認知症のある利用者では、「今日は何曜日?」「デイサービスはいつ?」「娘は何時に帰ってくるの?」など、同じことを短時間のうちに何度も尋ねることがあります。周囲から見ると同じ質問の繰り返しでも、本人にとっては前に聞いた内容を覚えておくことが難しく、そのたびに新しい不安として感じている場合があります。
ここでは、予定や家族の帰宅時間について繰り返し確認し、家族も対応に疲れを感じている認知症の利用者を例に、本人が見通しを持って安心して過ごせる第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 同じ内容を短時間に何度も質問する
- 曜日や予定を繰り返し確認する
- 家族がいつ帰るのか何度も尋ねる
- デイサービスの日程を何度も確認する
- 「さっき言ったでしょう」と言われると不安や怒りが強くなる
- 予定が分かると一時的に安心する
- 家族が繰り返し対応することに疲れを感じている
担当ケースに近い部分を選び、本人が何を繰り返し確認するのか、その時間帯や背景、不安の内容などに合わせて調整してください。
※文例はそのまま使用するのではなく、本人の記憶力、見当識、生活歴、不安の内容、家族関係、生活環境などに合わせて調整してください。
利用者像の例
- 82歳・女性・要介護1
- 長男夫婦と同居
- アルツハイマー型認知症
- 食事、更衣、排泄、屋内移動は概ね自立
- 簡単な家事は現在も行っている
- 長男夫婦は平日日中仕事で不在
- 「今日は何曜日?」「今日はデイの日?」と何度も確認する
- 夕方になると「息子は何時に帰るの?」という質問が増える
- 答えても数分後には再び同じ質問をすることがある
- 大きなカレンダーを見ながら説明すると安心することがある
- 家族は何度も答えることに疲れ、時折強い口調になってしまう
- 通所介護週3回利用
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|予定が分からず不安になる場合
今日何をする日なのか分からなくなると心配になる。予定が分かるようにして、安心して一日を過ごしたい。
別の表現①|家族の帰宅を気にしている場合
家族がいつ帰ってくるのか分からないと心細い。帰ってくる時間が分かれば安心して待っていられる。
別の表現②|自分で確認したい場合
人に何度も聞かなくても、今日の予定を自分で確認できるようにしたい。
家族の意向
おすすめ文例|穏やかに対応したい場合
本人が不安だから何度も聞いていることは分かっているが、同じ質問が続くと家族も余裕がなくなることがある。本人が自分でも予定を確認でき、家族も穏やかに対応できるようにしたい。
別の表現|家族の負担が強い場合
一日に何度も同じ説明を繰り返すことで疲れを感じている。本人を責めたくはないので、本人が安心できる方法を家族だけでなく支援者とも共有したい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は基本的な生活動作を概ね自分で行えているが、認知症による記憶力や見当識の低下により、曜日、予定、家族の帰宅時間等を保持することが難しくなっている。そのため「今日は何曜日か」「今日はデイサービスの日か」「家族は何時に帰るのか」などを繰り返し確認することがみられている。質問に対する答えを覚えていられないことに加え、今後の予定が分からないことへの不安が背景にあると考えられる。大きなカレンダー等を一緒に確認すると安心する場面もあり、本人自身が予定を確認できる方法を生活の中に取り入れることが必要である。また、家族は繰り返し質問への対応に疲れを感じ、強い口調になってしまうこともあるため、本人の不安を理解した関わり方を家族・関係職種で共有し、本人と家族双方が穏やかに生活できるよう支援する必要がある。
別の表現|不安の軽減をより重視する場合
