パーキンソン病のある利用者では、寝返りやベッドからの起き上がりに時間がかかり、朝の離床や夜間のトイレ移動が難しくなることがあります。
起き上がりが難しくなると、家族が身体を引き起こす介助が増え、本人が自分で動く機会が少なくなることがあります。
ここでは、パーキンソン病によりベッドからの起き上がりに時間がかかるものの、自分の力を使って離床し生活を続けたい利用者を例に、第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- ベッド上で寝返りがしにくい
- 朝の起き上がりに時間がかかる
- 身体を起こしてから座位が安定するまで時間を要する
- 夜間のトイレ時に起き上がることが難しい
- 家族が身体を引き起こしている
- 朝は特に身体が動きにくい
- 本人はできる限り自分で起きたいと希望している
担当ケースに近い部分を選び、寝返り・起き上がり・端座位・立ち上がりのどの工程が難しいのか、ベッド環境、時間帯、本人・家族の希望などに合わせて調整してください。
※急に起き上がれなくなった、強い痛みやめまいがある、転倒後から動作が変化した、意識状態に変化がある場合などは、パーキンソン病による動作困難だけと考えず、必要に応じて医療職等へ相談してください。
利用者像の例
- 79歳・男性・要介護2
- 妻と二人暮らし
- パーキンソン病
- 日中の食事・排泄は概ね自立
- 屋内は歩行器等を使用して移動している
- ベッド上での寝返りに時間がかかる
- 朝は身体が動きにくく起き上がりに時間を要する
- ベッド柵等を使用すると自分で起き上がれることもある
- 端座位を取った直後は姿勢が安定するまで少し時間が必要
- 夜間にトイレへ行く際、妻を呼ぶことが増えている
- 妻が本人の肩や腕を引いて起こすことがある
- 本人は「時間がかかっても自分で起きたい」と話している
- 以前は朝起きると新聞を読むことを日課としていた
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|自分で起きたい場合
朝は身体が動きにくいが、時間がかかっても自分でベッドから起きられるようにしたい。
別の表現①|妻に頼りすぎたくない場合
起きるたびに妻に身体を起こしてもらうのではなく、自分でできるところは自分で行いたい。
別の表現②|朝の生活を続けたい場合
自分で起きて着替え、朝食を食べて新聞を読む今までの生活を続けたい。
家族の意向
おすすめ文例|安全に起きてほしい場合
無理に起きようとして転ばないか心配だが、自分でできる動作はできるだけ続けてもらいたい。
別の表現|介助負担を減らしたい場合
身体を引き起こす介助は私にも負担があるので、本人が起きやすい方法を一緒に考えたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は妻と住み慣れた自宅で生活し、朝の離床を含め自分で行える生活動作は今後も自分で続けたいと希望している。
現在はパーキンソン病による動作緩慢等から、寝返りやベッドからの起き上がりに時間を要し、特に朝や夜間には妻の介助を求めることが増えている。
一方、ベッド上で身体を動かす時間を確保し、支持物等を利用することで本人自身が起き上がれる場面もある。
妻が身体を引き上げる介助を行うことがあり、本人が自分で動く機会の減少と妻の身体的負担が懸念される。
寝返り、起き上がり、端座位、立ち上がりの各工程を確認し、本人が自分で行える部分を活かしながら、安全に離床できる環境と支援方法を整える必要がある。
別の表現|離床機会の維持を重視する場合
本人は起き上がりに時間を要するようになっているが、環境や時間帯によっては自ら離床することができている。
起き上がりの難しさからベッド上で過ごす時間が増えないよう、自力で行える動作を残し、離床後の食事、更衣、移動等の生活活動につなげる必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が現在行えている寝返りや起き上がり動作を活かし、自分の力で安全に離床できるよう支援する。
寝返り、起き上がり、端座位、立ち上がりを工程ごとに確認し、本人が行える部分では十分な時間を確保して見守る。
ベッドの高さや位置、支持物等の環境を確認し、本人が安全に動作しやすい環境を整える。
家族が身体を無理に引き起こす介助を減らし、本人の自立と家族の身体的負担の軽減を両立できる支援方法を共有する。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人が行える寝返り・起き上がり動作を活かし、安全に離床できる環境を整える。
本人が自力で行える部分は見守り、必要な場面のみ支援することで、自立した生活と家族の負担軽減につなげる。
第2表の文例
ベッドからの起き上がりが難しい場合には、「一人で起きられること」だけではなく、本人ができる工程を活かし、安全に離床してその後の生活活動につなげられることを目標として考えます。
課題① 時間がかかっても自分でベッドから起きたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
時間がかかっても、自分の力を使ってベッドから起き上がりたい。
ニーズの別表現|自立を重視する場合
毎回起こしてもらうのではなく、自分でできる起き上がり動作を続けたい。
長期目標
本人の現在の能力を活かし、安全にベッドから離床できる。
短期目標
本人に合った方法と十分な時間を確保することで、自分で行える起き上がり動作を継続できる。
サービス内容
寝返りから起き上がりまでの動作を確認し、本人が自分で行える工程は十分に待って見守る。
