通所介護計画書を作成するとき、「長期目標と短期目標の違いが分からない」「毎回、筋力維持や転倒予防ばかりになってしまう」と悩むことがあります。
通所介護計画書の目標は、デイサービスの中だけで完結するものではありません。利用者が自宅や地域でどのような生活を続けたいのかを確認し、その生活を支えるためにデイサービスで何を行うのかを具体化することが大切です。
本記事では、長期目標・短期目標の違いと作り方を整理したうえで、歩行、立ち上がり、排泄、入浴、食事、認知症、社会参加、家族介護負担など、通所介護計画書で使用しやすい文例を紹介します。
歩行・移動、排泄、入浴、食事、認知症、外出・社会参加など、通所介護計画書でよく使う場面別に文例をまとめています。文例はそのまま転記するのではなく、本人の希望、現在の能力、生活環境、家族状況に合わせて調整してください。
通所介護計画書の長期目標・短期目標|文例早見表
まずは、よく使われる長期目標と短期目標の組み合わせを一覧で紹介します。詳しい考え方やサービス内容は、この後で生活課題ごとに解説します。
| 生活課題 | 長期目標の文例 | 短期目標の文例 |
|---|---|---|
| 歩行・移動 | 現在の歩行能力を維持し、自宅内を安全に移動しながら在宅生活を継続できる。 | 手すりや歩行補助具を使用し、見守りで必要な場所まで安定して移動できる。 |
| 立ち上がり | 椅子やベッドから安全に立ち上がり、自分で行える生活動作を継続できる。 | 適切な支持物を使用し、見守りで安定して立ち上がることができる。 |
| 排泄 | 必要な支援を受けながら、自分のタイミングでトイレを利用する生活を継続できる。 | トイレまで安全に移動し、手すりを使用して便座への立ち座りができる。 |
| 入浴 | 必要な支援を受けながら定期的に入浴し、清潔で快適な生活を継続できる。 | 手すりやシャワーチェアを使用し、自分で行える洗身・更衣動作を継続できる。 |
| 食事・水分 | 必要な食事と水分を摂取し、体調を整えながら在宅生活を継続できる。 | 安定した姿勢を保ち、自分のペースで食事や水分を摂取できる。 |
| 認知症・不安 | なじみの人や活動との関わりを保ち、安心して日常生活を継続できる。 | 職員の声かけを受けながら、安心して活動や交流に参加できる。 |
| 外出・社会参加 | 定期的に外出する機会を持ち、人との交流や楽しみのある生活を継続できる。 | デイサービスを継続して利用し、本人が興味を持てる活動に参加できる。 |
| 家族介護負担 | 本人の在宅生活と家族の生活を両立し、無理のない介護体制を継続できる。 | 通所介護を安心して利用し、家族が休息や自分の時間を確保できる。 |
ポイント:「筋力を向上する」「転倒しない」といった身体機能やリスクだけで目標を終わらせず、その先にどのような生活を続けたいのかまで表現すると、長期目標と短期目標がつながりやすくなります。
通所介護計画書の目標は「どう暮らしたいか」から考える
指定通所介護の運営基準では、利用者の心身の状況、希望、置かれている環境を踏まえ、機能訓練等の目標と、その目標を達成するための具体的なサービス内容等を通所介護計画に記載することが求められています。
また、居宅サービス計画が作成されている場合は、その内容に沿って通所介護計画を作成します。
ここで注意したいのは、
- マシントレーニングを行う
- 集団体操へ参加する
- 入浴介助を行う
- 歩行訓練を行う
といったサービスそのものを目標にしないことです。
これらは目標を達成するための手段です。
例えば、本人が「自分でトイレへ行きたい」と希望している場合、目標の中心になるのは単なる下肢筋力ではありません。
自宅で安全にトイレまで移動し、自分のタイミングで排泄できる生活を続けることが本人にとっての意味のある目標になります。
その生活を支える手段として、立ち上がり練習、歩行練習、方向転換練習、環境調整等を位置づけます。
長期目標と短期目標の違い
| 項目 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 長期目標 | 利用者が一定期間後に実現・継続したい生活の姿 | 自宅内を安全に移動し、現在の在宅生活を継続できる。 |
| 短期目標 | 長期目標へ近づくために、直近で目指す具体的な状態 | 手すりを使用して椅子から安定して立ち上がり、トイレまで移動できる。 |
| サービス内容 | 短期目標を支えるために事業所が行う具体的な支援 | 立ち上がり、立位保持、方向転換、歩行状態を確認し、身体状況に合わせた機能訓練を実施する。 |
つまり、
本人の希望 → 長期目標 → 短期目標 → サービス内容
という一つの流れを作ることが重要です。
運営基準では「機能訓練等の目標」と規定されており、法令上、必ず「長期目標」「短期目標」という二段階の名称で記載しなければならないと直接定められているわけではありません。実際の記載項目や様式は、事業所で使用している様式や指定権者の取扱いも確認してください。
