認知症のある利用者では、着替えを勧めても「まだ汚れていない」「この服でいい」と拒否したり、衣類を準備しても着替え方が分からなくなったりすることがあります。また、上下や前後を間違える、季節に合わない服を選ぶなど、更衣動作の一部に難しさがみられることもあります。
ここでは、認知症により着替えを拒否することがあり、更衣動作にも部分的な支援が必要になっている利用者を例に、本人の自尊心や生活習慣を尊重しながら、清潔で自分らしい身なりを保つ第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 何日も同じ服を着ようとする
- 着替えを勧めると「汚れていない」と拒否する
- 服の前後や裏表を間違えることがある
- 衣類を選ぶことが難しくなっている
- 着る順番が分からなくなることがある
- 家族が手伝おうとすると怒ることがある
- 本人自身で行える更衣動作も残っている
担当ケースに近い部分を選び、本人がどの更衣工程で困っているのか、着替えを拒否する理由、身体機能、生活習慣などに合わせて調整してください。
※急に更衣が難しくなった場合には、認知症だけでなく、痛み、関節可動域の低下、麻痺、体調変化など身体面についても確認してください。
利用者像の例
- 84歳・女性・要介護2
- 次女夫婦と同居
- アルツハイマー型認知症
- 屋内歩行、食事、排泄は概ね自立
- 上衣の着脱は自分で行える
- 衣類を選ぶことや着る順番に迷うことがある
- 前日に着ていた服を翌日も着ようとすることがある
- 家族が「着替えて」と言うと「まだきれいだからいい」と拒否することがある
- 以前から服装や身だしなみに気を遣っていた
- 本人に2着程度から選んでもらうと受け入れやすい
- デイサービス利用日は比較的着替えやすい
- 通所介護週3回利用
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|自分で選びたい場合
着る服くらいは自分で選びたい。何でも決められるのではなく、自分でできることは自分で続けたい。
別の表現①|着替える必要性を感じていない場合
まだ汚れていない服をすぐに着替える必要はないと思う。必要なときに自分のペースで着替えたい。
別の表現②|身だしなみを大切にしていた場合
外へ出るときにはきちんとした服を着て、人に会っても恥ずかしくないようにしたい。
家族の意向
おすすめ文例|本人の自立を残したい場合
自分で着られる部分はできるだけ続けてほしい。無理に着替えさせるのではなく、本人が納得して清潔な服を選べるようにしたい。
別の表現|家族との口論がある場合
着替えのたびに「その服は汚れている」と言って口論になることがある。本人の気持ちを傷つけずに着替えにつながる方法を知りたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は以前から服装や身だしなみに関心があり、現在も自分で服を選び着替えたいという思いを持っている。上衣の着脱等は自ら行える一方、認知症による記憶力や判断力の低下から、前日に着た服を再び選ぶことや、衣類を着る順番、前後等に迷うことがある。また、家族から一方的に着替えを勧められると「まだ汚れていない」と拒否する場面がみられる。一方、選択肢を2着程度に絞り、本人にどちらを着るか選んでもらうことで受け入れられることがある。本人が行える更衣動作を活かし、自分で選ぶ機会を残しながら、衣類の準備や必要な部分のみ支援することで、本人の自尊心と清潔な生活の両立を図る必要がある。
別の表現|清潔保持をより重視する場合
本人は更衣そのものをすべて行えないわけではなく、衣類を準備すれば自分で着替えられる場面がある。一方、同じ衣類を何日も着用しようとすることがあり、家族が着替えを促すと拒否につながっている。本人の「自分で決めたい」という思いを尊重し、着替えを強制するのではなく、入浴後や外出前など本人が受け入れやすい生活の流れの中で衣類を準備し、本人自身による更衣につなげる必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が自分で服を選び着替えたいという思いを尊重し、現在行える更衣動作はできるだけ本人自身で継続できるよう支援する。衣類の選択が難しい場合には複数の服を一度に提示せず、季節や場面に合った衣類を少数準備し本人に選んでもらう。着替えを拒否した場合には無理に進めず、入浴後や外出前など本人が受け入れやすいタイミングを活用する。更衣が難しい工程についてのみ必要な声かけや介助を行い、本人が清潔で自分らしい身なりを保ちながら生活できるよう支援する。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人ができる更衣動作と自己選択を大切にし、衣類の準備や困難な工程のみ支援する。着替えを拒否する場合には無理に進めず、本人が受け入れやすい時間や生活場面を活用し、清潔で本人らしい身なりを保てるよう支援する。
第2表の文例
更衣拒否がある場合も、「毎日着替えること」だけを目標にするのではなく、本人が自分でできる更衣動作や衣類選択を続けながら、清潔で快適に生活できることを目標として考えます。
課題① 自分で着る服を選びたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
自分が着る服は自分で選び、自分らしい身なりで生活したい。
ニーズの別表現|自己決定を重視する場合
何を着るかをすべて決められず、自分で選びながら生活したい。
長期目標
本人が自分の好みを反映した衣類を選び、自分らしい身なりで生活することができる。
短期目標
季節や場面に合った少数の衣類から、自分で着たい服を選ぶことができる。
サービス内容
本人の好みを考慮した衣類を2着程度準備し、本人に選択してもらう。支援者が一方的に服を決めず、本人の意思を確認する。
