認知症のある利用者では、一人で外へ出たあと帰宅する道が分からなくなったり、家族が気付かないうちに外出したりすることがあります。一般的に「徘徊」と表現されることもありますが、本人にとっては散歩、買い物、仕事へ行く、家族を迎えに行くなど、何らかの目的や理由を持って外へ出ている場合があります。
ここでは、認知症による道迷いがみられるものの、本人はこれまで通り散歩や外出を続けたいと希望しているケースを例に、本人の自由や生活習慣を大切にしながら安全につなげる第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 認知症があり、一人で外出すると道に迷うことがある
- 以前から散歩や買い物を日課にしていた
- 本人は外出を制限されたくないと考えている
- 家族が外出のたびに心配している
- 夕方になると外へ出ようとすることがある
- 過去に帰宅できず家族や近隣住民が探したことがある
- 本人の安全と外出する楽しみの両方を大切にしたい
担当ケースに近い部分を選び、本人が外出する理由、時間帯、行き先、生活歴などに合わせて調整してください。
※文例はそのまま使用するのではなく、本人の生活歴、外出目的、認知機能、身体機能、地域環境、家族状況などに合わせて調整してください。
利用者像の例
- 80歳・男性・要介護2
- 妻と二人暮らし
- アルツハイマー型認知症
- 屋内外の歩行は自立
- 長年、毎朝近所を散歩することが日課だった
- 以前は自分で近所の商店へ買い物に行っていた
- 最近、散歩中に帰宅する道が分からなくなることがある
- 一度、近隣住民に保護され自宅へ戻ったことがある
- 本人は「歩かないと体が弱る」と話し、散歩を続けたいと希望している
- 妻は外出を止めたい気持ちと、本人の楽しみを奪いたくない気持ちの間で悩んでいる
- 通所介護週3回利用
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|散歩を続けたい場合
昔から毎日歩いてきたので、これからも自分の足で外を歩きたい。ずっと家の中にいるのは嫌だし、近所を歩くことが楽しみになっている。
別の表現①|外出を制限されたくない場合
まだ自分で歩けるので、行きたいときには外へ出たい。危ないからと家の中に閉じ込められるような生活はしたくない。
別の表現②|買い物など役割を続けたい場合
近所へ買い物に行ったり、自分でできる用事はこれからも自分で続けたい。
家族の意向
おすすめ文例|安全と本人の希望の両方を大切にしたい場合
本人にとって散歩が大切なことは分かっているので、すべて止めたいとは思っていない。ただ、一人で帰れなくなることが心配なので、安全に外へ出られる方法を一緒に考えてほしい。
別の表現|家族の不安が強い場合
以前帰れなくなったことがあり、本人が外へ出るたびに心配になってしまう。本人の楽しみは残しながら、もし道に迷ったときにも早く対応できるようにしたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は長年、散歩や近所への買い物を日課としており、外へ出て自分の足で歩くことを生活の楽しみとしている。現在も歩行能力は保たれており、本人は今後も散歩を続けたいと希望している。一方、認知症による見当識や記憶力の低下から、外出先で自宅への道順が分からなくなることがあり、過去には近隣住民の支援を受けて帰宅したこともある。家族は事故や行方不明への不安から外出を制限したい気持ちがある一方、本人の楽しみや活動量を奪いたくないと考えている。外出そのものを制限するのではなく、本人が外へ出る目的や時間帯、行き先を把握し、家族や地域、介護サービス等で見守り方法を検討することで、安全と本人らしい生活の両立を図る必要がある。
別の表現|外出の背景をより重視する場合