困難な工程のみ必要な支援を行い、本人自身が身体を動かす機会を確保する。
課題② 起き上がりやすいベッド環境で安心して生活したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
自分が動きやすいベッド環境を整え、安心して起き上がれるようにしたい。
長期目標
本人の身体状況に合った環境が整い、安全に起き上がりと離床を行うことができる。
短期目標
ベッドの高さや周囲の環境を確認し、本人が身体を動かしやすい状態を整えることができる。
サービス内容
ベッドの高さ、位置、周囲のスペース、支持物等を確認し、本人が安全に寝返り・起き上がりを行いやすい環境を検討する。
課題③ 自分で起きて朝の生活を始めたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
自分でベッドから起き、着替えや朝食など今までの朝の生活を続けたい。
長期目標
離床から身支度や食事につなげ、本人らしい一日の生活リズムを継続できる。
短期目標
無理のない時間に離床し、着替えや朝食等の朝の生活動作を行うことができる。
サービス内容
本人が比較的動きやすい時間帯を確認し、離床後に更衣、食事、整容等の生活活動へつながるよう支援する。
課題④ 妻も身体を引き起こさず無理なく支えたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
妻も毎回身体を引き起こすのではなく、本人ができる動作を活かしながら無理なく支えたい。
長期目標
本人の起き上がり能力が活かされ、妻も身体的負担を増やさず在宅生活を支えることができる。
短期目標
本人が自分で行える動作と介助が必要な工程を妻・関係者で共有できる。
サービス内容
本人の起き上がり方法を家族と確認し、無理に身体を引き起こさず、本人の動きを活かした見守り・支援方法を共有する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 時間がかかっても、自分の力を使ってベッドから起き上がりたい。 | 現在の能力を活かし、安全にベッドから離床できる。 | 本人に合った方法で、自分で行える起き上がり動作を継続できる。 | 寝返り・起き上がりを確認し、自分でできる工程は見守り、困難な部分のみ支援する。 |
| 自分が動きやすいベッド環境を整え、安心して起きたい。 | 本人に合った環境で、安全に起き上がりと離床を行える。 | ベッド周囲を確認し、身体を動かしやすい環境を整えられる。 | ベッドの高さ・位置・周囲のスペース等を確認する。 |
| 自分で起き、着替えや朝食など今までの朝の生活を続けたい。 | 離床から生活動作につなげ、本人らしい生活リズムを継続できる。 | 無理のない時間に離床し、朝の生活動作を行える。 | 動きやすい時間帯を確認し、離床後の更衣・食事等につなげる。 |
| 妻も毎回身体を引き起こさず、無理なく本人を支えたい。 | 本人の能力が活かされ、妻も身体的負担なく支援できる。 | 自分でできる工程と介助が必要な工程を共有できる。 | 本人の起き上がり方法を確認し、家族と安全な支援方法を共有する。 |
パーキンソン病・起き上がり困難のケアプランで意識したいポイント
「起き上がれない」を工程に分ける
寝返りが難しいのか、横向きから身体を起こすことが難しいのか、端座位を保つことが難しいのかを分けて確認します。
朝だけ難しい場合もある
一日の中で動作状態に差がある場合には、朝の状態だけで「起き上がり全介助」と判断しないことが重要です。
ベッド環境を見る
ベッドの高さ、壁との距離、身体を動かせるスペース、支持物等によって起き上がりやすさが変わることがあります。
起き上がった直後の状態を確認する
身体を起こせても、端座位直後にふらつきやめまいが生じる場合があります。すぐに立たせず、姿勢や体調が安定していることを確認します。
家族が引き起こしすぎない
本人が動き出す前に家族が身体を引き上げると、本人が自分で起きる機会が減ります。本人の動作を待ち、必要な部分だけを支援します。
介護者の身体的負担も確認する
身体を抱える、引き起こすといった介助は家族の腰や肩への負担にもつながります。本人だけでなく介護者側の安全も考えます。
離床後の生活につなげる
起き上がること自体を目標にするのではなく、着替える、朝食を食べる、新聞を読むなど、本人が一日を始めるための生活活動につなげて考えます。
文例を使うときのポイント
- 寝返り・起き上がり・端座位を分けて確認する
- 朝と日中で動作に違いがないかを見る
- ベッドの高さや周囲の環境を確認する
- 本人が自力で行える工程を残す
- 動作開始まで十分な時間を確保する
- 起き上がった直後のふらつきを確認する
- 家族が身体を引き上げすぎていないかを見る
- 離床後の更衣・食事・活動につなげて考える
まとめ
パーキンソン病によってベッドからの起き上がりが難しくなった場合には、「起きられる・起きられない」だけではなく、寝返りから離床までのどの工程に支援が必要なのかを具体的に確認することが重要です。
本人が自分で行える動作を残し、ベッド環境や時間帯を整えながら、必要な部分だけを支援します。
起き上がりを単独の動作ではなく、着替え、食事、排泄、外出など一日の生活を始めるための動作として考えることで、本人の自立した生活につながるケアプランになります。
関連するケアプラン文例
- ケアプラン文例【パーキンソン病・立ち上がり困難】
- ケアプラン文例【パーキンソン病・転倒を繰り返す】
- ケアプラン文例【パーキンソン病・更衣・入浴動作】


コメント