ケアプラン文例【認知症・物盗られ妄想】|「財布を盗られた」と訴える場合の第1表・第2表の記入例

認知症のある利用者では、財布や通帳などを自分でしまった場所が分からなくなり、「誰かに盗られた」「家族が持っていった」と訴えることがあります。家族が「盗っていない」と説明しても納得できず、何度も探したり、特定の家族を疑ったりすることで、本人と家族双方がつらい思いをすることがあります。

ここでは、財布を置いた場所を忘れ、同居する家族に「盗られた」と訴えることが増えている認知症の利用者を例に、本人の不安を否定せず、安心できる生活と家族関係につなげる第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。

この記事が参考になるケース

  • 財布や通帳を置いた場所が分からなくなることがある
  • 「家族に盗られた」と訴えることがある
  • 同じ場所を何度も探して落ち着かなくなる
  • 家族が否定すると怒りや不信感が強くなる
  • 本人自身で大切な物を管理したい気持ちが強い
  • 家族が疑われることに精神的な負担を感じている
  • 本人の安心と家族関係の両方を守りたい

担当ケースに近い部分を選び、本人が何を無くしたと感じるのか、どの時間帯や状況で訴えが強くなるのか、家族関係や生活歴などに合わせて調整してください。

※「盗られた」という訴えがあっても、最初から認知症による思い込みと決めつけないことが重要です。実際の紛失や金銭トラブル等の可能性も確認したうえで、本人の認知機能や生活状況に合わせて支援してください。

利用者像の例

  • 84歳・女性・要介護2
  • 長女夫婦と同居
  • アルツハイマー型認知症
  • 屋内歩行、食事、更衣、排泄は概ね自立
  • 以前から家計や財布を自分で管理してきた
  • 最近、財布や現金を自分で別の場所へしまうことが増えている
  • 保管場所を忘れ「娘が持っていった」と訴えることがある
  • 家族が否定すると「嘘をつくな」と怒ることがある
  • 一緒に探して財布が見つかると安心することもある
  • 本人は「自分のお金は自分で持っていたい」と話している
  • 長女は疑われることに精神的な疲れを感じている
  • 通所介護週3回利用

本人・家族の意向の文例

本人の意向

おすすめ文例|大切な物を自分で管理したい場合

自分のお金や大切な物は自分で持っていたい。なくなったと思うと心配になるので、どこにあるか分かるようにして安心して暮らしたい。

別の表現①|家族への不信感がある場合

自分の物が見つからないと誰かに持っていかれたのではないかと心配になる。大切な物を安心して自分のそばに置いておきたい。

別の表現②|助けを求められる場合

物をどこに置いたか分からなくなることがあるので、見つからないときには一緒に探してほしい。

家族の意向

おすすめ文例|本人を安心させたい場合

盗っていないと説明しても本人が納得できず、お互いに嫌な気持ちになることがある。本人の不安を強くしない対応方法を知り、できるだけ穏やかに暮らしたい。

別の表現|家族の精神的負担が強い場合

何度も疑われることにつらさを感じている。本人を責めたいわけではないので、家族だけで対応を抱え込まず、関係者と一緒に支えていきたい。

第1表の文例

利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果

おすすめ文例

本人は長年、家計や自身の金銭を管理してきた経験があり、現在も自分の財布や大切な物は自分で管理したいという思いが強い。一方、認知症による記憶力の低下から、自ら財布等を安全と思う場所へ移した後に保管場所を思い出せなくなり、「娘に盗られた」と訴えることがみられている。家族が事実を強く否定すると本人の不安や不信感が強まり、言い争いにつながることがあるが、一緒に探して財布が見つかった場合には安心することもある。本人にとって財布が見つからないことは、大切な財産を失ったという強い不安として感じられていることを理解し、訴えを否定するのではなく気持ちを受け止めながら、本人が確認しやすい保管方法を整える必要がある。また、疑われる家族の精神的負担にも配慮し、本人が安心できる対応方法を関係者で共有する必要がある。

別の表現|家族関係をより重視する場合

本人は財布等の保管場所を忘れた際に同居家族を疑うことがあり、家族が否定や説明を繰り返すことで双方の感情が高ぶる場面がみられている。一方、本人が安心できる声かけを受け、一緒に探したり別の話題へ移ったりすることで落ち着くこともある。本人の訴えを認知症による問題行動とだけ捉えず、物がなくなったと感じる不安や、自分の財産を自分で守りたいという思いを理解する必要がある。本人が大切な物を管理しやすい環境を整えるとともに、家族が否定や説得を繰り返さずに対応できる方法を共有し、本人と家族の関係を保ちながら在宅生活を支援する必要がある。

