パーキンソン病の調理支援は、料理全体を代行する前に、献立を決める・食材を準備する・加熱する・鍋を運ぶ工程に分けます。本人ができる座位の作業を残し、負担や危険のある工程だけを家族等が補う考え方です。
ここでは、手の震えと立位保持の負担があるが、得意な味噌汁作りを続け、家庭での役割を保ちたい利用者の架空事例で、第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 献立や味付けは考えられるが、硬い食材・重い鍋・長時間の立位が負担になる方
- 料理を全面的にやめるのではなく、家庭の役割を残す工程分担を考えたい場合
以下は架空事例です。動きやすい時間帯や道具の適否は人によって異なるため、実際の動作と本人・家族の希望を確認して調整してください。
利用者像の例
- 72歳・女性・要介護1
- 夫と二人暮らし
- 家族の食事を作ることを長年担ってきた
- 献立を考え食材を選ぶことができる
- 朝は比較的動きやすく、椅子に座れば野菜の下ごしらえができる
- 硬い食材を切ることと長時間の立位に負担がある
- ガスの消火を声に出して確認する習慣がある
- 夫が重い鍋の移動を手伝っている
- 本人は得意な味噌汁だけでも作り続けたい
- 夫は危険な工程を分担して役割を残したい
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例
全部は難しくても、朝の動きやすい時間に、得意な味噌汁は自分で作りたい。
家族の意向
おすすめ文例
危ないから全部やめてもらうのではなく、重い物や硬い食材は私が担当し、できる工程を続けてほしい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は長年家族の食事作りを担い、現在も献立を考え、味噌汁を作ることを自分の役割として大切にしている。
朝は比較的動きやすく、座位での下ごしらえと消火確認を行えるが、硬い食材の切断、重い鍋の移動、長時間の立位には負担がある。
夫は安全を心配しているが、危険な工程を分担して本人の役割を残したいと考えている。
調理を全面的に禁止せず、時間帯、姿勢、道具、工程ごとの能力を確認し、本人と夫が役割分担して安全に継続できる支援が必要である。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が動きやすい時間帯に、座位で行える工程と得意な調理を継続できる環境を整える。
包丁、火、重い調理器具を扱う工程は実際の動作を確認し、本人と夫で無理のない分担を決める。
調理後は本人が行っている消火確認を活かし、安全確認方法を家族と共有する。
第2表の文例
本人のできていることと生活上の目的を明確にし、必要な支援だけを組み合わせます。
課題① 得意な味噌汁作りを続け、家庭での役割を持ちたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
得意な味噌汁作りを続け、家庭での役割を持ちたい。
長期目標
安全な工程を自分で行い、調理の役割を継続できる。
短期目標
朝の動きやすい時間に、座って下ごしらえを行える。
サービス内容
座位で手が届く作業台と安定した椅子を整え、本人が食材を選ぶ・洗う等の下ごしらえを行う。手の震えや疲れが強まる工程は中断し、夫へ引き継ぐ。
課題② 火や包丁を安全に使いながら調理したい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
火や包丁を安全に使いながら調理したい。
長期目標
工程に応じた支援を受け、安全に調理を行える。
短期目標
消火を声に出して確認し、夫と一緒に最終確認できる。
サービス内容
夫が硬い食材の切断と重い鍋の移動を担当する。本人が加熱や味付けを行う範囲は動作と負担を確認して決め、消火は本人の声出し確認後に夫も確かめる。
課題③ 長く立たず、疲れを残さず家事をしたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
長く立たず、疲れを残さず家事をしたい。
長期目標
休憩を取りながら無理なく調理を継続できる。
短期目標
座位作業と休憩を取り入れ、疲労時に夫へ伝えられる。
サービス内容
作業時間と休憩の目安を本人と決め、疲労や動作の変化を確認して工程を調整する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 得意な味噌汁作りを続け、家庭での役割を持ちたい。 | 安全な工程を自分で行い、調理の役割を継続できる。 | 朝の動きやすい時間に、座って下ごしらえを行える。 | 座位で手が届く作業台と安定した椅子を整え、本人が食材を選ぶ・洗う等の下ごしらえを行う。手の震えや疲れが強まる工程は中断し、夫へ引き継ぐ。 |
| 火や包丁を安全に使いながら調理したい。 | 工程に応じた支援を受け、安全に調理を行える。 | 消火を声に出して確認し、夫と一緒に最終確認できる。 | 夫が硬い食材の切断と重い鍋の移動を担当する。本人が加熱や味付けを行う範囲は動作と負担を確認して決め、消火は本人の声出し確認後に夫も確かめる。 |
| 長く立たず、疲れを残さず家事をしたい。 | 休憩を取りながら無理なく調理を継続できる。 | 座位作業と休憩を取り入れ、疲労時に夫へ伝えられる。 | 作業時間と休憩の目安を本人と決め、疲労や動作の変化を確認して工程を調整する。 |
味噌汁作りを工程に分け、役割を残す
この事例では、朝に動きやすいことを生かして座位で野菜を準備します。ただし「朝なら安全」「座れば何でもできる」とは決めません。その日の手の動き、姿勢、疲れを見て、本人が担う工程を一緒に選びます。
- 本人:献立・食材・味付けを決め、座位で可能な下ごしらえを行う。疲れや手の動かしにくさを伝え、途中で休む。
- 夫:硬い食材を切る、重い鍋を運ぶ等を担当し、熱い物の移動を本人に任せない。本人が行った消火確認を一緒に確かめる。
- 作業療法士等の関係専門職:必要に応じて作業姿勢、椅子・作業台、手の届く範囲、道具の扱いを実際の調理動作で評価する。ケアマネジャーは家庭での分担と夫が対応できる時間を調整する。
包丁が滑る、熱い鍋を支えられない、立位が不安定になる等の場面では、その工程を中断して夫が引き継ぎます。夫が不在なら、事前に確認した範囲の作業にとどめるなど別の方法を選びます。調理を続けるために服薬時刻を自己調整する計画にはしません。
評価|完成だけでなく、食後までの疲れと分担を見る
- 本人が実際に行った工程、夫へ引き継いだ工程、休憩した場面を前回と比べる。
- 包丁・火・鍋の扱いで困った点、消火確認、ふらつきやヒヤリハットを確認する。
- 調理後の疲労が食事やその後の活動を妨げなかったか、本人に「自分が作った」という満足が残ったかを聞く。
- 夫の手伝いが増えすぎていないかを確かめ、食材の準備や作る量、実施する日を見直す。
評価記録例:本人が座位で野菜を洗い、使う具材と味付けを選択した。硬い食材の切断と鍋の移動は夫が担当。途中に休憩を入れ、本人は「今日はここまでなら疲れすぎない」と話した。食後の活動への影響と夫の負担を次回確認し、同じ分担を続けるか検討する。
評価するのは一人で料理を完遂したかではなく、必要な分担を使って本人の役割を続けられたかです。具体的な実施頻度・期間は家庭での生活と計画に合わせます。
計画書へ整理する
調理以外の生活課題はケアプラン文例一覧で確認できます。家庭で決めた工程分担を、第2表作成補助ツールで目標・支援内容の文案へ整理してください。


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