脳梗塞後遺症による失語症がある利用者では、言葉が出にくいことから、家族や支援者が本人の意思を推測して先に決めてしまうことがあります。
発話量だけで理解や意思決定能力を判断せず、選択肢、指さし、表情、身振り、返答に必要な時間を評価することが重要です。
ここでは、短い言葉と写真カード、指さしを使い、買い物やデイサービスで自分の希望を伝えたい利用者を例に紹介します。
この記事が参考になるケース
- 元鮮魚店主で、食材や料理の写真を見て選ぶことが得意
- 日常的な短い説明は理解できる
- 返答に十五秒ほどかかるが、はい、違うの発話ができる
- 写真二枚から希望を指さして選べる
- 伝わらないときは右手で文字の一部を書ける
- 本人は週末の刺身を自分で選びたい
- 妻は本人の返答を待ち、確認してから補足したい
理解、発話、指さし、書字、表情、返答時間を個別に確認し、本人が最も使いやすい方法を場面ごとに整理してください。
※失語症があることだけで本人の理解や意思決定能力がないと判断せず、必要に応じて言語聴覚士等の専門職へ相談してください。
利用者像の例
- 69歳・男性・要介護2
- 妻と二人暮らし
- 脳梗塞後遺症による運動性失語がある
- 元鮮魚店主で、食材や料理の写真を見て選ぶことが得意
- 日常的な短い説明は理解できる
- 返答に十五秒ほどかかるが、はい、違うの発話ができる
- 写真二枚から希望を指さして選べる
- 伝わらないときは右手で文字の一部を書ける
- 本人は週末の刺身を自分で選びたい
- 妻は本人の返答を待ち、確認してから補足したい
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例
言葉は出にくいが、写真を見れば選べるので、食べたい魚や行きたい活動は自分で決めたい。
家族の意向
おすすめ文例
私が先に答えず、写真と短い質問を使って本人の返事を待ち、確認してから補足したい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は妻と暮らし、元鮮魚店主として食材を選んできた経験を活かし、週末に食べる刺身や生活上の希望を自分で決めたいと望んでいる。
運動性失語があるが、日常的な短い説明を理解し、十五秒ほど待つとはい、違うで答え、写真二枚から希望を指させる。
伝わらない際は右手で文字の一部を書き、相手の確認に表情やうなずきで応じられる。
家族や支援者は本人へ直接問いかけ、返答を待ち、推測した内容は必ず本人へ再確認する必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が発話、指さし、書字、表情を組み合わせて生活上の希望を伝えられるよう支援する。一度に一つの短い質問と写真二枚程度の選択肢を示し、十五秒以上返答を待つ。妻や支援者による補足は本人の確認後に行い、選んだ内容を本人へ再提示して共有する。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人の表情、指差し、言葉等を丁寧に受け止め、意思を確認してから支援する。家族・関係職種で伝わりやすい方法を共有し、本人が選び伝える機会を守る。
第2表の文例
発話を増やすことだけを目標にせず、本人が使える方法を選び、自分の希望が生活へ反映されることを目標にします。
課題① 写真や指さしを使い、食べたい物を自分で選びたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
写真や指さしを使い、食べたい物を自分で選びたい。
長期目標
本人の選択が食事や買い物へ反映される。
短期目標
魚や料理の写真二枚から希望を指さし、はい、違うで確認できる。
サービス内容
写真カードを本人の正面に示し、一度に二つまでの選択肢で返答を十五秒以上待つ。
課題② 伝わらないときも、書字や身振りで希望を伝えたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
伝わらないときも、書字や身振りで希望を伝えたい。
長期目標
複数の方法を使い、必要な意思を表出できる。
短期目標
発話で伝わらない際に、文字の一部、指さし、身振りのいずれかを使える。
サービス内容
筆記具とカードを常に使える場所へ置き、支援者は一つずつ方法を提案して本人に選んでもらう。
課題③ 家族や支援者に先に決められず、自分で生活を選びたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
家族や支援者に先に決められず、自分で生活を選びたい。
長期目標
本人の意思確認を中心にサービスや活動が決定される。
短期目標
活動前に本人へ直接確認し、選んだ内容を再提示すると同意を示せる。
サービス内容
本人への問いかけを最初に行い、家族の補足は本人のうなずき等で確認してから記録する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 写真や指さしを使い、食べたい物を自分で選びたい。 | 本人の選択が食事や買い物へ反映される。 | 魚や料理の写真二枚から希望を指さし、はい、違うで確認できる。 | 写真カードを本人の正面に示し、一度に二つまでの選択肢で返答を十五秒以上待つ。 |
| 伝わらないときも、書字や身振りで希望を伝えたい。 | 複数の方法を使い、必要な意思を表出できる。 | 発話で伝わらない際に、文字の一部、指さし、身振りのいずれかを使える。 | 筆記具とカードを常に使える場所へ置き、支援者は一つずつ方法を提案して本人に選んでもらう。 |
| 家族や支援者に先に決められず、自分で生活を選びたい。 | 本人の意思確認を中心にサービスや活動が決定される。 | 活動前に本人へ直接確認し、選んだ内容を再提示すると同意を示せる。 | 本人への問いかけを最初に行い、家族の補足は本人のうなずき等で確認してから記録する。 |
脳梗塞後遺症・失語症のケアプランで意識したいポイント
発話と理解を分けて見る
言葉が出にくくても理解が保たれる場合があるため、短い説明への反応を確認します。
返答時間を保障する
質問を繰り返したり家族が答えたりせず、本人が表現するまで十分に待ちます。
推測は本人に再確認する
表情や身振りから読み取った内容も、はい、違う等で本人へ確認して計画へ反映します。
文例を使うときのポイント
- 理解と表出を別々に評価する
- 質問を短く一つずつ伝える
- 写真の選択肢を絞る
- 返答を十五秒以上待つ
- 家族の代弁前に本人へ確認する
まとめ
失語症がある場合は、発話だけでなく、指さし、書字、表情、身振りを含めて本人の伝達能力を評価します。
返答を待ち、推測を本人へ再確認することで、本人の意思が買い物やサービス選択へ反映される計画になります。
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