総合的な援助の方針

おすすめ文例

本人が自分の財布や大切な物を自分で管理したいという思いを尊重し、本人と相談しながら保管場所をできるだけ分かりやすく整える。本人が「盗られた」と訴えた際には、すぐに否定や訂正を行うのではなく、不安な気持ちを受け止めたうえで一緒に確認する。財布等を探すことが多い時間帯や保管しやすい場所、本人が安心した声かけ等を家族・関係職種で共有する。家族が繰り返し疑われることによる精神的負担についても確認し、家族だけで対応を抱え込まないよう支援する。

別の表現|短めにまとめたい場合

本人の大切な物を自分で管理したいという思いを尊重し、確認しやすい保管環境を整える。物が見つからない際は本人の不安を否定せず、一緒に確認するなど安心につながる対応を行う。本人が落ち着きやすい関わり方を家族・関係職種で共有し、家族の精神的負担にも配慮する。

第2表の文例

物盗られの訴えがある場合も、「盗られたと言わなくなること」を目標にするのではなく、本人が大切な物を安心して管理し、不安になったときにも気持ちを受け止めてもらえる生活を目標として考えます。

課題① 大切な物を安心して自分で管理したい

生活全般の解決すべき課題(ニーズ)

財布や大切な物を自分で持ちながら、どこにあるか分かるようにして安心して生活したい。

ニーズの別表現|自己管理を重視する場合

何でも家族に預けるのではなく、自分で管理できる物はこれからも自分で持っていたい。

長期目標

本人が大切な物の保管場所を確認しやすく、自分で管理する安心感を持ちながら生活できる。

短期目標

財布等の保管場所をできるだけ一定にし、必要時に本人と一緒に確認することができる。

サービス内容

本人と相談しながら財布や日常的に使用する大切な物の置き場所を整える。本人が自分で管理できる範囲は尊重し、必要以上に家族や支援者が取り上げて管理しないよう配慮する。

課題② 物が見つからないときも不安になりすぎず過ごしたい

生活全般の解決すべき課題(ニーズ)

大切な物が見つからないときにも、一人で心配せず、一緒に探してもらい安心したい。

長期目標

物が見つからない場面でも本人の不安が受け止められ、安心できる関わりの中で穏やかに過ごせる。

短期目標

物が見つからない際に、家族や支援者と一緒に確認し、落ち着きを取り戻すことができる。

サービス内容

本人の訴えに対して「盗られていない」と強く否定することを避け、「見つからなくて心配ですね」など気持ちを受け止め、一緒に保管場所を確認する。本人が落ち着いた際の対応方法を関係者で共有する。

課題③ 家族を疑うことで関係が悪くならず穏やかに暮らしたい

生活全般の解決すべき課題(ニーズ)

家族と嫌な言い合いをせず、これまで通り一緒に穏やかに生活したい。

長期目標

本人の不安と家族の気持ちの両方に配慮した関わりが行われ、家族関係を保ちながら在宅生活を継続できる。

短期目標

本人の訴えがあった際の対応方法を家族・関係職種で共有し、家族が否定や説得を繰り返す場面を減らすことができる。

サービス内容

本人が訴えた内容だけでなく、そのときの不安や感情に目を向ける対応方法を家族と共有する。家族が強いストレスを感じている場合には、気持ちを相談できる機会を設け、家族だけで対応を抱え込まないよう支援する。

課題④ 自分でできる生活を続け、自信を持って過ごしたい

生活全般の解決すべき課題(ニーズ)

