パーキンソン病のある利用者では、椅子やベッド、トイレなどから立ち上がる際に時間がかかったり、何度かやり直したりすることがあります。
立ち上がりが難しくなると、本人自身が動くことをためらったり、家族が毎回引き上げるように介助したりすることで、自分で立つ機会が少なくなることがあります。
ここでは、パーキンソン病によって立ち上がり動作に時間がかかるものの、できる限り自分の力で立って生活したい利用者を例に、第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 椅子からの立ち上がりに時間がかかる
- 何度か反動をつけてから立ち上がる
- 低い椅子やソファから立つことが難しい
- トイレからの立ち上がりに支援が必要
- ベッドから起き上がった後の起立が不安定
- 家族が毎回身体を引き上げている
- 本人は自分で立つ力を維持したい
担当ケースに近い部分を選び、本人が立ち上がりにくい場所、時間帯、座面の高さ、手すりの有無、身体機能、本人・家族の希望などに合わせて調整してください。
※急に立ち上がれなくなった、強いふらつきや意識が遠のく感じがある、転倒や痛みの後から動作が変化した場合などは、身体機能だけでなく体調や血圧、服薬、疼痛等も確認し、必要に応じて医療職等へ相談してください。
利用者像の例
- 78歳・女性・要介護2
- 夫と二人暮らし
- パーキンソン病
- 食事・排泄は概ね自立
- 屋内は歩行器等を使用して移動している
- 椅子から立ち上がるまでに時間がかかる
- 低いソファでは数回やり直すことがある
- トイレでは手すりを使うことで自分で立ち上がれることが多い
- 朝は特に動作がゆっくりしている
- 夫が心配して両腕を引っ張るように介助することがある
- 本人は「時間がかかっても自分で立ちたい」と話している
- 以前は洗濯や簡単な家事を行っていた
- 最近は立ち座りへの不安から座って過ごす時間が増えている
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|自分で立ちたい場合
立つまでに時間はかかるが、自分でできるうちはできるだけ自分の力で立ちたい。
別の表現①|生活動作を続けたい場合
立ったり座ったりすることが大変になってきたが、自分で動いて家のことを続けたい。
別の表現②|介助されすぎたくない場合
すぐに引っ張ってもらうのではなく、自分で立てるときは少し待って見守ってほしい。
家族の意向
おすすめ文例|安全に支えたい場合
立ち上がるときに倒れないか心配だが、本人が自分で立てる力はできるだけ残してほしい。
別の表現|介助方法を知りたい場合
どの場面で手伝えばよいのか分からず、つい身体を引っ張ってしまうので、安全な見守り方や介助方法を知りたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は夫と住み慣れた自宅で生活し、立ち上がりに時間がかかっても、自分で行える移動や生活動作は自分で続けたいと希望している。現在、食事や排泄は概ね自立しており、手すり等を使用することでトイレからの立ち上がりも自ら行えることが多い。一方、パーキンソン病による動作緩慢等から、低い椅子やソファ、朝の時間帯などでは立ち上がりに時間を要し、数回やり直すことがある。夫は転倒を心配し、本人が動作を始める前に身体を引き上げるように介助することが増えている。立ち上がりが難しい場所や時間帯を具体的に確認し、座面の高さや手すり等の環境を整えるとともに、本人が自分で行える場面では十分な時間を確保して見守り、必要な場面のみ支援することで現在の起立能力を生活の中で維持する必要がある。
別の表現|活動量低下を重視する場合
本人は立ち上がり動作への不安から座って過ごす時間が増えているが、環境や方法によっては自ら立ち上がることができている。すべての起立動作を介助するのではなく、本人が立ち上がりやすい環境と方法を整え、自分で立つ機会を確保することが必要である。立ち上がりから移動、家事等の生活活動につなげることで、生活全体の活動性を維持できるよう支援する必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が現在の立ち上がり能力を活かし、自分で立って移動や生活動作を継続できるよう支援する。椅子、ベッド、トイレ等の場所ごとに起立動作を確認し、座面の高さ、手すり、足元環境等を整える。本人が自ら立ち上がれる場面では十分な時間を確保して見守り、動作を急かしたり必要以上に身体を引き上げたりしないよう支援方法を家族と共有する。立ち上がり能力や体調の変化を継続して確認し、安全と自立を両立した生活を支援する。
別の表現|短めにまとめたい場合
立ち上がりやすい環境と方法を整え、本人が自分で行える起立動作を継続できるよう支援する。必要以上の介助を避け、安全上支援が必要な場面のみ見守り・介助を行う。
第2表の文例
立ち上がりが難しくなっている場合には、「一人で素早く立てること」だけを目標にするのではなく、本人に合った環境と方法で、必要な生活場面に自分の力で立ち上がれることを目標として考えます。
課題① 自分の力で立ち上がることを続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
時間がかかっても、自分の力を使って椅子やベッドから立ち上がりたい。
ニーズの別表現|自立を重視する場合
すぐに介助してもらわず、自分で立てる場面は自分で立つ生活を続けたい。
長期目標
本人の現在の起立能力を活かし、自分で立ち上がって生活動作を開始できる。
短期目標
本人に合った方法と十分な時間を確保することで、自分で立ち上がれる場面を継続できる。
サービス内容
立ち上がり時の足の位置、身体の動かし方、手すり等の使用状況を確認する。本人が自分で立てる場面では十分に待ち、安全を確認しながら見守る。