本人は同じ質問を繰り返しているが、その都度、本人にとっては予定や家族の所在が分からない新たな不安として感じられている。特に夕方には家族の帰宅を確認する質問が増えており、一人で待つことへの心細さも考えられる。繰り返し質問を止めようとするのではなく、本人が知りたい情報を自分で確認しやすい環境を整え、予定の見通しを持てるよう支援することが必要である。また、本人が安心できた声かけや方法を家族・関係者で共有し、家族の精神的負担にも配慮する必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が予定や家族の帰宅時間等を確認したいという思いを受け止め、繰り返し質問することを責めず、安心につながる対応を行う。本人が自分でも予定を確認できるよう、本人の理解しやすさに合わせてカレンダーや予定表等を活用し、必要な情報を分かりやすく提示する。通所介護等でも一日の予定を分かりやすく伝え、本人が見通しを持って生活できるよう支援する。本人が安心した声かけや確認方法を家族・関係職種で共有し、家族が繰り返し説明を一人で抱え込まず、穏やかに関われるよう支援する。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人が予定を確認したい気持ちを尊重し、分かりやすい予定表や声かけにより生活の見通しを持てるよう支援する。同じ質問が繰り返されても否定せず安心につながる対応を行い、本人が落ち着きやすい方法を家族・関係職種で共有する。
第2表の文例
繰り返し質問がある場合も、「同じことを聞かない」ことを目標にするのではなく、本人が必要な情報を確認し、見通しを持って安心して生活できることを目標として考えます。
課題① 今日の予定を分かりやすく知り、安心して過ごしたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
今日何をする日なのか確認しながら、見通しを持って安心して一日を過ごしたい。
ニーズの別表現|自分で確認することを重視する場合
分からなくなったときに、自分でも予定を確認できるようにして安心したい。
長期目標
本人に分かりやすい方法で予定を確認し、生活の見通しを持ちながら安心して過ごすことができる。
短期目標
カレンダーや予定表等を見ながら、その日の予定を家族や支援者と確認することができる。
サービス内容
本人が普段過ごす場所に分かりやすい予定表等を用意し、その日の予定を一緒に確認する。情報を多く提示しすぎず、本人が必要とする内容を簡潔に分かりやすく伝える。
課題② 家族がいない時間も不安になりすぎず過ごしたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
家族がいつ帰ってくるのか分からず心配することなく、安心して待っていたい。
長期目標
家族の不在時にも安心できる過ごし方や確認方法があり、落ち着いて自宅で過ごすことができる。
短期目標
家族の帰宅予定を分かりやすい方法で確認し、好きな活動をしながら待つことができる。
サービス内容
本人が必要に応じて家族の帰宅予定を確認できるよう分かりやすく提示する。テレビ、家事、趣味等、本人が安心して取り組める活動を生活の中に取り入れ、待つ時間を不安だけで過ごさないよう支援する。
課題③ 分からないことを安心して尋ねたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
分からないことや心配なことがあるときに、嫌な顔をされず安心して尋ねたい。
長期目標
分からないことがあっても気持ちを受け止めてもらい、安心できる人との関係の中で穏やかに生活できる。
短期目標
心配になった際に家族や支援者へ尋ね、穏やかな説明を受けることで安心することができる。
サービス内容
同じ質問が繰り返された場合も「さっき言った」と責めず、本人が何を心配しているのかを確認する。必要に応じて予定表等を一緒に見ながら、簡潔で穏やかな声かけを行う。
課題④ 家族も余裕を持って本人と関わりたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
同じ説明を何度も繰り返すことに疲れすぎず、家族も気持ちに余裕を持って本人と生活したい。
長期目標
家族が本人の繰り返し質問の背景を理解し、過度な精神的負担を抱えずに在宅生活を継続できる。
短期目標
本人が安心しやすい説明方法や予定の確認方法を家族・関係職種で共有し、家族だけで対応を抱え込まずに済む。
サービス内容