忘れることが増えても、自分でできる家事や身の回りのことを続け、自分らしく生活したい。

長期目標

本人が現在できている生活動作や家庭内での役割を続け、自信や生活の張りを持って過ごすことができる。

短期目標

本人が行える家事や身の回りのことに取り組み、できたことを実感する機会を持つことができる。

サービス内容

認知症による失敗だけに注目せず、本人が自分で行えている生活動作や役割を把握し、継続できるよう見守りと必要な支援を行う。

第2表の完成イメージ

上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。

※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。

生活全般の解決すべき課題(ニーズ) 長期目標 短期目標 サービス内容
財布や大切な物を自分で持ちながら、どこにあるか分かるようにして安心して生活したい。 大切な物の保管場所を確認しやすく、自分で管理する安心感を持って生活できる。 財布等の置き場所をできるだけ一定にし、必要時に確認できる。 本人と相談しながら保管場所を整え、本人が管理できる範囲を尊重する。
大切な物が見つからないときにも、一緒に探してもらい安心したい。 物が見つからない場面でも不安を受け止めてもらい、穏やかに過ごせる。 家族や支援者と一緒に確認し、落ち着きを取り戻すことができる。 本人の訴えを強く否定せず、不安を受け止めながら一緒に確認する。
家族と嫌な言い合いをせず、これまで通り一緒に穏やかに暮らしたい。 本人と家族双方に配慮した関わりが行われ、家族関係を保ちながら生活できる。 対応方法を家族・関係職種で共有し、言い争いになる場面を減らすことができる。 本人が安心しやすい対応を共有し、家族の精神的負担についても支援する。
忘れることが増えても、自分でできることを続け自分らしく生活したい。 できる生活動作や役割を続け、自信と生活の張りを持って過ごせる。 本人が行える家事や身の回りのことに取り組むことができる。 本人のできていることを活かし、必要な部分のみ支援する。

認知症・物盗られ妄想のケアプランで意識したいポイント

本人にとっては「本当に無くなった」と感じている

本人は嘘をついているわけではなく、財布が見つからないという現在の状況から「誰かに盗られた」と理解している場合があります。本人にとっては現実の不安であるため、正しさだけを説明しても安心につながらないことがあります。

「盗っていない」と言い争わない

疑われた家族にとっては否定したくなるのが自然ですが、説明を繰り返すほど本人が「隠している」と感じ、不信感が強くなる場合があります。まず不安を受け止め、一緒に確認するなど安心につながる対応を考えます。

本人が物をしまう場所を観察する

財布や通帳を守ろうとして、本人自身が普段とは違う場所に隠していることがあります。タンス、衣類の間、鞄、布団の下など、本人がよく使用する場所や行動の傾向を把握すると、探し物への対応につながります。

全部取り上げることが解決とは限らない

紛失を防ぐために家族が財布や現金をすべて管理すると、本人が「取られた」と感じるきっかけになることもあります。本人が安全に管理できる範囲と家族等の支援が必要な範囲を分け、本人の自己決定をできるだけ残します。

疑われる家族のつらさも支援する

繰り返し「あなたが盗った」と言われる家族は、認知症の症状だと理解していても傷ついたり、怒りを感じたりすることがあります。本人への対応だけでなく、家族がその気持ちを相談できる場を持つことも重要です。

本当に紛失や金銭トラブルがないかも確認する

認知症があるからといって、すべての訴えを「妄想」と決めつけることは適切ではありません。実際の紛失や支払い、第三者との金銭トラブルなどがないか事実関係を確認し、必要な場合は関係機関との連携を検討します。

急に訴えが強くなった場合は状態変化も確認する

これまでみられなかった強い疑いや不安が急に出現した場合には、生活環境の変化だけでなく、体調不良や睡眠不足、服薬状況なども含めて確認し、必要に応じて医療職へ相談します。

文例を使うときのポイント

  • 何を盗られたと訴えているのか確認する
  • 訴えが強くなる時間帯や状況を把握する
  • 本人が普段どこに物をしまっているか確認する
  • 本人の訴えをすぐに否定しない
  • 大切な物をすべて家族管理にする前に本人の意向を確認する
  • 本人が安心した対応方法を家族・関係職種で共有する
  • 疑われる家族の精神的負担にも目を向ける
  • 実際の紛失や金銭トラブルがないかも確認する

まとめ

認知症のある利用者が「財布を盗られた」などと訴える場合、事実を訂正することだけを目的にするのではなく、本人が大切な物を失ったと感じている不安を理解することが重要です。

本人が自分で管理できる範囲を残しながら保管場所を分かりやすく整え、見つからない場合には一緒に確認するなど安心につながる対応を行います。同時に、繰り返し疑われる家族のつらさにも目を向け、本人と家族の双方を支えることが、穏やかな在宅生活につながるケアプランとなります。

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