通所介護計画書の機能訓練 目標・サービス内容文例集|生活機能につなげる実践的な記入例

通所介護計画書の機能訓練について、「下肢筋力を維持する」「転倒予防のため運動する」「歩行訓練を行う」と記載していないでしょうか。

筋力、関節可動域、バランス、歩行能力は重要ですが、それ自体が利用者の生活の最終目的ではありません。利用者が望んでいるのは、「自分でトイレへ行きたい」「家族と買い物へ行きたい」「自宅のお風呂に入りたい」「庭に出たい」といった具体的な生活です。

質の高い通所介護計画書では、身体機能の評価だけで終わらず、身体機能がどの生活行為に影響しているのか、その生活を続けるためにデイサービスで何を支援するのかまでつなげます。

通所介護計画書の機能訓練は「運動メニュー」から考えない

機能訓練の計画を作るときに、「マシントレーニング」「レッドコード」「歩行練習」など、事業所で提供できるメニューから考え始めると、利用者ごとの差が見えにくくなります。

基本となる順序は次のとおりです。

  1. 本人が続けたい生活・再開したい生活を確認する
  2. その生活行為のどこに困難があるか確認する
  3. 困難の要因を心身機能・動作・環境から分析する
  4. 長期目標・短期目標を設定する
  5. 目標に必要な機能訓練を選択する
  6. 日常生活場面でも能力を使える環境をつくる
  7. 実際の生活が変化したか評価する

例えば「下肢筋力が低下しているからマシントレーニング」ではなく、「椅子からの立ち上がりが不安定になり、自宅でトイレへ行く際に家族の介助が必要になった。自分でトイレへ行く生活を続けるため、立ち上がり・立位保持・歩行に必要な機能を訓練する」と考えます。

通所介護計画と個別機能訓練計画は混同しない

通所介護計画書と、個別機能訓練加算等で作成する個別機能訓練計画書は役割が異なります。

計画主な役割
通所介護計画利用者の希望、心身状況、生活環境を踏まえ、通所介護全体としての目標と具体的なサービス内容を示す。
個別機能訓練計画生活機能等の評価をもとに、個別機能訓練の目標、具体的な訓練内容、実施方法、評価等をより具体的に整理する。

個別機能訓練計画を作成している場合でも、機能訓練が通所介護全体の支援から独立するわけではありません。通所介護計画の生活目標と、個別機能訓練計画の訓練目標が同じ方向を向いていることが重要です。

機能訓練のアセスメントで確認したい10項目

  • 本人の希望:何を続けたいか、何を再開したいか
  • 基本動作:寝返り、起き上がり、立ち上がり、立位、移乗
  • 移動:屋内歩行、屋外歩行、方向転換、段差、階段
  • ADL:排泄、入浴、更衣、食事、整容
  • IADL:掃除、洗濯、調理、買い物、通院等
  • 心身機能:筋力、関節可動域、バランス、疼痛、持久力等
  • 認知・心理面:理解力、意欲、転倒恐怖、不安等
  • 環境:手すり、段差、家具配置、福祉用具、住宅構造
  • 家族:介助方法、介護負担、本人への関わり方
  • 活動・参加:外出、趣味、地域活動、家庭内役割、人との交流

「筋力低下」を生活課題へ変換する

専門職として重要なのは、心身機能の問題をそのままケアプランの目標にしないことです。

評価結果生活への影響生活目標
下肢筋力低下椅子から立ち上がる際に介助が必要自分で立ち上がりトイレへ移動する
立位バランス低下下衣操作時にふらつくトイレで安全に衣類を上げ下げする
肩関節可動域低下更衣・洗身が難しい自分で上衣を着て、洗える範囲を自分で洗う
持久力低下玄関まで歩くと疲れる家族との外出や通院を続ける
膝関節痛階段昇降が困難自宅玄関の段差を安全に昇降する

このように、機能障害と生活活動の間をつなぐことで、「なぜこの訓練をするのか」が本人にも職員にも分かる計画になります。

避けたい機能訓練目標と改善例

弱い目標改善例
下肢筋力を維持する椅子から自分で立ち上がり、自宅のトイレまで移動できる状態を維持する。
歩行能力を改善する歩行器を使用して自宅内を安全に移動し、居間やトイレへ自分で行くことができる。
バランス能力を改善する立位を安定して保ち、トイレで下衣操作を安全に行うことができる。
体力をつける休憩を取りながら家族と買い物へ出かけられる体力を保つ。
関節可動域を維持する上肢を使って自分で更衣・整容を行える状態を保つ。
転倒を予防する手すりを使用して玄関段差を安全に昇降し、外出を続ける。

通所介護計画書の機能訓練 文例集

1.立ち上がりが不安定なケース

長期目標

自宅で必要な場所へ自分で移動し、現在の生活を継続できる。

短期目標

手すりを使用し、椅子から安定して立ち上がることができる。

サービス内容

立ち上がり時の足部位置、体幹の前方移動、下肢支持力、ふらつきを確認する。本人に適した椅子の高さや支持物を使用し、日常生活場面を想定した立ち上がり練習を行う。食事、排泄等の実際の場面でも本人が自ら立ち上がる機会を確保する。