本人は認知症により道順が分からなくなることがあるものの、外出には散歩や買い物など本人なりの目的があり、長年続けてきた生活習慣の一部となっている。安全面だけを理由に外出を制限すると、活動量や生活意欲の低下につながる可能性がある。一方で、帰宅困難や交通事故等のリスクも考慮する必要があるため、本人がよく向かう場所や外出しやすい時間帯、きっかけを把握し、同行や見守り、地域との連携など本人の自由をできるだけ保ちながら安全につなげる支援が必要である。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が大切にしてきた散歩や外出の習慣を尊重し、安全を確保しながら外へ出る機会を継続できるよう支援する。本人が外出する時間帯や目的、行き先を確認し、家族や介護サービスによる同行・見守り等を組み合わせる。外出時に道に迷った場合にも早期に本人の安全を確認できるよう、家族・関係職種・地域との連絡体制を整える。通所介護等を活用して日中の活動や外出機会を確保し、本人の生活意欲や身体機能を維持するとともに、家族の不安や見守り負担にも配慮する。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人の外出したい思いや生活習慣を尊重し、外出を一律に制限するのではなく、安全に散歩や外出を継続できる方法を検討する。家族・介護サービス・地域で本人の生活状況を共有し、道迷い時にも早期に対応できる体制を整えながら、本人らしい在宅生活を支援する。
第2表の文例
道迷いがある場合も、「外出しないこと」を目標にするのではなく、本人が安全に外出や活動を続けられることを生活目標として考えます。
課題① これからも散歩や外出を楽しみたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
安全に気を付けながら、これからも散歩や外出を続け、自分らしい生活を送りたい。
ニーズの別表現|本人の自由を重視する場合
家の中だけで過ごすのではなく、自分の足で外へ出て季節や地域の様子を感じながら生活したい。
長期目標
必要な見守りや支援を受けながら、安全に散歩や外出の機会を持ち、本人らしい生活を継続できる。
短期目標
家族や支援者と一緒に馴染みの場所へ出かけ、安心して歩く機会を持つことができる。
サービス内容
本人がこれまで歩いてきた散歩コースや行きたい場所を確認し、必要に応じて家族や支援者が同行する。通所介護でも歩行や屋外活動の機会を設け、本人の外出したい思いを生活の中で満たせるよう支援する。
課題② 道に迷っても安全につながる環境で生活したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
道が分からなくなったときにも助けてもらい、安全に家へ戻れるようにしたい。
長期目標
外出時に困った場合にも周囲の支援につながり、重大な事故なく地域で生活を継続できる。
短期目標
本人が外出しやすい時間帯や行き先について家族・関係者で共有し、必要な見守り方法を整えることができる。
サービス内容
本人が外出する時間帯、よく向かう場所、服装等の情報を家族・関係者で共有する。本人と家族の同意や状況に応じて、緊急連絡先が分かる携行物や地域の見守りサービス等も検討し、道迷い時に早期に安全確認できる体制を整える。
課題③ 身体を動かし、元気に生活を続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
これからも自分の足で歩き、身体を動かしながら元気に過ごしたい。
長期目標
歩行能力や活動量を維持し、日常生活の中で自分で移動する機会を継続できる。
短期目標
通所介護や日常生活の中で定期的に歩行する機会を持ち、安全に身体を動かすことができる。
サービス内容
本人の体調や歩行状態を確認しながら、通所介護で歩行や屋外活動の機会を設ける。本人の「歩きたい」という思いを活かし、無理のない範囲で活動量の維持を図る。
課題④ 家族も過度な不安を抱えず本人を見守りたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
本人の外出する楽しみを大切にしながら、家族も常に心配し続けることなく安心して見守りたい。
長期目標
家族だけに見守りの負担が集中せず、関係者と協力しながら本人の外出を支えることができる。
短期目標
本人の外出傾向や道迷い時の対応方法が家族・関係職種で共有され、家族が一人で対応を抱え込まずに済む。
サービス内容
