パーキンソン病のある利用者では、声量の低下や発音の不明瞭さによって、伝えたい内容が相手に届きにくくなることがあります。
しかし、「声が小さい」ことと「意思を伝えられない」ことは同じではありません。聞き慣れた家族には伝わる、静かな場所では会話できる、うなずきや指差し、筆談を組み合わせられるなど、本人がすでに用いている方法と残存能力を具体的に評価することが重要です。
ここでは、構音障害と小声があるものの、自分の言葉で希望を伝え、長年続けてきた地域の囲碁仲間との交流を保ちたい利用者を例に、第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 声が小さく聞き返されることが増えている
- 発音が不明瞭になり、会話に時間を要する
- 本人が会話を諦めたり発言を控えたりすることがある
- 家族が本人に代わって答える場面が増えている
- 静かな環境や十分な待ち時間があれば意思を伝えられる
- うなずき、指差し、筆談などを併用できる
- 友人や地域との交流を続けたい希望がある
担当ケースに近い部分を選び、声量、発音、会話が伝わりやすい時間帯・環境、理解力、上肢機能、本人が使いやすい伝達方法、生活歴、交流相手などに合わせて調整してください。
※声や話し方の変化が急に現れた場合、むせ・息苦しさ・発熱などを伴う場合、意思疎通の状態が大きく変化した場合には、主治医等へ相談し、原因の確認と必要な支援につなげてください。
利用者像の例
- 78歳・男性・要介護2
- 妻と二人暮らし
- パーキンソン病があり、構音障害と小声がみられる
- 質問の内容を理解し、自分の考えを言葉でまとめることができる
- 静かな場所で正面からゆっくり確認すると、短い会話は伝わる
- 聞き返された際には言い直し、うなずき、指差しを用いることができる
- 手の動かしにくさはあるが、大きめの文字で短い言葉を書くことができる
- 午後は疲労により声がさらに小さくなる傾向がある
- 会社員時代から囲碁を続け、現在も月2回の地域の集まりを楽しみにしている
- 最近は会話が伝わらないことを気にして、集まりで発言を控えることがある
- 妻は支えたい気持ちから先に答えることがあるが、本人の希望を直接確認したいと考えている
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|自分の言葉で伝えたい場合
声が小さく聞き返されることはあるが、急かされずに待ってもらえば自分で伝えられるので、できるだけ自分の言葉で希望を話したい。
別の表現①|交流を続けたい場合
囲碁の仲間との時間をこれからも大切にし、会話が伝わりやすい方法を使いながら集まりに参加したい。
別の表現②|伝達方法を選びたい場合
話して伝わりにくいときは、指差しや紙に書く方法も自分で選んで使いたい。
家族の意向
おすすめ文例|本人の発言を待ちたい場合
つい先に答えてしまうことがあるが、本人には考えも伝える力もあるため、必要なときだけ手伝い、本人の言葉を待てるようにしたい。
別の表現|社会参加を支えたい場合
会話が伝わりにくいことだけで外出を諦めず、本人が楽しみにしている囲碁の集まりを続けられるよう支えたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は妻と自宅で生活し、日々のことを自分で決めながら、長年続けてきた囲碁と地域の仲間との交流を今後も続けたいと希望している。
パーキンソン病に伴う構音障害と小声により聞き返されることが増え、疲労時には発言を控える場面がみられるが、質問の理解と意思形成は保たれ、自分の考えを言葉で伝えることができる。
静かな場所で正面から話し、返答を急かさず待つことで伝わりやすく、言い直し、うなずき、指差し、大きめの文字による筆談も状況に応じて用いることができる。
妻が先に答える場面もあるため、支援者はまず本人へ問いかけ、本人が選んだ方法で意思を表出できる時間と環境を確保したうえで、本人から求めがあった場合に家族の補足を得る必要がある。
会話の困難さによる交流機会の減少を防ぎ、本人の伝達能力と生活歴を活かして、家庭内の意思決定や囲碁仲間との交流を継続できるよう支援する必要がある。
別の表現|残存能力を簡潔に示す場合
小声と発音の不明瞭さはあるが、理解力と意思形成は保たれており、待ち時間の確保や指差し・筆談の併用により本人自身が希望を伝えることができる。
本人の発言を家族が代弁することを前提とせず、本人が伝えやすい環境と方法を整え、社会参加を継続できる支援が必要である。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人の理解力、意思形成、言い直し、指差し、筆談等の力を活かし、本人が自分の方法で意思を伝えられるよう支援する。
会話時は周囲の音を減らして正面から一つずつ問いかけ、返答を急かさず待ち、伝わった内容を本人と確認する。
支援内容や生活上の選択は最初に本人へ確認し、家族による補足は本人の同意や求めがある場合に行う。
本人が大切にしてきた囲碁と地域交流を継続できるよう、本人が使いやすい伝達手段を関係者で共有し、状態の変化に応じて支援方法を見直す。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人の発言を待ち、話す・指差す・書くなど本人が選ぶ方法で意思を確認しながら、家庭での意思決定と地域交流を継続できるよう支援する。
第2表の文例
構音障害や小声がある場合には、「大きな声で話せること」だけを目標にせず、本人が持っている伝達手段を使って希望を表し、相手と意思を確認できる生活場面を目標として考えます。