本人が繰り返し確認する内容や時間帯、安心できた対応方法を家族・通所介護・ケアマネジャー等で共有する。家族の疲労や精神的負担についても定期的に確認し、必要なサービスや休息時間を確保できるよう支援する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 今日何をする日なのか確認しながら、見通しを持って安心して過ごしたい。 | 分かりやすい方法で予定を確認し、生活の見通しを持って過ごせる。 | 予定表等を見ながら、その日の予定を確認できる。 | 本人が確認しやすい予定表を用意し、必要な情報を簡潔に伝える。 |
| 家族がいつ帰ってくるか分からず心配せず、安心して待っていたい。 | 家族不在時にも安心できる過ごし方を持ち、落ち着いて生活できる。 | 家族の帰宅予定を確認し、好きな活動をしながら待つことができる。 | 帰宅予定を分かりやすく提示し、本人が安心できる活動を取り入れる。 |
| 分からないことや心配なことを、安心して尋ねたい。 | 気持ちを受け止めてもらい、安心できる関係の中で穏やかに生活できる。 | 心配な際に家族や支援者へ尋ね、穏やかな説明を受けられる。 | 繰り返し質問を責めず、不安を確認して分かりやすく対応する。 |
| 家族も疲れすぎず、余裕を持って本人と生活したい。 | 家族が過度な精神的負担を抱えず、在宅生活を継続できる。 | 本人が安心しやすい対応方法を家族・支援者で共有できる。 | 質問の傾向と効果的な対応を共有し、家族の負担も定期的に確認する。 |
認知症・繰り返し質問のケアプランで意識したいポイント
本人にとっては「同じ質問」とは限らない
家族には10回目の質問でも、本人が前に尋ねたことを覚えていなければ、その瞬間には初めて尋ねている感覚の場合があります。「何度言えば分かるの」と責めるより、本人が今何を不安に感じているのかを確認します。
質問の内容から不安を考える
「何時に帰ってくるの?」を繰り返す場合、知りたいのは時刻そのものではなく、「一人で大丈夫だろうか」「家族はちゃんと戻ってくるのだろうか」という安心かもしれません。質問の言葉だけでなく、その背景にある気持ちを考えます。
本人が自分で確認できる方法を探す
予定表、カレンダー、時計などが役立つ場合がありますが、情報量が多すぎると逆に分かりにくくなることもあります。本人が実際に理解しやすい方法を試しながら調整します。
「さっき言った」は安心につながりにくい
本人が前の説明を覚えていない場合、「さっき説明した」と伝えても問題の解決にはならず、自分だけ分からないという不安や自信の低下につながることがあります。必要な情報をその都度簡潔に伝える方法を検討します。
質問が増える時間帯や状況を見る
夕方、一人でいる時間、予定の前など特定の場面で質問が増えることがあります。「何を何回聞いたか」だけでなく、「いつ、どのような状況で増えるか」を記録すると、本人の不安を理解する手がかりになります。
家族の疲労も無視しない
同じ質問へ一日に何度も答えることは、家族にとって大きな精神的負担になる場合があります。「優しく答えてください」と家族だけに求めるのではなく、予定の見える化やサービス利用、家族の休息などを組み合わせて負担を軽減します。
文例を使うときのポイント
- 本人が何を繰り返し尋ねているのか確認する
- 質問が増える時間帯や状況を把握する
- 質問の背景にある不安や心配を考える
- 本人が自分で確認できる方法を検討する
- 情報を多くしすぎず分かりやすく提示する
- 「さっき言った」と本人を責めない
- 本人が安心した声かけや対応方法を共有する
- 繰り返し対応する家族の疲労にも配慮する
まとめ
認知症のある利用者が同じことを何度も尋ねる場合、質問を減らすことだけを目標にするのではなく、本人が何を分からず、何を不安に感じているのかを考えることが重要です。
本人が予定や必要な情報を確認しやすい環境を整え、繰り返し質問があっても安心できる対応を行うことで、生活の見通しを持ちやすくなります。同時に、繰り返し対応する家族の負担にも目を向け、本人と家族の双方が穏やかに生活できる支援につなげることが大切です。
関連するケアプラン文例
- ケアプラン文例【認知症・日中独居・留守番】
- ケアプラン文例【認知症・帰宅願望】
- ケアプラン文例【認知症・家族介護負担・ショートステイ】


コメント