大腿骨頸部骨折後は、立位保持や物の運搬が難しくなり、これまで担ってきた家事を家族がすべて代わることがあります。
本記事では、椅子やワゴンを活用し、本人が得意なみそ汁作りと食卓準備を続ける事例を紹介します。
ここでは、安全確保と同時に、長年培った段取りや味付けの力を生活機能として評価します。を例に紹介します。
この記事が参考になるケース
- 同居する夫は家事をすべて代わろうとするが、本人は役割を失ったように感じている。
調理を立位時間だけで評価せず、献立決め、材料の選択、下ごしらえ、味付けなど本人が担える工程を確認する。
火器や重量物の扱いは動作評価と住環境を踏まえて検討し、無理な立位や運搬を前提にしない。
利用者像の例
- 76歳女性。退院後は杖で屋内を移動し、台所で10分程度なら支えを使って立てる。
- 家族の食事を長年作ってきており、だしの取り方や季節の献立を考えることが得意である。
- 鍋を持って移動することや低い棚から物を取ることには転倒リスクがある。
- 同居する夫は家事をすべて代わろうとするが、本人は役割を失ったように感じている。
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例
毎日は無理でも、家族のみそ汁の味付けは私がしたい。座ってできることは自分で続けたい。
家族の意向
おすすめ文例
転ぶことが心配で止めていたが、本人が安全にできる役割を一緒に考えたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は献立を考え、食材を切り、味を整える知識と手の操作能力を保っている。
一方、長時間の立位、方向転換、鍋や食器の運搬に不安があり、家族が全面的に代行したことで役割喪失感が生じている。
作業用椅子、ワゴン、収納位置の調整、家族との工程分担により、安全に本人の得意な家事を続けられるよう支援が必要である。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
作業療法士等が台所動作を評価し、座位で行う工程と支援が必要な工程を本人と整理する。本人が献立や味付けを決める役割を尊重し、家族は危険な運搬等を分担する。疲労や痛みに応じて途中で休み、完成を急がない生活リズムを整える。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人が献立や味付けを担う役割を大切にし、座位でできる調理工程と家族が補う工程を分け、痛みや疲労に合わせて続けられるよう支援する。
第2表の文例
安全な環境と工程分担を整え、本人が培った調理の力と家庭内の役割を継続する。
課題① できる調理工程を続け、家族の食事づくりに関わりたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
できる調理工程を続け、家族の食事づくりに関わりたい。
長期目標
週に数回、自分の得意な料理の一部を安全に担当できる。
短期目標
椅子に座って食材の下ごしらえと味付けを行える。
サービス内容
作業療法士等が立位、移動、上肢操作を評価し、座位作業、道具配置、ワゴン活用を提案する。
課題② 台所内の転倒や無理な運搬を避けたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
台所内の転倒や無理な運搬を避けたい。
長期目標
必要な物を安全に扱い、危険な工程は家族へ依頼できる。
短期目標
鍋の運搬や低所の物品取得について、自分から手伝いを頼める。
サービス内容
家族は本人と工程を相談し、重量物と火器周辺の作業を分担し、本人の判断を待って支援する。
課題③ 家事を通じて家庭内の役割と自信を保ちたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
家事を通じて家庭内の役割と自信を保ちたい。
長期目標
本人の献立や味付けが家族の食卓に生かされ、役割を実感できる。
短期目標
週1回、本人が献立を一品選び、家族と一緒に完成させる。
サービス内容
家族は本人のやり方と味の好みを尊重し、できた工程を具体的に共有する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| できる調理工程を続け、家族の食事づくりに関わりたい。 | 週に数回、自分の得意な料理の一部を安全に担当できる。 | 椅子に座って食材の下ごしらえと味付けを行える。 | 作業療法士等が立位、移動、上肢操作を評価し、座位作業、道具配置、ワゴン活用を提案する。 |
| 台所内の転倒や無理な運搬を避けたい。 | 必要な物を安全に扱い、危険な工程は家族へ依頼できる。 | 鍋の運搬や低所の物品取得について、自分から手伝いを頼める。 | 家族は本人と工程を相談し、重量物と火器周辺の作業を分担し、本人の判断を待って支援する。 |
| 家事を通じて家庭内の役割と自信を保ちたい。 | 本人の献立や味付けが家族の食卓に生かされ、役割を実感できる。 | 週1回、本人が献立を一品選び、家族と一緒に完成させる。 | 家族は本人のやり方と味の好みを尊重し、できた工程を具体的に共有する。 |
家事・調理を支えるケアプランのポイント
工程を分解する
調理をできる・できないで分けず、献立、準備、加熱、盛付けなど工程ごとに能力をみる。
生活歴を資源にする
長年の段取りや味付けを本人の強みとして目標とサービス内容へ反映する。
家族との分担を合意する
家族が先回りして全てを代行せず、本人が頼みたい工程を確認する。
文例を使うときのポイント
- 実際の台所で動線、椅子の安定性、収納位置を確認して調整する。
- 調理後の疲労や痛みを確認し、頻度と工程を見直す。
- 完成品だけでなく、本人が役割を感じられたかを評価する。
まとめ
家事の再開は、身体機能だけでなく本人の役割と自信の回復につながります。
工程を分け、環境と家族の分担を整えることで、得意な力を安全に暮らしへ生かせます。
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