通所介護計画書の本人・家族の意向は、目標やサービス内容を組み立てる出発点です。歩行、入浴、健康管理、認知症、社会参加など20ケースを紹介します。本人の言葉と家族の希望を分け、両者の違いも支援に生かしてください。
通所介護計画書で本人・家族の意向を書く理由
通所介護は、サービスを利用すること自体が目的ではありません。本人が続けたい暮らしと家族が安心して支えられる条件を確かめ、そこから目標と具体的な支援を考えます。本人は「自分で続けたい」、家族は「転倒させたくない」など、意向が異なることもあります。どちらかにまとめず、背景にある希望や不安を分けて記載することが大切です。計画書全体の作り方は通所介護計画書の基本的な書き方をご覧ください。
本人・家族の意向を聞き取るポイント
- 本人がこれからも続けたい生活、習慣、家庭内外の役割を尋ねる
- 困っている動作と、本人なりに工夫している方法を確認する
- 「できるようになりたいこと」を具体的な生活場面で聞く
- 家族が心配する場面と、実際に介助している内容を分けて聞く
- 介護による睡眠不足、腰痛、仕事との両立など家族負担を確認する
- 機能訓練、入浴、交流など、サービスへ期待することを確かめる
- 本人と家族の希望が違う場合は、双方の理由を記録する
本人・家族の意向 文例集
歩行・転倒・移動
文例1
【想定ケース】
変形性膝関節症で外出が減り、娘と同居。近所の商店は徒歩圏内。
【本人の意向】
「また自分で店まで歩いて、好きなお菓子を選びたい。できることは自分で続けたい。」
【家族の意向】
「転倒は心配ですが、本人の楽しみを取り上げたくありません。安全な歩き方を身につけてほしいです。」
文例2
【想定ケース】
脳梗塞後の左片麻痺があり、屋内は杖歩行。妻と二人暮らし。
【本人の意向】
「自分の足でトイレへ行きたい。妻を呼ばずに済むようになりたい。」
【家族の意向】
「急いだときにふらつくので心配です。見守る場面と手を出す場面を教えてほしいです。」
文例3
【想定ケース】
パーキンソン病ですくみ足がある。夫婦で朝の散歩を日課にしてきた。
【本人の意向】
「短い距離でも、夫と朝の散歩を続けたい。外の空気を吸うと気分がいい。」
【家族の意向】
「玄関で足が止まると焦ります。本人に合う声かけや歩き出し方を一緒に練習したいです。」
文例4
【想定ケース】
大腿骨骨折後で歩行器を使用。集合住宅のエレベーター利用に不安がある。
【本人の意向】
「一人でエレベーターまで行き、同じ階の友人を訪ねたい。」
【家族の意向】
「歩行器のブレーキを忘れることがあります。安全を確認しながら、本人の行動範囲を広げてほしいです。」
入浴・排泄・身の回り
文例1
【想定ケース】
心不全があり、自宅入浴後に疲れやすい。本人は自宅の浴槽を好んでいる。
【本人の意向】
「できる間は家のお風呂に入りたい。背中以外は自分で洗いたい。」
【家族の意向】
「入浴後の息切れが心配です。無理のない入り方と、休む目安を教えてほしいです。」
文例2
【想定ケース】
腰椎圧迫骨折後で夜間のトイレ移動に時間がかかる。夫と二人暮らし。
【本人の意向】
「夜もポータブルトイレではなく、今までどおりトイレを使いたい。」
【家族の意向】
「痛みを我慢して一人で動こうとします。起き上がり方と転ばない環境を一緒に考えてほしいです。」
文例3
【想定ケース】
関節リウマチで手指が動かしにくい。朝の更衣に時間がかかる。
【本人の意向】
「時間がかかっても、自分で服を選んで着たい。人に全部してもらうのは嫌です。」
【家族の意向】
「仕事へ行く前は待てずに手伝ってしまいます。本人がしやすい服や道具を知りたいです。」
