通所介護計画書【認知症】目標・サービス内容の文例集|不安・帰宅願望・拒否への支援

通所介護計画書で認知症のある利用者について記載するとき、「認知機能の維持を図る」「安全に過ごせるよう見守る」「他者との交流を促す」といった表現だけになっていないでしょうか。

認知症があるからといって、すべての利用者が同じ支援を必要とするわけではありません。時間や場所が分からなくなり不安になる人、同じ質問を繰り返す人、帰宅したいと訴える人、集団活動を好まない人、入浴や食事を拒否する人など、現れる状態も背景も一人ひとり異なります。

通所介護計画書では、行動だけを問題として捉えるのではなく、本人が何を感じ、何を求め、どのような環境であれば安心して過ごせるのかを考えることが重要です。

通所介護計画書で認知症をどう捉えるか

認知症のある利用者への支援では、「認知症だからできない」と考えるのではなく、現在も保たれている能力、生活歴、習慣、本人の価値観を把握することから始めます。

例えば、日付を正確に答えることは難しくても、長年行ってきた家事や仕事に関連する動作は自然に行えることがあります。また、言葉で希望をうまく説明できなくても、表情、仕草、行動、選択から本人の意思を読み取れる場合があります。

計画書では、認知機能の低下そのものだけでなく、認知機能の変化が本人の生活にどのような影響を与えているかを整理します。

「認知機能維持」だけを目標にしない

「認知機能を維持する」という目標は抽象的で、本人がどのような生活を続けたいのかが見えにくくなります。

認知症のある利用者でも、目標の中心は生活です。

  • 安心してデイサービスへ通いたい
  • 自分でトイレへ行きたい
  • 好きな活動を続けたい
  • 顔なじみの人と話したい
  • 家で家族と暮らし続けたい
  • 自分でできることは自分で行いたい
  • 家事や仕事に似た役割を続けたい

こうした本人の生活を支えるために、どのような認知症支援が必要なのかを考えます。

アセスメントで確認したいポイント

項目確認する内容
本人の意思好きなこと、嫌なこと、希望、拒否、選択
生活歴仕事、家事、趣味、家庭内での役割、生活習慣
見当識時間・場所・人物の理解、混乱しやすい場面
記憶新しい出来事の保持、繰り返し質問、予定の把握
理解説明の理解、声かけの長さや方法
意思表明言葉、表情、仕草、行動から確認できる希望
不安不安になりやすい時間、場所、人、状況
活動得意な活動、集中できる活動、役割
対人関係集団を好むか、少人数を好むか、相性
生活動作移動、排泄、食事、入浴、更衣等でできること
環境音、人の多さ、席、表示、物品配置
家族介護負担、本人との関わり、家族が困っていること

行動だけを問題にせず背景を考える

認知症のある利用者にみられる行動には、本人なりの理由がある場合があります。

見えている行動考えられる背景の例
「家に帰る」と繰り返す家族への心配、役割意識、不安、疲労、時間の見通しが持てない
入浴を拒否する何をされるか分からない、寒い、羞恥心、職員との関係、過去の習慣
何度も同じことを聞く説明を保持できない、不安、予定を確認して安心したい
席を立ち歩くトイレへ行きたい、探している物がある、じっとしていることが苦手、役割を求めている
活動を拒否する興味がない、難しすぎる、幼稚に感じる、疲れている、集団が苦手

「問題行動をなくす」ことから考えるのではなく、本人の行動が何を意味しているのかを考えることで、支援方法が変わります。

認知症支援で避けたい目標と改善例

弱い表現改善例
認知機能を維持するなじみの活動や生活動作を続け、自分でできることを生活の中で継続できる。
問題行動を減らす不安になった際に職員の声かけを受け、安心できる場所や活動へ移ることができる。
帰宅願望をなくす帰宅への思いを受け止めてもらい、安心して通所時間を過ごすことができる。
集団活動へ参加する本人が興味を持てる活動を選び、自分のペースで参加できる。
見守りを行う本人が自分で行える生活動作を見守り、迷いや危険がある場面のみ支援する。

