パーキンソン病のある利用者では、歩行や方向転換、立ち上がりなどの場面でバランスを崩し、転倒を繰り返すことがあります。
転倒が続くと、本人だけでなく家族も不安が強くなり、「歩かない方が安全」「外へ出ない方がよい」と活動を制限しやすくなります。しかし、活動を減らしすぎることで身体機能や生活範囲がさらに低下する場合もあります。
ここでは、パーキンソン病があり自宅内で転倒を繰り返しているものの、自分で歩き生活を続けたい利用者を例に、第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- パーキンソン病があり転倒を繰り返している
- 立ち上がりや方向転換時に転倒することがある
- 夜間や急いでいるときに転倒しやすい
- 転倒後から本人の歩行への不安が強くなっている
- 家族が転倒を心配して常に付き添っている
- 本人は自分で歩く生活を続けたい
- 転倒を防ぎながら活動量も維持したい
担当ケースに近い部分を選び、実際の転倒場所、時間帯、転倒時の動作、歩行状態、住環境、本人・家族の希望などに合わせて調整してください。
※転倒回数が急に増えた、意識消失や強いふらつきがある、頭部を打った、強い痛みや歩行状態の急激な変化がある場合には、転倒予防だけで対応せず、必要に応じて医療機関等へ相談してください。
利用者像の例
- 80歳・男性・要介護2
- 妻と二人暮らし
- パーキンソン病
- 食事・排泄・更衣は概ね自立
- 屋内は歩行器等を使用して移動している
- 直近3か月で自宅内の転倒が数回みられている
- 居間からトイレへ向かう際の方向転換で転倒したことがある
- 椅子から急いで立ち上がった際にバランスを崩したことがある
- 夜間のトイレ移動時に転倒した経験がある
- 転倒後から歩行に対する不安が強くなっている
- 妻は転倒を心配し、本人が立ち上がるたびに付き添っている
- 本人は「転ぶのは怖いが、歩けるうちは自分で歩きたい」と話している
- 以前は自宅周囲の散歩を日課としていた
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|自分で歩きたい場合
転ぶことは怖いが、歩けるうちはできるだけ自分の足で移動し、自分でできることを続けたい。
別の表現①|転倒への不安が強い場合
また転ぶのではないかと心配になるので、安全に動ける方法を知って安心して生活したい。
別の表現②|外出を続けたい場合
転倒を心配して家の中だけで過ごすのではなく、また外へ出られるようになりたい。
家族の意向
おすすめ文例|安全と自立を両立したい場合
何度か転んでいるので心配だが、本人が歩きたいという気持ちも大切にしながら、安全に生活できるようにしたい。
別の表現|付き添い負担が増えている場合
転倒が心配で本人が動くたびに付き添っている。危険な場面と一人でできる場面を分けて、安心して見守れるようにしたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は妻と住み慣れた自宅で生活を続け、自分で行える移動や生活動作は今後も自分で続けたいと希望している。現在も食事、排泄、更衣等は概ね自立しており、歩行器等を使用することで屋内移動を行えている。一方、パーキンソン病による動作のしにくさやバランス低下があり、直近では方向転換、立ち上がり、夜間のトイレ移動等で複数回転倒している。本人は転倒への不安を感じながらも歩行を続けたいという思いがあり、妻は転倒を心配して常に付き添う場面が増えている。転倒を単に回数だけで捉えず、発生した場所、時間帯、動作、体調等を確認し、本人が転倒しやすい状況を整理する必要がある。住環境や移動方法を調整し、安全を確保しながら本人が現在行えている移動や活動を継続できるよう支援する必要がある。
別の表現|転倒後の活動低下を重視する場合
本人は複数回の転倒を経験して以降、再び転倒することへの不安が強くなり、以前より歩行や外出を控えるようになっている。しかし、現在も歩行器等を使用することで自ら移動できる能力を有している。転倒した状況を具体的に分析し、安全に移動できる環境と方法を整えるとともに、必要以上に活動を制限せず、本人が生活の中で身体を動かす機会を維持する必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が自分で歩き生活したいという希望を尊重し、転倒状況を具体的に確認しながら安全な移動方法を整える。転倒した場所、時間帯、動作、体調等を継続して確認し、転倒しやすい状況を本人・家族・関係者で共有する。移動経路や住環境を整え、本人が安全に行える場面では必要以上の介助を行わず見守る。転倒への不安から活動を過度に制限せず、本人が現在の移動能力や生活動作を活かしながら在宅生活を継続できるよう支援する。
別の表現|短めにまとめたい場合
転倒した状況を分析し、本人が安全に移動できる環境と方法を整える。本人のできる移動・生活動作は継続し、転倒への不安から活動を制限しすぎないよう本人・家族と支援方法を共有する。
第2表の文例
転倒を繰り返している場合には、「転倒ゼロ」だけを目標にするのではなく、転倒しやすい状況を把握し、安全な方法で本人が必要な移動や活動を続けられることを目標として考えます。
課題① 転倒を心配しすぎず自分で移動したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
転ぶことを心配して動かなくなるのではなく、安全に自分で移動する生活を続けたい。
ニーズの別表現|自立を重視する場合
必要なところだけ支援を受けながら、自分で歩けるところは自分で歩きたい。
長期目標
本人に合った安全な方法で自宅内を移動し、現在の移動能力を活かした生活を継続できる。
短期目標
転倒しやすい動作や場面を理解し、慌てず安全な方法で移動できる。
サービス内容
