大腿骨頸部骨折後は、転倒への恐怖や役割の喪失から、身体機能が回復しても居室で過ごす時間が増えることがあります。
本記事では、本人が続けてきた新聞整理と近隣交流を手がかりに、生活意欲と活動範囲を段階的に取り戻す事例を紹介します。
ここでは、意欲低下を本人の性格と決めつけず、痛み、疲労、不安、気分、生活上の意味を多面的に確認します。を例に紹介します。
この記事が参考になるケース
- 痛みは本人の訴えでは軽いものの、活動後の疲労と自信の低下がある。
意欲がないと評価せず、本人が反応する話題、以前の役割、痛み、疲労、抑うつの可能性、外出への恐怖を丁寧に確認する。
気分の落ち込み、睡眠や食欲の変化、自責的な発言等が続く場合は、本人の同意を得て医療職へ情報共有する。
利用者像の例
- 82歳男性。大腿骨頸部骨折後、歩行器で屋内移動できるが、退院後は寝室でテレビを見る時間が増えた。
- 骨折前は毎朝新聞を読み、気になる記事を切り抜いて近所の友人へ見せていた。
- 家族が散歩へ誘うと「また転ぶからいい」と断るが、友人の話題には笑顔がみられる。
- 痛みは本人の訴えでは軽いものの、活動後の疲労と自信の低下がある。
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例
転ぶのは怖いが、新聞を読んで友人と話すのはまたやりたい。まず居間で新聞を読みたい。
家族の意向
おすすめ文例
無理に散歩へ誘うと断られる。本人が興味を持てることから始めたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は歩行器で居間まで移動でき、新聞や友人との交流への関心と情報を整理する力が保たれている。
再転倒への恐怖と活動後の疲労から居室中心となり、役割と交流の機会が減っている。
本人が価値を感じる新聞整理から活動を始め、休息を取りながら居間、玄関先、友人との交流へ段階的に広げる必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が関心を示す新聞と友人の話題を活動の起点にする。本人が選んだ範囲で居間への移動や玄関先での交流を段階的に支援する。痛み、疲労、気分、睡眠、食欲を確認し、変化があれば医療職へ共有する。
別の表現|短めにまとめたい場合
新聞や友人との交流など本人の関心を起点に活動を段階的に広げ、痛み・疲労・気分等の変化を確認して必要時に医療職へ共有する。
第2表の文例
本人が大切にしてきた役割と交流を起点に、無理なく生活範囲を広げる。
課題① 居間で新聞を読み、自分の時間を取り戻したい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
居間で新聞を読み、自分の時間を取り戻したい。
長期目標
日中に居室外で好きな活動を行える。
短期目標
午前中に歩行器で居間へ移動し、休みながら新聞を読める。
サービス内容
支援者は新聞と椅子を本人が使いやすく整え、移動するかどうか本人へ確認する。
課題② 転倒への不安を伝えながら、活動範囲を広げたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
転倒への不安を伝えながら、活動範囲を広げたい。
長期目標
不安と疲労に応じて活動を選び、安全に移動できる。
短期目標
居間、玄関先など複数の選択肢から本人が行きたい場所を選べる。
サービス内容
理学療法士等が歩行と休息を評価し、支援者は本人の選択と中止の意思を尊重する。
課題③ 新聞の話題を通じて友人との交流を再開したい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
新聞の話題を通じて友人との交流を再開したい。
長期目標
本人らしい方法で近隣との交流を楽しめる。
短期目標
家族同席で友人と短時間会い、新聞記事について話せる。
サービス内容
家族は訪問の可否と時間を本人へ確認し、会話を代わらず本人のペースを守る。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 居間で新聞を読み、自分の時間を取り戻したい。 | 日中に居室外で好きな活動を行える。 | 午前中に歩行器で居間へ移動し、休みながら新聞を読める。 | 支援者は新聞と椅子を本人が使いやすく整え、移動するかどうか本人へ確認する。 |
| 転倒への不安を伝えながら、活動範囲を広げたい。 | 不安と疲労に応じて活動を選び、安全に移動できる。 | 居間、玄関先など複数の選択肢から本人が行きたい場所を選べる。 | 理学療法士等が歩行と休息を評価し、支援者は本人の選択と中止の意思を尊重する。 |
| 新聞の話題を通じて友人との交流を再開したい。 | 本人らしい方法で近隣との交流を楽しめる。 | 家族同席で友人と短時間会い、新聞記事について話せる。 | 家族は訪問の可否と時間を本人へ確認し、会話を代わらず本人のペースを守る。 |
閉じこもり・意欲低下のケアプラン作成ポイント
意欲低下の背景をみる
恐怖、疲労、痛み、気分、役割喪失など複数の要因を確認する。
本人の関心から始める
散歩を一律に勧めず、本人が意味を感じる活動を小さく再開する。
生活範囲を段階化する
居室、居間、玄関先、屋外と選択肢を示し、本人が段階を選ぶ。
文例を使うときのポイント
- 活動後と翌日の疲労を確認して頻度を調整する。
- 表情や発言の変化をサービス間で共有する。
- 活動量だけでなく、本人が役割や楽しみを感じたかを評価する。
まとめ
閉じこもりは身体機能だけの問題ではなく、恐怖や役割喪失が影響します。
本人が意味を感じる活動と交流から始め、選べる段階を用意することが大切です。
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