課題② 立ち上がりやすい環境で安全に生活したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
椅子やトイレから立ちやすい環境を整え、安心して生活したい。
長期目標
本人の身体状況に合った環境が整い、安全に立ち座りを行うことができる。
短期目標
立ち上がりにくい場所を把握し、座面の高さや手すり等を本人に合った状態に整えることができる。
サービス内容
普段使用している椅子、ベッド、トイレ等の高さや手すりの位置、足元環境を確認し、本人が安全に立ち上がりやすい環境を検討する。
課題③ 立ち上がって家の中でできることを続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
座っているだけの生活にならず、自分で立って家の中でできることを続けたい。
長期目標
立ち上がりから移動につなげ、家事や身の回りの活動を継続できる。
短期目標
一日の中で立ち上がって移動する機会を持ち、自分でできる生活活動を継続できる。
サービス内容
本人が行っている家事や生活動作を確認し、立ち上がりから移動、活動につながる機会を確保する。長時間座位が続かないよう体調に合わせて活動を支援する。
課題④ 夫も無理に引っ張らず安全に支えたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
夫も本人を無理に引き上げるのではなく、自分で立てるときは見守り、必要なときだけ安全に支えたい。
長期目標
本人の起立能力が活かされ、夫も身体的な負担を増やさず安全に支援できる。
短期目標
本人が自分で立てる場面と介助が必要な場面を夫・関係者で共有できる。
サービス内容
本人の立ち上がり能力を具体的に確認し、家族と共有する。本人が自力で行える場合は見守り、介助が必要な場合には家族の身体的負担が大きくならない支援方法を検討する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 時間がかかっても、自分の力で椅子やベッドから立ち上がりたい。 | 現在の起立能力を活かし、自分で立ち上がって生活動作を開始できる。 | 本人に合った方法と十分な時間により、自分で立てる場面を継続できる。 | 起立動作を確認し、自分でできる場面では十分に待って見守る。 |
| 立ち上がりやすい環境を整え、安心して生活したい。 | 本人の身体状況に合った環境で、安全に立ち座りできる。 | 立ち上がりにくい場所を把握し、座面や手すり等を整えられる。 | 椅子・ベッド・トイレ等の高さ、手すり、足元環境を確認する。 |
| 座っているだけにならず、自分で立ってできることを続けたい。 | 立ち上がりから移動につなげ、家事や生活活動を継続できる。 | 一日の中で立ち上がって活動する機会を持つことができる。 | 本人ができる家事や生活動作を確認し、活動機会を確保する。 |
| 夫も無理に引き上げず、必要なときだけ安全に支えたい。 | 本人の起立能力が活かされ、夫も無理なく支援できる。 | 自力で立てる場面と介助が必要な場面を共有できる。 | 本人の能力を確認し、見守りと介助が必要な場面を家族と共有する。 |
パーキンソン病・立ち上がり困難のケアプランで意識したいポイント
「立てない」ではなく場所ごとに確認する
低いソファでは難しくても、手すりのあるトイレでは自分で立てるなど、環境によって起立能力は変わります。場所ごとに確認することが重要です。
座面の高さを見る
同じ本人でも、座面が低すぎると立ち上がりが難しくなる場合があります。普段使用している椅子やベッド、トイレ等の高さを確認します。
動作を急かさない
立ち上がるまでに時間がかかっても、本人自身で動作を開始できる場合があります。安全を確認しながら十分に待つことも自立支援になります。
何度もやり直す理由を確認する
足の位置、身体の前傾、手を置く場所、椅子の高さ等によって立ち上がりやすさが変わる場合があります。単に筋力低下だけと考えず、実際の動作を確認します。
家族が身体を引っ張りすぎない
家族が腕を引くなどして毎回立たせると、本人自身が立ち上がる機会が減るだけでなく、家族側の身体的負担にもつながります。本人が行える動作を確認して支援方法を整理します。
立ち上がった後まで確認する
立てたことだけで終わらず、立位が安定するまでの状態や、その後の歩き出しまで確認します。立ち上がった直後にふらつく場合には特に注意が必要です。
起立動作を生活活動につなげる
立ち上がり練習そのものを目的にせず、トイレへ行く、洗濯物を畳む、食卓へ移動するなど、本人が生活の中で立つ理由を残すことが重要です。
文例を使うときのポイント
- 椅子・ベッド・トイレなど場所ごとに確認する
- 座面の高さや手すりの有無を見る
- 本人が自力で立てる場面を確認する
- 立ち上がるまで十分な時間を確保する
- 立ち上がった直後のふらつきも確認する
- 時間帯による動作の違いを見る
- 家族が過度に引き上げていないか確認する
- 起立動作を家事や移動など生活活動につなげる
まとめ
パーキンソン病によって立ち上がりが難しくなっている場合には、「立てる・立てない」だけで判断せず、どの場所、どの時間帯、どのような環境であれば本人自身で立てるのかを確認することが重要です。
座面の高さや手すり等を整え、本人が自分で立ち上がれる場面では十分な時間を確保します。支援が必要な部分だけを補うことで、現在の起立能力を生活の中で使い続けることができます。
立ち上がりを単独の動作として考えるのではなく、移動、排泄、家事、外出など本人が続けたい生活につなげることが、その人らしいケアプランにつながります。
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