課題① 自分の希望を自分の方法で伝えたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
急かされずに話を聞いてもらい、自分の希望や困りごとを自分の方法で伝えたい。
長期目標
話す、指差す、書くなど本人が選んだ方法で、日常生活の希望を相手に伝えられる。
短期目標
静かな環境と十分な待ち時間の中で、伝えたい内容を一つずつ表出できる。
サービス内容
本人の正面から短く問いかけ、返答を待ち、必要に応じて指差し用の選択肢や筆記具を準備し、伝わった内容を本人と確認する。
課題② 本人の意思を中心に生活のことを決めたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
家族任せにせず、自分の暮らしに関することは自分の意向を確認して決めたい。
長期目標
本人の意向が生活上の選択やサービス内容に反映されている。
短期目標
支援者が最初に本人へ確認し、本人が返答する時間を確保できる。
サービス内容
生活上の選択や支援内容は本人へ直接確認し、家族の補足が必要な場合も本人の同意を得て内容を確かめる。
課題③ 囲碁仲間との交流を続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
会話が伝わりにくいことだけで諦めず、囲碁仲間との交流を続けたい。
長期目標
本人に合った伝達方法を使いながら、囲碁の集まりに参加し、仲間との関係を継続できる。
短期目標
月2回の集まりで、挨拶や対局の希望を自分の方法で伝えられる。
サービス内容
参加前後の体調と疲労を確認し、本人が使いやすい筆記具等を準備するとともに、必要な配慮を本人の同意を得て交流相手と共有する。
課題④ 会話の状態を確認しながら安心して生活したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
声や話し方の変化を確認し、必要な相談をしながら安心して生活したい。
長期目標
会話や体調の変化を早期に共有し、本人に合った意思疎通方法を継続できる。
短期目標
声量、発音、疲労、伝わりやすい方法の変化を本人と一緒に確認できる。
サービス内容
本人が伝えやすい時間帯・環境・方法を記録して関係者で共有し、急な変化や生活上の支障がみられた場合は本人の意向を確認して主治医等への相談につなげる。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 自分の希望や困りごとを自分の方法で伝えたい。 | 本人が選んだ方法で日常生活の希望を伝えられる。 | 静かな環境と十分な待ち時間の中で内容を表出できる。 | 正面から短く問いかけ、指差しや筆談も準備し、内容を本人と確認する。 |
| 自分の暮らしに関することは自分の意向を確認して決めたい。 | 本人の意向が生活上の選択やサービス内容に反映されている。 | 支援者が最初に本人へ確認し、返答時間を確保できる。 | 本人へ直接確認し、家族の補足時も本人の同意と内容確認を得る。 |
| 囲碁仲間との交流を続けたい。 | 本人に合った伝達方法で集まりに参加し、関係を継続できる。 | 月2回の集まりで挨拶や対局の希望を伝えられる。 | 体調を確認し、筆記具等を準備し、同意を得て必要な配慮を共有する。 |
| 声や話し方の変化を確認しながら安心して生活したい。 | 変化を早期に共有し、本人に合った意思疎通方法を継続できる。 | 声量・発音・疲労・伝達方法の変化を本人と確認できる。 | 伝わりやすい条件を記録・共有し、必要時は本人の意向を確認して相談につなげる。 |
パーキンソン病・構音障害のケアプランで意識したいポイント
声量だけで意思疎通能力を判断しない
小声でも内容を組み立てて話せる場合があります。何が伝わり、どの条件で伝わりやすいかを具体的に確認します。
本人の返答を待つ
聞き取りに時間がかかる場面でも、家族や支援者がすぐに代弁せず、本人が言い直したり別の方法を選んだりする時間を確保します。
伝わりやすい条件を生活場面で探す
周囲の音、相手との位置、時間帯、疲労、一度に尋ねる内容の数によって伝わりやすさが変わるため、実際の場面で確認します。
代替手段は本人が選べるようにする
指差しや筆談を一律に押しつけず、本人がその場で使いやすい方法を選択できるよう準備します。
会話の先にある生活目的を見る
発声そのものだけでなく、家族との相談、買い物、趣味活動、友人との交流など、本人が会話を使って続けたい生活を計画に反映します。
文例を使うときのポイント
- 本人の理解力と意思形成を分けて評価する
- 聞き取れる言葉や会話の長さを確認する
- 伝わりやすい環境・時間帯・相手を確認する
- 言い直し、うなずき、指差し、筆談等の使用状況を確認する
- 本人が希望する伝達方法を確認する
- 家族の代弁は本人の同意を前提とする
- 生活歴や続けたい役割・交流を目標に反映する
- 状態変化時の相談先と共有方法を確認する
まとめ
パーキンソン病による構音障害や小声がある場合には、聞き取りにくさだけで本人の意思疎通能力を判断しないことが重要です。
本人が伝えられている言葉、環境、時間帯、言い直しや指差し、筆談などの方法を確認し、まず本人へ問いかけて返答を待つ支援を計画に位置づけます。
本人の伝達能力と生活歴を活かし、家庭での意思決定や囲碁仲間との交流など、本人らしい生活を続けることにつなげる視点が大切です。
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