文例4
【想定ケース】
尿意切迫があり失敗を恐れて外出を控えている。妻と買い物に行くことが楽しみだった。
【本人の意向】
「失敗するのが恥ずかしい。でも、また妻と買い物には行きたい。」
【家族の意向】
「外出を諦めてほしくありません。トイレの間隔や着替えの準備を整えて安心につなげたいです。」
健康管理・食事
文例1
【想定ケース】
心不全で塩分制限があり、濃い味を好む。娘が食事を準備している。
【本人の意向】
「味のない食事ばかりはつらい。好きな煮物も少しは食べたい。」
【家族の意向】
「再入院を防ぎたいですが、食事が楽しみでなくなるのも心配です。続けられる工夫を相談したいです。」
文例2
【想定ケース】
糖尿病があり、朝食を抜いた日にふらつく。独居で息子が週末に訪問。
【本人の意向】
「朝は食欲がない。薬のことも自分で管理して、今の家で暮らしたい。」
【家族の意向】
「低血糖に本人が気づけるか不安です。食べやすい朝食と体調変化への対応を一緒に確認したいです。」
文例3
【想定ケース】
脳出血後に軽い嚥下障害がある。夫と同じ食卓で普通の料理を楽しみたい。
【本人の意向】
「刻んだものだけではなく、見た目もおいしい食事を家族と食べたい。」
【家族の意向】
「むせは心配ですが、食べる楽しみは残したいです。安全な姿勢や一口量を教えてほしいです。」
文例4
【想定ケース】
配偶者を亡くして食欲が落ち、低栄養傾向。姪が買い物を支援している。
【本人の意向】
「一人だと作る気にならない。誰かと話しながらなら少し食べられる。」
【家族の意向】
「体重が減って心配です。本人の好物や食べやすい量を見つけ、家でも続けられるようにしたいです。」
認知症・生活リズム
文例1
【想定ケース】
アルツハイマー型認知症で昼夜逆転傾向。息子夫婦と同居している。
【本人の意向】
「昼間は眠い。昔していた編み物なら少しやってみたい。」
【家族の意向】
「夜に何度も起きるため家族も眠れません。日中に無理なく活動し、夜の睡眠につなげたいです。」
文例2
【想定ケース】
血管性認知症があり、夕方に帰宅願望が強くなる。妻が主介護者。
【本人の意向】
「夕方になると家のことが気になる。早く帰って戸締まりをしたい。」
【家族の意向】
「止めると怒るので対応に困ります。不安の理由を受け止めて、落ち着いて送迎を待てるようにしてほしいです。」
文例3
【想定ケース】
軽度認知障害で昼薬の飲み忘れが増えている。日中独居。
【本人の意向】
「薬のことまで娘に任せたくない。自分で確認して飲みたい。」
【家族の意向】
「本人の自尊心を大切にしながら、飲み忘れを減らせる方法を一緒に試してほしいです。」
文例4
【想定ケース】
レビー小体型認知症で幻視があり、体調によって不安が強くなる。夫が介護している。
【本人の意向】
「知らない人がいるように見えると怖い。否定せず話を聞いてほしい。」
【家族の意向】
「幻視を強く否定すると混乱します。落ち着く関わり方や体調との関係を職員と共有したいです。」
社会参加・家族介護負担
文例1
【想定ケース】
妻を亡くして閉じこもりがち。以前は地域の将棋会に通っていた。
【本人の意向】
「大勢の体操は苦手だが、将棋なら誰かと指してみたい。」
【家族の意向】
「家ではほとんど話しません。本人が気を遣わずに参加できる仲間を見つけてほしいです。」
文例2
【想定ケース】
要介護の夫を妻が一人で介護。本人は妻に迷惑をかけたくないと考えている。
【本人の意向】
「妻には休んでほしい。デイの日は自分も気兼ねなく過ごしたい。」
【家族の意向】