本人の外出状況や道迷いの有無について家族・通所介護・ケアマネジャー等で共有する。道迷いがみられた場合の連絡方法や対応をあらかじめ確認し、家族だけに捜索や見守りの負担が集中しない支援体制を検討する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 安全に気を付けながら、これからも散歩や外出を続けたい。 | 必要な見守りを受けながら、安全に外出する機会を持ち、本人らしい生活を継続できる。 | 家族や支援者と馴染みの場所へ出かけ、安心して歩くことができる。 | 本人の散歩コースや行きたい場所を確認し、必要に応じて同行や見守りを行う。 |
| 道が分からなくなったときにも助けてもらい、安全に家へ戻れるようにしたい。 | 外出時に困った場合にも周囲の支援につながり、安全に地域生活を継続できる。 | 外出傾向や行き先を関係者で共有し、必要な見守り方法を整えることができる。 | 外出時の情報を共有し、必要に応じて緊急連絡や地域の見守り方法を検討する。 |
| これからも自分の足で歩き、身体を動かしながら元気に過ごしたい。 | 歩行能力や活動量を維持し、自分で移動する機会を継続できる。 | 定期的に歩行や屋外活動を行うことができる。 | 体調・歩行状態を確認しながら通所介護等で活動機会を設ける。 |
| 本人の外出する楽しみを大切にしながら、家族も安心して見守りたい。 | 家族だけに負担が集中せず、関係者と協力して本人の外出を支えることができる。 | 外出傾向と道迷い時の対応方法を関係者で共有できる。 | 本人の外出状況を共有し、道迷い時の連絡・対応方法を確認する。 |
認知症・外出・道迷いのケアプランで意識したいポイント
「なぜ外へ出るのか」を考える
外出には、散歩、買い物、仕事へ行くつもり、家族を迎えに行くつもりなど、本人なりの目的がある場合があります。「徘徊」と一括りにせず、どの時間帯に、どのような言葉を話し、どこへ向かおうとしているのかを確認します。
安全のために外出そのものを奪わない
転倒や道迷いを心配して外出機会をすべてなくすと、活動量や楽しみ、本人の役割が失われることがあります。本人にとって外出することがどのような意味を持っているのかを考え、安全につなげる方法を検討します。
道迷いが起こりやすい条件を整理する
毎回道に迷うとは限りません。夕方、疲れているとき、いつもと違う道へ進んだときなど、一定の傾向がみられる場合があります。外出した時間、行き先、帰宅までの経過などを確認すると、本人に合った支援方法を検討しやすくなります。
「見つける仕組み」だけでなく「安心して歩ける仕組み」を考える
道迷いへの対策は、本人を探す方法だけではありません。家族との散歩、通所介護での外出、馴染みの場所への同行など、本人が安全に外へ出られる機会そのものを増やすことも重要です。
家族だけに見守りを背負わせない
家族が常に玄関や本人の行動を気にして生活する状態が続くと、介護負担は大きくなります。本人の外出傾向や対応方法を介護サービスや関係者で共有し、必要に応じて地域の見守り体制なども活用しながら、家族だけで抱え込まない方法を考えます。
文例を使うときのポイント
- 「徘徊あり」だけで終わらず、本人が外へ出る目的を確認する
- これまでの散歩・買い物・仕事など生活歴を把握する
- 外出しやすい時間帯やよく向かう場所を確認する
- 歩行能力や転倒リスクも合わせて確認する
- 本人の自由と安全の両方をケアプランに反映する
- 道迷い時の連絡・対応方法を家族と関係者で共有する
- 家族だけに見守りや捜索の負担を集中させない
まとめ
認知症のある利用者に外出や道迷いがみられる場合、安全面だけに注目して外出を制限するのではなく、本人がなぜ外へ出たいのか、その行動が生活の中でどのような意味を持っているのかを理解することが大切です。
本人が大切にしてきた散歩や買い物などの習慣をできるだけ続けながら、同行、見守り、関係者との情報共有などを組み合わせることで、安全と本人らしい生活の両立を目指します。家族だけに不安や見守り負担を集中させないことも、在宅生活を続けるための重要な支援となります。
関連するケアプラン文例
- ケアプラン文例【認知症・夫婦二人暮らし】
- ケアプラン文例【認知症・独居】
- ケアプラン文例【認知症・老老介護】
- ケアプラン文例【認知症・デイサービス拒否】
- ケアプラン文例【認知症・服薬管理】


コメント