専門職が押さえたい目標設定の基本構造
文章を考える前に、次の順序で情報を整理すると目標を作りやすくなります。
- 本人・家族はどのような生活を希望しているか
- その生活を妨げている要因は何か
- 現在どこまで本人が自分で行えているか
- 今後もどのような生活を続けたいか
- そのために直近で何を維持・獲得する必要があるか
- デイサービスでは何を支援するのか
- 何を確認すれば目標達成を判断できるか
この流れを飛ばして、
と設定すると、本人の生活とのつながりが弱くなります。
身体機能の評価は重要ですが、最終的には身体機能が本人の生活の中でどう使われるのかまで考えます。
避けたい目標と改善例
| 抽象的になりやすい表現 | 生活につなげた改善例 |
|---|---|
| 筋力を向上する | 下肢機能を保ち、自宅内を安全に移動してトイレへ行ける。 |
| 転倒しない | 手すりや歩行器を使用し、居室からトイレまで安定して移動できる。 |
| 機能訓練を頑張る | 立ち上がりや歩行能力を維持し、自宅で自分で行える動作を続けられる。 |
| 入浴する | 必要な支援を受けながら安全に入浴し、清潔で快適な生活を続けられる。 |
| 他者交流を行う | 外出や交流の機会を持ち、本人にとって楽しみのある生活を継続できる。 |
| 認知機能を維持する | なじみの活動や人との交流を続け、安心して日中を過ごすことができる。 |
| 安全に過ごす | 必要な場面で見守りや環境調整を受けながら、自分で行える生活動作を継続できる。 |
長期目標・短期目標を作る簡単な考え方
文章が思いつかない場合は、最初から完成した目標を書こうとせず、本人の希望から順番に考えます。
① 本人の希望
自分でトイレへ行きたい。
↓
② 長期目標
自宅内を安全に移動し、自分のタイミングでトイレを利用できる。
↓
③ 短期目標
手すりを使用し、見守りでトイレまで移動できる。
↓
④ 通所介護で行う支援
立ち上がり、方向転換、歩行状態を確認し、身体状況に合わせた機能訓練と歩行練習を行う。
このように考えることで、目標だけが独立した計画になりにくくなります。
通所介護計画書の長期目標・短期目標 文例集
1.歩行・転倒予防
長期目標
短期目標
サービス内容例
評価するときの視点:歩行距離だけではなく、立ち上がり、方向転換、補助具の使用状況、見守り・介助量、自宅での移動状況も確認します。
2.立ち上がり・移乗
長期目標
短期目標
サービス内容例
3.排泄・トイレ動作
長期目標
短期目標
サービス内容例
ポイント:「排泄介助を行う」だけではなく、移動、立ち座り、下衣操作、排泄後の動作など、本人がどこまで行えているかを工程ごとに確認します。
4.入浴
長期目標
短期目標
サービス内容例
5.更衣・整容
長期目標
短期目標
サービス内容例
6.食事・栄養
長期目標
短期目標
サービス内容例
7.体力・活動量低下
長期目標
短期目標
サービス内容例
8.認知症・見当識低下
長期目標
短期目標
サービス内容例
ポイント:認知症という診断名だけから目標を決めず、本人が安心できる環境、なじみの活動、本人の意思表出や参加方法を確認します。
9.閉じこもり・外出機会低下
長期目標
短期目標
サービス内容例
10.家族介護負担
長期目標
短期目標
サービス内容例
長期目標と短期目標をつなげる具体例
短期目標を設定するときは、その目標を達成した先に長期目標があるかを確認します。
| 本人の希望 | 長期目標 | 短期目標 | デイサービスでの支援 |
|---|---|---|---|
| 自分でトイレへ行きたい | 自宅で安全にトイレへ移動し、排泄を続けられる | 手すりを使用して安定して立ち上がり、短距離を歩行できる | 立ち上がり、立位保持、方向転換、歩行練習 |
| 自宅のお風呂に入りたい | 必要な支援を受けながら自宅での入浴を継続できる | 手すりを使用して安定した立ち座りができる | 下肢機能訓練、入浴動作評価、家族との情報共有 |
| また買い物へ行きたい | 家族と買い物に出かける機会を持てる | 休憩を取りながら屋外歩行に必要な体力を保てる | 歩行練習、持久力訓練、活動量の調整 |
| 家族に迷惑をかけたくない | できる生活動作を自分で行いながら、家族と在宅生活を継続できる | 更衣・移動・排泄等、自分で行える動作を継続できる | 過介助を避け、残存能力を生かした介助・見守り |
目標を評価しやすくするためのポイント
「安全に過ごす」「元気になる」「身体機能を維持する」といった目標だけでは、評価時に達成したかどうか判断しにくくなります。
必ず数値目標にする必要はありませんが、どの生活場面が、どの程度できれば達成と考えるのかを明確にしておくと評価しやすくなります。
- 立ち上がりが全介助から一部介助になった
- 歩行器でトイレまで移動できるようになった