歩行、立ち上がり、方向転換等の状態を確認し、本人が転倒しやすい動作を整理する。本人が安全に行える動作方法を確認し、自力で行える場面は見守る。
課題② 転倒しやすい場所を減らし安心して自宅で暮らしたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
家の中でつまずいたりバランスを崩したりする場所を減らし、安心して生活したい。
長期目標
本人が移動しやすい住環境が整い、自宅内で安心して生活できる。
短期目標
本人・家族が転倒しやすい場所を把握し、移動経路を安全に保つことができる。
サービス内容
本人の移動経路を確認し、段差、敷物、家具配置、照明、手すり等の環境を確認する。本人の動作能力に合わせて安全に移動できる環境を検討する。
課題③ 転倒した状況を振り返り再発を減らしたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
転んだときの状況を確認し、同じような転倒をできるだけ繰り返さず生活したい。
長期目標
本人・家族が転倒しやすい状況を理解し、状態に合った方法で安全に生活できる。
短期目標
転倒やヒヤリとした場面について、場所・時間・動作等を確認し、関係者と共有できる。
サービス内容
転倒やヒヤリとした際には、場所、時間帯、直前の動作、体調、履物、周囲の環境等を確認する。共通する状況がないか整理し、必要な支援方法を見直す。
課題④ 妻も常に付き添わず安心して見守りたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
妻も本人が動くたびに付き添うのではなく、安全にできることを見守りながら生活したい。
長期目標
本人が自分で安全に行える動作が尊重され、妻も過度な不安や見守り負担を抱えず生活できる。
短期目標
一人で行える動作と見守り・介助が必要な場面を本人・妻・関係者で共有できる。
サービス内容
本人の移動能力と転倒しやすい場面を家族と共有し、安全に自立できる場面では付き添いすぎず見守れるよう支援方法を整理する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 転倒を心配して動かなくなるのではなく、安全に自分で移動したい。 | 安全な方法で自宅内を移動し、現在の移動能力を活かした生活を継続できる。 | 転倒しやすい動作を理解し、安全な方法で移動できる。 | 歩行・立ち上がり・方向転換等を確認し、安全な移動方法を整理する。 |
| 転倒しやすい場所を減らし、安心して自宅で暮らしたい。 | 移動しやすい住環境が整い、安心して生活できる。 | 本人・家族が危険な場所を把握し、移動経路を安全に保てる。 | 段差、敷物、家具、照明、手すり等を確認し、環境を調整する。 |
| 転倒した状況を確認し、同じような転倒を繰り返さず生活したい。 | 転倒しやすい状況を理解し、状態に合った方法で生活できる。 | 転倒やヒヤリ場面について場所・時間・動作等を共有できる。 | 転倒状況を具体的に確認し、共通する原因や必要な支援を検討する。 |
| 妻も本人が動くたびに付き添わず、安全にできることを見守りたい。 | 本人の自立が尊重され、妻も過度な見守り負担なく生活できる。 | 自立できる場面と支援が必要な場面を共有できる。 | 本人の移動能力と注意が必要な場面を整理し、家族と共有する。 |
パーキンソン病で転倒を繰り返す場合のケアプランで意識したいポイント
転倒回数だけで評価しない
「今月3回転倒した」という情報だけでは、具体的な対策につながりにくくなります。どこで、何時頃、何をしているときに転倒したのかを確認します。
転倒する直前の動作を見る
立ち上がった直後、方向転換、トイレへ急いだとき、物を持ちながら歩いたときなど、転倒前の行動を確認することで共通する状況が見えることがあります。
時間帯による違いを確認する
朝、夕方、夜間など特定の時間帯に転倒が集中していないか確認します。動作状態、疲労、服薬状況等との関係も含めて整理します。
本人だけではなく住環境も見る
転倒の原因を本人の身体機能だけに求めず、敷物、段差、照明、家具配置、移動経路等も確認します。環境を変えることで安全性が高まる場合があります。
転倒予防と活動制限を区別する
転倒予防のために歩行や外出をすべて中止すると、活動量が低下する可能性があります。本人が安全にできる方法を考え、必要な活動を残します。
ヒヤリとした場面も重要な情報になる
実際に転倒しなかった場合でも、壁につかまった、よろけた、椅子に座り損ねそうになったなどの場面を確認することで、転倒する前に支援方法を見直せます。
家族の過度な付き添いにも注意する
転倒が続くと家族が常に付き添いたくなりますが、本人が一人で安全に行える動作まで介助すると活動機会が減ります。見守りが必要な場面を具体的に分けます。
文例を使うときのポイント
- 転倒した場所を確認する
- 転倒した時間帯を確認する
- 転倒直前に何をしていたか確認する
- 転倒時の体調や疲労等を確認する
- ヒヤリとした場面も記録する
- 移動経路や住環境を確認する
- 本人が安全にできる活動を残す
- 家族が付き添いすぎていないか確認する
まとめ
パーキンソン病のある利用者が転倒を繰り返している場合には、「転倒した」という事実だけではなく、どのような状況で転倒しているのかを具体的に確認することが重要です。
場所、時間帯、直前の動作、体調、住環境等を整理することで、その人特有の転倒しやすい状況が見えてくる場合があります。
転倒を防ぐことだけを目的に活動を制限するのではなく、安全な方法や環境を整えながら本人が自分で歩き、生活の中で身体を動かし続けられるケアプランを考えることが大切です。
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