認知症の目標・サービス内容 文例集

1.初めての場所で不安が強いケース

長期目標

安心できる人や場所を持ち、自分らしくデイサービスを利用しながら在宅生活を継続できる。

短期目標

顔なじみの職員との関わりを通して、落ち着いて過ごせる時間を増やすことができる。

サービス内容

来所時は可能な範囲で顔なじみの職員が対応し、本人の表情や言葉から不安の程度を確認する。予定を一度に多く説明せず、次に行うことを短く分かりやすく伝える。落ち着いて過ごせる席や場所を整え、本人のペースで環境に慣れられるよう支援する。

2.同じ質問を繰り返すケース

長期目標

分からないことや不安なことを職員へ確認し、安心して一日を過ごすことができる。

短期目標

予定が分からなくなった際に職員から分かりやすい説明を受け、安心できる時間を持つことができる。

サービス内容

同じ質問が繰り返されても「さっき説明した」と否定せず、その都度簡潔に答える。本人が確認しやすい時計、予定表等も必要に応じて活用し、質問が増える時間帯や状況を確認して不安の背景を把握する。

3.帰宅したいと繰り返し訴えるケース

長期目標

本人の思いを受け止めてもらい、安心できる環境の中で通所利用を継続できる。

短期目標

帰宅への不安があるときに職員へ思いを伝え、落ち着ける活動や場所へ移ることができる。

サービス内容

帰宅したいという訴えを否定せず、「家のことが気になりますか」など本人の気持ちや理由を確認する。訴えが強くなる時間、疲労、空腹、排泄、家族への心配等との関連を確認し、必要に応じて休息や本人がなじみのある活動へつなげる。

4.集団活動への参加を拒否するケース

長期目標

本人が心地よい方法で活動や人との関わりを持ち、自分らしく日中を過ごすことができる。

短期目標

本人が興味を持てる活動を選び、無理のない範囲で参加することができる。

サービス内容

集団参加を一律に求めず、生活歴、趣味、得意なことから本人が興味を持てる活動を複数提示する。一人で行う活動や少人数での活動も選択できるようにし、本人が拒否した場合は意思を尊重する。

5.入浴を拒否するケース

長期目標

本人が納得できる方法で清潔を保ち、気持ちよく生活できる。

短期目標

本人が安心できる職員や方法を選び、無理なく清潔保持の機会を持つことができる。

サービス内容

入浴を拒否した際は無理に誘導せず、時間帯、寒さ、羞恥心、体調、職員との関係等を確認する。本人になじみのある言葉や方法で説明し、入浴が難しい場合は清拭等も含めて本人が受け入れられる方法を検討する。

6.席を離れて歩くことが多いケース

長期目標

本人の活動性を保ちながら、安全に施設内を移動し、自分らしく過ごすことができる。

短期目標

移動したいときに安全な環境で歩き、必要に応じて職員の支援を受けることができる。

サービス内容

歩くこと自体を一律に制止せず、本人が何を探しているのか、排泄や休息等の目的がないか確認する。転倒につながる物品や動線を整え、安全に歩ける環境を確保する。必要に応じて職員が自然に同行する。

7.生活歴を生かした役割が有効なケース

長期目標

これまでの経験や得意なことを生かし、自分の役割や存在意義を感じながら生活できる。

短期目標

本人が得意な作業や役割を選び、自分のペースで取り組むことができる。

サービス内容

本人の職歴、家事歴、趣味等を把握し、タオルたたみ、配膳準備、園芸等、本人がなじみを感じる活動を提案する。単なる作業として与えるのではなく、本人の意思を確認し、役割として自然に取り組めるよう支援する。

8.トイレの場所が分からなくなるケース

長期目標

必要な支援を受けながらトイレを利用し、自分で行える排泄動作を続けることができる。

短期目標

排泄のサインを職員が把握し、分かりやすい案内によってトイレまで移動できる。

サービス内容

本人の排泄リズムやトイレを探す際の行動を把握する。トイレ表示や動線を分かりやすくし、必要時は短い声かけで案内する。下衣操作や立ち座り等、本人ができる工程は見守りを基本とする。

9.本人の希望を言葉で確認しにくいケース

長期目標

本人の思いや好みを尊重した支援を受け、自分らしい生活を継続できる。

短期目標

表情や仕草、選択等を通して本人の希望を確認し、日々の活動や過ごし方に反映することができる。

サービス内容

二つ程度の分かりやすい選択肢を提示するなど、本人が意思を示しやすい方法を用いる。言葉だけで判断せず、表情、仕草、拒否、興味等も本人の意思を示す情報として記録・共有する。