- 洗身のうち上半身を自分で行えるようになった
- 週2回の通所利用を継続できている
- 活動への声かけに応じて参加できる場面が増えた
- 家族による移乗介助の負担が減った
- 必要な場面で自ら手すりを使用できるようになった
身体機能だけでなく、実際の生活動作、参加状況、介助量、本人の意向などを合わせて確認します。
杖を使用した歩行は継続できており、施設内では見守りで安定して移動できている。方向転換時には軽度のふらつきがみられるため、現在の歩行練習と見守りを継続する。本人からも「できるだけ自分で歩きたい」と希望が聞かれており、現在の目標を継続する。
短期目標が達成できないときに確認すること
短期目標が未達成だった場合、単純に「未達成のため継続」とするのではなく、原因を確認します。
- 本人の心身機能が変化していないか
- 目標設定が現在の能力に対して高すぎなかったか
- 本人自身がその目標を望んでいるか
- サービス内容が目標につながっていたか
- 自宅の環境や介助方法に変化はないか
- 疼痛や疲労などが影響していないか
- 認知機能や理解面の変化はないか
- 家族の介護力や生活状況に変化はないか
目標未達成は、利用者の努力不足を意味するものではありません。
アセスメント・目標設定・サービス内容・環境条件のどこを見直す必要があるのかを検討します。
通所介護計画書とケアプランの目標をどうつなげるか
通所介護計画は、居宅サービス計画の文章をそのままコピーするものではありません。
一方で、ケアプランとは関係のない独立した目標を設定するものでもありません。
例えば、居宅サービス計画が次の内容だったとします。
短期目標:屋内を安全に移動できる。
この場合、通所介護計画では、デイサービスが担う役割をもう一段具体化します。
そのうえで、立ち上がり練習、歩行練習、活動量の確保、移動時の見守りなどを具体的なサービス内容として記載します。
ケアプランの生活目標を、デイサービスで行う具体的な支援へ落とし込むという考え方が基本です。
長期目標・短期目標についてよくある質問
長期目標と短期目標は必ず書かなければいけませんか?
運営基準では、機能訓練等の目標と、その目標を達成するための具体的なサービス内容等を記載することが求められています。一方、「長期目標」「短期目標」という名称を必ず二段階で使用することまでを直接定めたものではありません。
実際には、使用している通所介護計画書の様式や指定権者の取扱いを確認してください。
ケアプランと同じ目標を書いてもいいですか?
ケアプランとの整合性は必要ですが、そのまま転記するだけでは通所介護事業所の役割が分かりにくくなることがあります。
ケアプランの目標を踏まえ、通所介護で何を支援するのかまで具体化すると実務で活用しやすい計画になります。
「筋力維持」は短期目標として使えませんか?
身体機能を評価・支援すること自体は重要です。ただし、「筋力維持」だけでは本人の生活とのつながりが分かりにくくなります。
例えば、
のように、身体機能がどの生活動作につながるのかまで表現すると目標の意味が伝わりやすくなります。
目標を数値化した方がいいですか?
すべてを数値化する必要はありません。距離や回数だけでなく、見守り・一部介助・自立などの介助量、使用する福祉用具、実際の生活場面なども評価の基準になります。
通所介護計画書を作成するときの専門職としての視点
質の高い通所介護計画書は、疾患名や介助量を並べただけの書類ではありません。
利用者の、
- 今できていること
- 難しくなっていること
- 本人が続けたいこと
- 家族が希望していること
- 生活環境
- デイサービスが担えること
をつなげて考えます。
特に機能訓練を行っている事業所では、身体機能だけを最終目標にしないことが重要です。
筋力、バランス、関節可動域、持久力などは生活を構成する一つの要素です。
「立ち上がれるからトイレへ行ける」「歩けるから家族と外出できる」というように、身体機能と生活機能をつなげて計画へ反映します。
まとめ
通所介護計画書の長期目標・短期目標では、「デイサービスで何をするか」ではなく、利用者がどのような生活を続けたいのかを出発点にすることが重要です。
長期目標では本人が目指す生活の姿を示し、短期目標では、その生活に近づくために必要な具体的な状態を設定します。
さらに、短期目標を支える具体的な方法として、機能訓練、入浴、食事、認知症支援、社会参加支援などを位置づけます。
「筋力向上」「転倒予防」「入浴介助」といった支援者側の言葉だけで終わらせず、本人にとって意味のある生活へつながる目標へ変換することで、評価しやすく、多職種にも支援の目的が伝わる通所介護計画書になります。
本記事の文例は、そのまま全利用者へ当てはめるのではなく、本人の希望、身体状況、認知機能、生活環境、家族状況に合わせて調整して活用してください。


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