2.自宅内歩行を続けたいケース

長期目標

自宅内を安全に移動し、トイレや食卓へ自分で行くことができる。

短期目標

歩行補助具を使用し、方向転換を含む短距離歩行を安定して行うことができる。

サービス内容

歩行速度、歩幅、足部の運び、方向転換、疲労、ふらつきを確認する。本人の身体状況に合わせた下肢機能訓練、立位バランス練習、歩行練習を行う。施設内の移動も可能な範囲で本人が歩く機会とし、訓練場面と生活場面をつなげる。

3.トイレ動作を維持したいケース

長期目標

できる限り自分のタイミングでトイレを利用し、自立した排泄を続けることができる。

短期目標

手すりを使用して立位を保ち、下衣の上げ下げと便座への立ち座りを安全に行うことができる。

サービス内容

立ち上がり、立位保持、方向転換、下衣操作に必要な身体機能を確認する。トイレ動作を想定した立位バランス練習や立ち上がり練習を行い、実際の排泄場面でも本人が行える工程は見守りを基本とする。

4.自宅での入浴を続けたいケース

長期目標

自宅の浴室環境に合った方法で、安全に入浴を継続できる。

短期目標

手すりを使用して安定した立ち座りを行い、浴槽出入りに必要な下肢動作を行うことができる。

サービス内容

立位保持、片脚支持、足の上げ下げ、浴槽またぎに必要な身体機能を確認する。本人の自宅浴室環境を踏まえ、立ち上がり、またぎ動作等の練習を安全に実施する。実際の入浴時の動作状況について介護職とも共有する。

5.玄関段差・階段を昇降したいケース

長期目標

玄関や自宅周囲の段差を安全に昇降し、外出する機会を継続できる。

短期目標

手すり等を使用し、一段の段差を安定して昇降することができる。

サービス内容

下肢支持力、片脚立位、足の上げ下げ、手すり操作を確認し、安全を確保して段差昇降練習を行う。自宅の段差高や手すり位置等の生活環境を把握し、実際の環境に近い条件を意識して訓練する。

6.家族と買い物へ行きたいケース

長期目標

家族と買い物へ出かけ、地域での生活や楽しみを続けることができる。

短期目標

休憩を取りながら屋外歩行に必要な距離を移動し、一定時間の活動を継続できる。

サービス内容

歩行距離、歩行速度、持久力、疲労、屋外での不安等を確認する。本人の体調に応じた歩行練習と持久力訓練を実施し、必要に応じて休息を組み合わせる。単に距離を延ばすのではなく、外出後の疲労も含めて適切な活動量を評価する。

7.家事を続けたいケース

長期目標

身体に無理のない範囲で家事を行い、家庭内での役割を継続できる。

短期目標

立位を保ちながら、短時間の台所作業や洗濯物整理等を安全に行うことができる。

サービス内容

立位保持能力、上肢操作、方向転換、疲労等を確認する。本人が実際に行っている家事内容を踏まえ、物品の移動、立位作業、歩行等を組み合わせた生活動作練習を行う。家事動作のすべてを訓練室で再現するのではなく、必要な構成要素を評価して支援する。

8.更衣・整容を続けたいケース

長期目標

自分で身だしなみを整え、自分らしい生活を続けることができる。

短期目標

安定した座位を保ち、上衣の着脱や整容動作を自分で行うことができる。

サービス内容

座位バランス、肩・肘・手指の動き、巧緻動作等を確認する。本人が行いたい更衣・整容動作に必要な上肢機能訓練を行い、実際の更衣場面でも本人が自分で行う時間を確保する。

9.廃用・活動量低下がみられるケース

長期目標

日中の活動量を保ち、身の回りの生活動作を継続できる。

短期目標

体調に応じて離床時間を確保し、機能訓練や生活活動に無理なく参加できる。

サービス内容

臥床時間、座位時間、歩行量、疲労状態を確認し、体調に合わせて立ち上がり、歩行、集団体操等を組み合わせる。訓練時間だけでなく、食事、排泄、移動、余暇活動等も活動機会として捉え、過度な臥床を防ぐ。

10.認知症があり運動への理解が難しいケース

長期目標

なじみの生活動作や活動を続け、現在の身体機能を日常生活の中で活用できる。

短期目標

職員と一緒に立ち上がりや歩行等の活動を行い、身体を動かす機会を継続できる。

サービス内容

抽象的な運動指示だけでなく、「一緒に歩きましょう」「ここまで行きましょう」など理解しやすい声かけを行う。本人が慣れている生活動作や活動を取り入れ、成功しやすい課題設定とする。拒否がある場合は無理に実施せず、時間帯や活動内容を調整する。