10.家族の介護負担が大きいケース

長期目標

本人が安心して自宅での生活を続け、家族も過度な負担を抱えずに介護を継続できる。

短期目標

通所利用中の本人の様子や対応方法を家族と共有し、家庭での介護に生かすことができる。

サービス内容

本人が安心しやすい声かけ、拒否が少ない方法、好む活動等を家族・ケアマネジャーと共有する。家族の疲労や不安についても確認し、本人だけでなく家族の状況も含めて必要な支援につなげる。

本人の意思を「分からない」で終わらせない

認知症が進行すると、本人が自分の希望を長い言葉で説明することが難しくなる場合があります。

しかし、意思を言葉で説明できないことと、意思がないことは同じではありません。

選択肢の提示方法を工夫する、本人が理解しやすい言葉を使う、十分な時間を確保する、表情や仕草を確認するなど、本人が意思を示しやすい環境を整えます。

家族の希望は重要な情報ですが、本人の意思を確認せず家族の希望だけで支援内容を決めないよう注意します。

本人ができることまで介助しない

認知症があると、安全面への心配から職員が先回りして介助する場面が増えやすくなります。

しかし、手順を忘れることがあっても、最初のきっかけを提示すれば自分で行える場合があります。

  • 衣類を順番に置く
  • 食具を分かりやすい位置に置く
  • トイレの場所を案内する
  • 一つずつ短く声をかける
  • 最初の動作だけ一緒に行う

このような環境調整によって、直接介助を増やさず本人の能力を生かせる場合があります。

活動は「認知症向け」で決めない

認知症のある利用者に対して、一律に塗り絵や簡単な脳トレを提供する必要はありません。

元会社員、農業、料理、裁縫、園芸、音楽など、本人がこれまで大切にしてきたことは異なります。

本人の生活歴や好みから活動を選び、「できる・できない」ではなく、本人が意味を感じられるかという視点で考えます。

モニタリングで確認したいポイント

  • 通所時の不安や拒否に変化がないか
  • 本人が安心して過ごせる時間が増えているか
  • 本人の意思や選択が支援に反映されているか
  • 自分で行える生活動作が維持されているか
  • 帰宅への訴えが増える時間や背景に変化がないか
  • 活動への興味や参加状況に変化がないか
  • 排泄・食事・入浴等の介助量が変化していないか
  • 睡眠、食欲、疼痛、体調等に変化がないか
  • 本人に合った声かけや環境調整が共有されているか
  • 家族の介護負担や不安が増えていないか

急に状態が変わったときは認知症だけの問題と決めつけない

これまで落ち着いていた利用者が急に混乱する、怒りっぽくなる、活動しなくなる、食事を摂らなくなるなどの変化がみられた場合、「認知症が進んだ」とすぐに判断しないことが重要です。

疼痛、発熱、脱水、便秘、睡眠不足、環境変化、薬剤変更等が影響している場合もあります。

介護職が原因を診断するのではなく、いつから、どのような変化があり、普段と何が違うのかを具体的に確認し、看護職、家族、ケアマネジャー、医療職等へ共有します。

「できないこと」より「できる条件」を探す

認知症支援では、「できない」「分からない」「拒否する」と評価して終わるのではなく、どのような条件なら本人が行えるのかを探します。

人が少ない場所なら落ち着ける、午前中なら活動できる、顔なじみの職員なら入浴できる、具体的な声かけなら理解できるなど、本人が力を発揮できる条件があります。

この「できる条件」を職員間で共有することが、本人の能力を生かし、対応方法を統一することにつながります。

まとめ

通所介護計画書の認知症支援では、「認知機能を維持する」「安全に見守る」といった抽象的な記載だけでなく、本人がどのような生活を続けたいのかを中心に考えることが重要です。

不安、帰宅への訴え、拒否、繰り返しの質問等についても、行動だけを問題視せず、本人の思い、生活歴、体調、環境等から背景を考えます。

本人の意思を確認しやすい環境を整え、現在もできることを生活の中で生かし、安心できる人・場所・役割をつくることで、認知症があっても本人らしい生活を支える通所介護計画につながります。

関連ページ

参考

  • 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン 第2版」
  • 厚生労働省「認知症施策関連ガイドライン・取組事例」
  • 厚生労働省「専門職のための認知症の本人と家族が共に生きることを支える手引き」

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