認知症のある利用者では、トイレの場所が分からなくなったり、尿意を感じても間に合わなかったり、衣類の上げ下げに時間がかかったりすることで排泄の失敗がみられることがあります。このような場合、「失禁があるからオムツを使用する」とすぐに考えるのではなく、どの場面で困っているのかを整理することが大切です。
ここでは、認知症によりトイレでの失敗が増えているものの、本人はできる限り自分で排泄したいと希望しているケースを例に、本人の尊厳と残っている能力を大切にした第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 認知症がありトイレの場所を迷うことがある
- 尿意を感じてからトイレまで間に合わないことがある
- 衣類の上げ下げや排泄後の始末に声かけが必要
- 失敗したことを本人が隠そうとすることがある
- 家族が失禁や衣類交換への対応に負担を感じている
- 本人はオムツの使用に抵抗感がある
- できる限りトイレでの排泄を続けたい
担当ケースに近い部分を選び、排泄の失敗が起こる時間帯、動作、環境、身体状態などに合わせて調整してください。
※文例はそのまま使用するのではなく、排泄パターン、身体機能、疾患、服薬、住環境、本人の希望などに合わせて調整してください。排泄状態に急な変化がみられた場合は、体調変化等も含めて確認することが重要です。
利用者像の例
- 86歳・女性・要介護2
- 長女夫婦と同居
- アルツハイマー型認知症
- 屋内は手すり等を使用しながら歩行可能
- 尿意・便意はある
- 日中は自分でトイレへ向かうことが多い
- 夕方や夜間にトイレの場所を迷うことがある
- 衣類を下ろすまでに時間がかかり、間に合わないことがある
- 失敗すると「誰にも言わないで」と恥ずかしそうに話す
- 紙パンツを勧められると「まだそんなものはいらない」と拒否することがある
- 通所介護週3回利用
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|自分でトイレに行きたい場合
まだ自分で歩いてトイレに行けるので、できることは自分で続けたい。できるだけ人の手を借りずにトイレを済ませたい。
別の表現①|失敗を恥ずかしく感じている場合
失敗すると恥ずかしいので、間に合うようにトイレへ行きたい。できれば人に見られず、自分で済ませたい。
別の表現②|紙パンツ等への抵抗がある場合
まだ自分でトイレへ行けるので、何でもオムツにするのは嫌だ。必要なところだけ手伝ってほしい。
家族の意向
おすすめ文例|本人の自立を続けてほしい場合
本人が自分でトイレに行きたいと思っているので、できる限り続けてほしい。失敗したときも本人が傷つかないように支えながら、安全に排泄できる方法を考えてほしい。
別の表現|家族の介護負担が増えている場合
夜間の失敗や衣類交換が増え、家族も対応に疲れることがある。本人の気持ちは大切にしながら、本人にも家族にも負担の少ない方法を一緒に考えてほしい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は尿意・便意があり、日中は自らトイレへ向かうことができており、「できることは自分で続けたい」という思いが強い。一方、認知症により夕方や夜間にはトイレの場所を迷うことがあり、歩行や衣類の上げ下げに時間がかかることで排泄に間に合わない場面がみられている。失敗した際には恥ずかしさから周囲に伝えず隠そうとすることもあり、本人の自尊心への配慮が必要である。排泄の失敗だけを理由に本人の能力を奪うのではなく、排泄しやすい時間帯や環境、移動・衣類操作などどの段階に支援が必要かを整理し、自分で行える動作を活かしながら安心してトイレでの排泄を継続できるよう支援する必要がある。
別の表現|家族負担も重視する場合