機能訓練は「訓練室の20分」だけではない

通所介護では、機能訓練の時間だけが身体機能を使う機会ではありません。

  • 送迎車から玄関まで歩く
  • 椅子から自分で立ち上がる
  • トイレまで歩く
  • 自分で下衣を操作する
  • 入浴時に洗えるところを自分で洗う
  • 食堂まで移動する
  • 配膳や片付けの役割を持つ
  • レクリエーションで上肢を使う

これらもすべて生活機能を使う機会です。

専門的な機能訓練と日常生活上の活動を切り離さず、機能訓練指導員と介護職が共通した目標を持つことで、利用時間全体を自立支援につなげることができます。

マシントレーニングを計画に書くときの注意点

マシントレーニングそのものを否定する必要はありません。重要なのは、なぜその運動を行うのかを明確にすることです。

「下肢筋力向上のためマシン訓練を実施する」だけではなく、例えば次のようにつなげます。

自宅での立ち上がりと歩行能力を維持するため、下肢支持力、立位バランス等を確認し、本人の身体状況に合わせた下肢筋力訓練、立ち上がり練習、歩行練習を組み合わせて実施する。

一つの機器だけで生活機能全体が改善するわけではありません。目標となる生活行為に必要な能力を分析し、複数の方法を組み合わせます。

個別機能訓練加算を算定する場合に押さえたい視点

個別機能訓練加算を算定する場合は、利用者の身体機能だけではなく生活機能の向上につながるよう、複数の種類の訓練項目を準備し、本人の選択や心身の状況に応じて実施することが重要です。

また、居宅での生活状況を確認したうえで個別機能訓練計画を作成し、その後も定期的に居宅での生活状況や計画の進捗を確認し、必要に応じて見直します。

つまり、「デイサービスで歩けるようになった」だけで評価を終えるのではなく、自宅のトイレまで歩けているか、玄関段差を越えられているか、家事や外出が再開できたかまで確認することが本来の生活機能評価につながります。

機能訓練のモニタリングで見るポイント

  • 設定した生活目標は現在も本人が希望しているか
  • 基本動作や歩行能力に変化があるか
  • 実際のADL介助量に変化があるか
  • 自宅で本人が行う動作が増えたか、減ったか
  • 家族による介助量が変化しているか
  • 疼痛や疲労によって活動量が減少していないか
  • 福祉用具や住宅環境が本人の能力に合っているか
  • 訓練内容が現在の生活目標とつながっているか
  • 本人が訓練内容を理解・納得しているか
  • 外出・趣味・家庭内役割等の参加状況が変化しているか

数値が改善しても生活が変わらない場合は再検討する

例えば立ち上がり回数や筋力評価が改善していても、自宅では家族がすべて介助し、本人が立ち上がる機会がないのであれば、生活機能の改善につながっていない可能性があります。

反対に、身体機能の数値に大きな変化がなくても、手すりや歩行器等の環境調整によって一人でトイレへ行けるようになれば、本人の生活機能は大きく改善しています。

機能訓練の評価では、身体機能だけでなく、活動と参加がどのように変化したかを合わせて確認することが重要です。

専門職として避けたい機能訓練計画

  • 全利用者が「筋力維持」「転倒予防」になっている
  • 疾患名だけで訓練内容を決めている
  • 本人が希望する生活が記載されていない
  • マシン名や運動メニューが目標になっている
  • 訓練室では評価しているが生活場面を見ていない
  • 介護職と機能訓練指導員で介助方法が異なる
  • 身体機能の数値だけで効果判定している
  • 本人の回復後も同じ訓練を長期間続けている
  • 本人が訓練の目的を理解していない
  • 「転倒予防」を理由に本人の活動まで制限している

通所介護計画書と個別機能訓練計画をつなぐ例

本人の希望通所介護計画の目標機能訓練の焦点評価する生活
自分でトイレへ行きたい自宅で安全にトイレへ移動する立ち上がり・立位・歩行・方向転換自宅での排泄介助量
自宅のお風呂に入りたい必要な支援を受けて自宅浴を続ける立位・またぎ・下肢支持力自宅での浴槽出入り
買い物へ行きたい家族と外出を継続する屋外歩行・持久力・段差買い物の頻度・外出時間
家事を続けたいできる家事を続け家庭内役割を保つ立位・歩行・上肢機能・持久力実際に行えている家事

まとめ

通所介護計画書の機能訓練では、「筋力をつける」「歩行訓練を行う」といった身体機能中心の記載だけで終わらせず、その能力を利用者がどの生活で使いたいのかを明確にすることが重要です。

本人が続けたい生活を確認し、その生活行為を分析したうえで、必要な身体機能、動作、環境を整理します。そして、専門的な機能訓練とデイサービスの日常生活場面を組み合わせ、利用時間全体で本人の能力を使えるよう支援します。

身体機能が改善したかだけではなく、トイレ、入浴、家事、外出、社会参加など、実際の生活がどう変わったのかまで評価することで、通所介護計画書と機能訓練が一体となった質の高い支援につながります。

関連ページ

参考

  • 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
  • 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準」
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」

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