「介護を続けるために休む時間が必要です。夫が納得して過ごせる活動や関わりをお願いしたいです。」
文例3
【想定ケース】
難聴のため会話を避けるようになった。長男家族と同居している。
【本人の意向】
「聞き返すのが恥ずかしくて黙ってしまう。昔の仕事の話ならしてみたい。」
【家族の意向】
「話すことを諦めてほしくありません。聞き取りやすい席や少人数の場を整えてほしいです。」
文例4
【想定ケース】
慢性呼吸器疾患で外出時に息切れがある。孫の運動会へ行くことを目標にしている。
【本人の意向】
「休みながらでも孫の運動会を見に行きたい。家族行事には参加したい。」
【家族の意向】
「無理をして悪化するのは心配です。体調の見方と休憩の取り方を覚え、本人の希望をかなえたいです。」
本人と家族の意向が違う場合の考え方
1.一人で歩きたい本人と、転倒を防ぎたい家族
本人:「家の中は一人で歩きたい。」
家族:「転ぶのが怖いので、歩かせたくない。」
考え方:歩行を一律に止めず、補助具、動線、見守る場面を評価します。本人が安全に動ける時間と場所を決め、家族には手を出す基準を共有します。
2.自宅で入浴したい本人と、介助を続けられない家族
本人:「家の浴槽に入りたい。」
家族:「腰痛があり、またぎを支えられない。」
考え方:本人の希望を尊重しながら、通所で動作を評価します。手すりや浴槽台、介助方法を検討し、家族の負担が大きい場合は通所での入浴併用も選びます。
3.外出したい本人と、体調悪化を心配する家族
本人:「孫の行事へ出かけたい。」
家族:「心不全が悪化しないか不安。」
考え方:禁止ではなく、体重や息切れの変化、休憩場所、移動手段を整理します。主治医とも共有し、体調に応じて延期できる判断基準を決めます。
意向から目標・サービス内容につなげる例
1.近所へ買い物に行きたい
本人・家族の意向:本人は自分で品物を選びたい。家族は転倒を心配している。
生活課題:屋外で方向転換すると膝痛とふらつきがある。
目標:杖で近隣店舗まで歩き、家族と買い物を続けられる。
サービス内容:杖歩行、方向転換、段差昇降を練習し、痛みと休憩の目安を本人・家族と共有する。
2.自宅の浴槽に入りたい
本人・家族の意向:本人は自宅入浴を希望し、家族はまたぎ介助に不安がある。
生活課題:片脚立位が不安定で浴槽縁を越えにくい。
目標:手すりを使い、見守りで浴槽をまたげる。
サービス内容:入浴時に足位置と手すり操作を練習し、福祉用具を含む介助方法を家族へ伝える。
3.薬を自分で管理したい
本人・家族の意向:本人は自立を保ちたい。娘は昼薬の飲み忘れを心配している。
生活課題:日付の確認が不十分で、服用済みか分からなくなる。
目標:薬箱とチェック表を使い、昼薬を自分で確認できる。
サービス内容:看護職と薬を確認し、本人が服用後に印を付ける方法を練習する。
4.夜に眠れる生活へ整えたい
本人・家族の意向:本人は日中に編み物をしたい。家族は夜間覚醒を減らしたい。
生活課題:昼寝が長く、活動のきっかけが少ない。
目標:日中に好みの活動を行い、夜間の睡眠時間を保てる。
サービス内容:午後の長い居眠りを避け、本人が選んだ編み物や歩行を無理のない時間で行う。
5.家族の介護負担を減らしたい
本人・家族の意向:本人は妻に休んでほしく、妻は介護を続けるため休息を求めている。
生活課題:移乗介助が集中し、妻に腰痛がある。
目標:本人の立つ力を使って移乗し、妻が持ち上げずに介助できる。
サービス内容:立ち上がりを練習し、足位置と声かけ、福祉用具の使い方を夫婦へ伝える。


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