男は車で約1時間の場所に住み、月数回訪問
- アルツハイマー型認知症
- 屋内歩行、更衣、食事、排泄は概ね自立
- 服薬や予定の管理には夫の確認が必要
- 入浴は手順が分からなくなることがあり声かけが必要
- 同じ質問や探し物が増え、夫が対応する時間が長くなっている
- 夫が調理、買い物、金銭管理など生活の多くを担っている
- 夫は「自分が元気なうちは自分が見たい」と話している
- 通所介護週3回を利用している
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|夫婦での生活を続けたい場合
忘れることは増えたけれど、夫がそばにいると安心する。これからも二人で今の家に住み、できることは自分で続けたい。
別の表現①|自分の役割を続けたい場合
夫に全部やってもらうのではなく、洗濯物をたたんだり食卓を整えたり、自分にできることはこれからも続けたい。
別の表現②|安心感を重視する場合
知らない場所で暮らすより、夫と一緒に慣れた家で過ごしたい。今までと同じように穏やかに暮らしたい。
家族の意向
おすすめ文例|介護者も在宅生活を希望している場合
できればこれからも夫婦二人で暮らしたい。妻が安心して過ごせるよう自分ができることは続けたいが、最近は一日中妻のことを気にしていることも多く、少し疲れを感じるようになっている。サービスの力も借りながら無理なく生活を続けたい。
別の表現|介護を抱え込みやすい場合
妻のことは自分が見なければと思っているが、自分も年齢を重ねて以前のようには動けなくなってきた。妻を安心して任せられる時間があれば、自分の通院や休息の時間も持ちたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は認知症による物忘れがみられるものの、屋内移動、更衣、食事、排泄など基本的な生活動作は概ね自分で行えており、夫と住み慣れた自宅で暮らし続けたいと希望している。洗濯物をたたむなど家庭内で自分にできることを続けたいという思いもある。一方、服薬や予定の管理、入浴時の手順などには確認や声かけが必要となっており、夫が日常生活の多くを支えている。夫も高齢で、調理・買い物・家事に加えて本人への対応を継続しており、介護による疲労が徐々にみられている。本人の残存能力や家庭内での役割を活かしながら、介護サービスを利用して夫の負担を軽減し、夫婦双方の生活を守ることで、無理なく在宅生活を継続できるよう支援する必要がある。
別の表現|介護者の負担をより重視する場合
本人は夫と自宅で暮らすことを望んでおり、基本的な身の回りの動作は現在も自ら行えている。しかし、認知機能の低下に伴い服薬・予定管理・入浴など生活の複数場面で夫の支援が必要となっている。夫は妻を支えることを自身の役割と考えているが、夫自身も高齢であり、家事と介護を担うことで休息や自分の時間が減少している。本人のできることを必要以上に奪わず、通所介護等を活用して本人の活動機会を確保するとともに、夫が介護から離れて休息できる時間を確保し、夫婦ともに無理のない生活を継続できる支援が必要である。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が現在行えている生活動作や家庭内での役割を大切にし、できることを継続しながら夫婦で安心して生活できるよう支援する。認知症により困難となっている服薬・予定管理・入浴等について必要な支援を行い、通所介護を活用して活動や交流、入浴機会を確保する。サービス利用中は夫が休息や自身の用事を行える時間を持てるようにし、夫の体調や介護負担についても継続して確認する。本人・夫双方の状態変化を関係者で共有し、介護負担が一方に集中しない支援体制を整えながら在宅生活の継続を図る。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人のできることや夫婦で暮らしたいという思いを尊重し、認知症により困難となった部分を介護サービスで補う。高齢の夫に介護負担が集中しないよう休息時間を確保し、夫婦双方の心身状態を確認しながら安心して在宅生活を継続できるよう支援する。
第2表の文例
老老介護のケアプランでは、本人だけの目標を並べるのではなく、本人の生活を支えることと介護者の生活を守ることを一つの支援として考えることが重要です。
課題① 夫と一緒に住み慣れた自宅で暮らし続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
忘れることが増えても、自分でできることを続けながら、夫と住み慣れた自宅で安心して暮らしたい。
ニーズの別表現|家庭内の役割を意識する場合
夫にすべてを任せるのではなく、自分にできる家事や身の回りのことを続けながら、夫婦で今までの生活を続けたい。
長期目標
必要な支援を受けながら、自分でできる生活動作や家庭内での役割を続け、夫と安定した在宅生活を送ることができる。
短期目標
声かけや確認を受けながら、更衣、食事、排泄や簡単な家事など現在行えていることを継続できる。
サービス内容
本人が自分で行える生活動作や家事は見守りを基本とし、認知症により手順が分からなくなる部分について必要な声かけや支援を行う。家庭での様子を家族と共有し、現在の能力を生活の中で活かせるよう支援する。
課題② 安心して入浴し、気持ちよく過ごしたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
手伝ってもらいながら安全にお風呂に入り、さっぱりと気持ちよく過ごしたい。
長期目標
必要な支援を受けながら定期的に入浴し、清潔で快適な生活を続けることができる。
短期目標
分かりやすい声かけを受けながら、自分で行える洗身や更衣動作に取り組むことができる。