課題② 自分でできる着替えを続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
自分でできる着替えはこれからも自分で行い、必要なところだけ手伝ってほしい。
長期目標
現在行えている更衣動作を維持し、自分で身支度を行う生活を続けることができる。
短期目標
衣類の準備や必要な声かけを受けながら、自分で上衣やズボン等の着脱を行うことができる。
サービス内容
本人が行いやすい順番に衣類を準備し、必要に応じて一つずつ声をかける。本人が動作を始めた後は急いで介助せず、できる部分を見守る。
課題③ 清潔で快適な服装で気持ちよく過ごしたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
汚れた服を着続けず、清潔で気持ちの良い服を着て過ごしたい。
長期目標
季節や生活場面に合った清潔な衣類を着用し、快適に生活できる。
短期目標
入浴後や外出前など、本人が受け入れやすいタイミングで清潔な衣類へ着替えることができる。
サービス内容
本人が着替えを受け入れやすい時間帯や生活場面を活用して清潔な衣類を準備する。「汚れている」と強く指摘するのではなく、本人が気持ちよく着替えられる声かけを行う。
課題④ 家族と着替えのことで争わず穏やかに暮らしたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
着替えのたびに家族と言い争わず、お互いに気持ちよく生活したい。
長期目標
本人の自己決定が尊重され、家族も過度な負担やストレスを感じず更衣を支援できる。
短期目標
本人が着替えを受け入れやすい声かけや方法を、家族・介護サービスで共有することができる。
サービス内容
本人が受け入れやすい衣類の選び方、声かけ、タイミング等を家族・関係職種で共有する。拒否がある場合には無理に更衣を続けず、時間や方法を変えて対応する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 自分が着る服は自分で選び、自分らしい身なりで生活したい。 | 本人の好みを反映した衣類を選び、自分らしい身なりで生活できる。 | 少数の衣類から自分で着たい服を選ぶことができる。 | 本人の好みに合った衣類を準備し、本人に選択してもらう。 |
| 自分でできる着替えは自分で行い、必要なところだけ手伝ってほしい。 | 現在の更衣能力を維持し、自分で身支度を行う生活を続けられる。 | 準備や声かけを受けながら、自分で衣類の着脱を行うことができる。 | 衣類を順番に準備し、本人ができる動作は見守る。 |
| 清潔で気持ちの良い服を着て快適に過ごしたい。 | 季節や生活場面に合った清潔な衣類を着用し、快適に生活できる。 | 受け入れやすいタイミングで清潔な衣類に着替えることができる。 | 入浴後や外出前等の自然なタイミングを活用して更衣を促す。 |
| 着替えのたびに家族と言い争わず、穏やかに生活したい。 | 本人の意思が尊重され、家族も負担を抱えすぎず更衣を支援できる。 | 本人が受け入れやすい方法を家族・関係者で共有できる。 | 有効な声かけやタイミングを共有し、拒否時は無理に続けない。 |
認知症・着替え拒否・更衣困難のケアプランで意識したいポイント
更衣動作を工程ごとに見る
更衣には、服を選ぶ、衣類の前後を確認する、順番に着る、ボタンを留める、服を整えるなど複数の工程があります。「更衣できない」とまとめず、どこまで本人が行えるのかを確認します。
選択肢を多くしすぎない
多くの衣類から一着を選ぶことは難しくても、2着程度からであれば本人が選択できる場合があります。本人の自己決定を残しつつ、選びやすい環境を作ります。
「汚れている」と否定しすぎない
本人が服を汚れていると認識していない場合、「汚いから着替えて」と繰り返すことで自尊心を傷つける場合があります。「今日はデイの日だからこちらにしましょう」など、本人が受け入れやすい理由や流れを活用します。
生活の流れの中で更衣につなげる
入浴後、起床時、外出前などは、更衣が自然に行われる生活場面です。本人にとって意味のないタイミングで突然着替えを求めるより、これまでの生活習慣を活用します。
時間がかかっても本人の動作を待つ
認知症によって動作開始まで時間が必要になっていても、待てば自分で着られる場合があります。職員や家族がすぐに手を出さず、本人の動作を待つことも自立支援の一つです。
身体機能の変化にも目を向ける
袖に腕を通しにくい、ズボンを上げられないなどの変化がある場合には、認知症だけでなく、肩や腰の痛み、関節可動域、筋力、バランス等の身体機能も確認します。
本人らしい身だしなみを残す
服装には本人の好みや生き方が表れます。安全性や着脱のしやすさだけで衣類を決めるのではなく、色や柄、外出時の服装など本人の好みをできる限り生活に残します。
文例を使うときのポイント
- 更衣のどの工程が難しくなっているか確認する
- 本人が自分でできる動作を残す
- 衣類の選択肢を多くしすぎない
- 本人の好みやこれまでの服装を把握する
- 入浴後・起床時・外出前等の自然なタイミングを利用する
- 拒否時に無理に脱がせたり着せたりしない
- 身体機能や痛みの変化にも目を向ける
- 本人が受け入れやすい対応を家族・関係職種で共有する
まとめ
認知症のある利用者が着替えを拒否したり、更衣が難しくなったりした場合、「着替えさせること」だけを考えるのではなく、本人が更衣のどの工程まで自分で行えるのか、なぜ着替えたくないと感じているのかを確認することが重要です。
本人自身で行える更衣動作と衣類を選ぶ機会を残し、難しい部分のみ支援することで、自尊心と清潔な生活を両立できます。本人の生活習慣や好みを活かし、無理な介助を避けながら本人らしい身だしなみを支えることが大切です。
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