サービス内容
通所介護で体調を確認しながら入浴支援を行う。本人が行える動作は急がせず見守り、手順が分からない場面では分かりやすい声かけを行い、必要な部分のみ介助する。
課題③ 外へ出て人と関わり、生活に楽しみを持ちたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
家で夫と二人だけで過ごすのではなく、外へ出て人と話したり好きな活動をしたりしながら楽しく過ごしたい。
長期目標
定期的な外出や他者との交流を続け、生活の中に楽しみや役割を持って過ごすことができる。
短期目標
通所介護に安心して通い、職員や他利用者との会話や本人が興味を持てる活動に参加できる。
サービス内容
本人の生活歴や好みを確認し、馴染みのある活動や他者との交流機会を提供する。本人の表情や言動を確認しながら無理のない参加を支援し、安心して通所を継続できる環境を整える。
課題④ 夫も自分の生活を大切にしながら介護を続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
妻との生活をこれからも大切にしながら、自分自身の体調や生活も守り、無理なく介護を続けたい。
ニーズの別表現|休息の必要性が高い場合
妻を安心して任せられる時間を持ち、自分も休息や通院、用事を行いながら介護を続けたい。
長期目標
夫の心身の負担が過度に増えることなく、自身の生活や健康を保ちながら妻との在宅生活を継続できる。
短期目標
妻の通所介護利用中に、夫が介護から離れて休息や通院、自分の用事を行う時間を確保できる。
サービス内容
通所介護利用中に夫が安心して休息や外出ができるよう、利用時の本人の様子を共有する。夫の体調や介護負担についてケアマネジャーが定期的に確認し、負担が増加した場合にはサービス利用回数や支援方法について本人・家族・関係職種で検討する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 自分でできることを続けながら、夫と住み慣れた自宅で安心して暮らしたい。 | 自分でできる生活動作や家庭内での役割を続け、夫と安定した在宅生活を送ることができる。 | 声かけや確認を受けながら、現在行えている生活動作を継続できる。 | 本人が行える動作は見守り、困難な部分に必要な声かけ・支援を行う。 |
| 手伝ってもらいながら安全に入浴し、気持ちよく過ごしたい。 | 定期的に入浴し、清潔で快適な生活を続けることができる。 | 声かけを受けながら、自分で行える洗身や更衣を継続できる。 | 通所介護で入浴支援を行い、できる動作は見守り、必要な部分のみ介助する。 |
| 外へ出て人と話したり好きな活動をしたりしながら楽しく過ごしたい。 | 外出や交流を続け、生活の中に楽しみや役割を持つことができる。 | 通所介護で会話や本人が興味を持てる活動に参加できる。 | 生活歴や好みに合わせた活動・交流機会を提供する。 |
| 夫も自分自身の体調や生活を守りながら、無理なく介護を続けたい。 | 夫の負担が過度に増えることなく、自身の生活を保ちながら在宅生活を継続できる。 | 通所介護利用中に夫が休息や通院、自分の用事を行う時間を確保できる。 | 夫の介護負担を定期的に確認し、必要に応じてサービス内容を見直す。 |
認知症・老老介護のケアプランで意識したいポイント
本人だけでなく介護者も生活者として捉える
老老介護では、配偶者が「介護する人」としてだけ見られがちですが、介護者自身にも健康、通院、趣味、休息、友人との交流など生活があります。本人の在宅生活を支えるためにも、介護者自身の生活が維持できているかを確認することが重要です。
「できるから大丈夫」という家族の言葉だけで判断しない
高齢の配偶者は、長年連れ添った相手を支えることを当然と考え、負担を訴えないことがあります。「まだ大丈夫」という言葉だけではなく、睡眠、休息時間、家事量、通院状況、表情や疲労なども含めて介護負担を把握します。
本人のできることを活かすことが家族支援にもつながる
本人が自分でできる更衣や食事、簡単な家事まで家族がすべて代行すると、本人の能力を使う機会が減るだけでなく、介護者の負担も増えます。本人の能力や役割を活かす支援は、本人の自立支援と介護者の負担軽減の両方につながります。
介護者が限界になる前に支援を調整する
介護者が体調を崩してから支援を増やすのではなく、通所介護などを活用して定期的に介護から離れる時間を確保し、負担の変化を継続して確認します。必要に応じてサービスの利用回数や支援体制を見直し、夫婦双方の生活が続けられる方法を検討することが大切です。
文例を使うときのポイント
- 本人だけでなく介護者の意向も具体的に確認する
- 本人が現在行えていることや家庭内での役割を書く
- 介護者が実際に担っている家事・介護内容を整理する
- 「家族負担軽減」だけで終わらず、何が負担なのかを具体化する
- 介護者自身の健康や生活時間にも目を向ける
- サービス利用を本人支援と家族支援の両面から考える
- 本人・介護者双方の状態変化に応じて支援を見直す
まとめ
認知症のある本人を高齢の配偶者が介護している場合、本人の生活だけでなく、介護を担う配偶者の生活も同時に支える視点が必要です。
本人が現在できていることや家庭内での役割を活かし、必要な部分だけを支援することで本人らしい生活を守るとともに、介護サービスを活用して配偶者が休息や自分の時間を持てるようにすることが、夫婦二人での在宅生活の継続につながります。
関連するケアプラン文例
- ケアプラン文例【認知症・夫婦二人暮らし】
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