本人は可能な限りトイレで排泄したいと希望しており、現在も尿意を感じて自ら移動できる場面が多く残されている。一方、時間帯によってトイレの場所が分からなくなることや、衣類操作に時間がかかることで失敗することが増えている。家族は夜間の見守りや衣類交換等を担っており、負担も増加している。本人のできる排泄動作を維持しながら、トイレまでの環境や声かけ、排泄のタイミングを工夫し、必要な福祉用具や排泄用品等も本人の意向を確認して活用することで、本人の尊厳と家族の負担軽減の両立を図る必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人ができる限り自分でトイレで排泄したいという思いを尊重し、現在行えている移動や排泄動作を継続できるよう支援する。排泄の時間帯や失敗が起こりやすい状況を確認し、本人の様子に合わせた声かけや早めのトイレ誘導を行う。トイレまでの動線や表示、衣類等を工夫し、本人が一人でも分かりやすく排泄しやすい環境を整える。失敗した際には本人を責めたり羞恥心を強めたりしないよう配慮し、必要な支援を行う。家族の夜間対応等の負担についても確認し、本人・家族双方に無理のない排泄支援を検討する。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人のトイレで排泄したいという思いと現在できている動作を大切にし、排泄パターンに合わせた声かけや環境調整を行う。失敗時には本人の羞恥心に配慮し、必要な部分のみ支援するとともに、家族の介護負担にも配慮しながら排泄の自立を支える。
第2表の文例
排泄の失敗がある場合も、「失禁をなくすこと」だけを目標にするのではなく、本人が自分らしく、安心して排泄できる生活を目標として考えます。
課題① できるだけ自分でトイレに行きたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
自分でできることを続けながら、できるだけ自分でトイレへ行き排泄したい。
ニーズの別表現|自尊心を重視する場合
必要なところだけ手伝ってもらい、人に頼りすぎず自分の力で排泄したい。
長期目標
必要な支援を受けながら、自分でできる排泄動作を継続し、安心してトイレで排泄できる。
短期目標
尿意や便意を感じた際に、分かりやすい環境や声かけを活用してトイレへ移動できる。
サービス内容
本人の排泄パターンや様子を確認し、必要時には早めにトイレを案内する。自分で行える移動・衣類操作・排泄後の動作は見守り、困難な部分のみ支援する。
課題② トイレの場所に迷わず安心して排泄したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
トイレの場所が分からなくなって慌てることなく、安心して排泄したい。
長期目標
本人にとって分かりやすい環境が整い、必要な支援を受けながらトイレを使用できる。
短期目標
トイレの場所が分かりやすくなり、迷った際にも声かけを受けて安心して移動できる。
サービス内容
トイレまでの動線を整理し、本人が理解しやすい表示や目印等を活用する。迷っている様子がみられた際には、急かしたり強く指示したりせず、分かりやすく案内する。
課題③ 失敗しても恥ずかしい思いをせず清潔に過ごしたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
排泄に失敗したときも恥ずかしい思いをせず、身体や衣類を清潔にして気持ちよく過ごしたい。
長期目標
本人の尊厳が守られ、必要な支援を受けながら清潔で快適な生活を継続できる。
短期目標
排泄の失敗があった際に、本人の気持ちに配慮した支援を受け、速やかに更衣や清潔保持を行うことができる。
サービス内容
排泄の失敗を責めたり周囲に聞こえる形で指摘したりせず、本人の羞恥心に配慮して個別に対応する。本人が自分でできる更衣等は見守り、必要な部分のみ支援する。
課題④ 家族も無理なく排泄支援を続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
本人の気持ちを大切にしながら、家族も夜間対応や衣類交換を抱え込みすぎずに介護を続けたい。
長期目標
本人の排泄方法と家族の負担のバランスが保たれ、無理なく在宅生活を継続できる。
短期目標
排泄の失敗が起こりやすい時間帯や対応方法を家族と関係職種で共有し、家族が一人で対応を抱え込まずに済む。
サービス内容
排泄状況や失敗が起こりやすい時間帯を家族・通所介護・ケアマネジャー等で共有し、本人に合った支援方法を検討する。家族の夜間対応や介護負担についても確認し、必要に応じて環境やサービス内容を見直す。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 自分でできることを続けながら、できるだけ自分でトイレへ行き排泄したい。 | 必要な支援を受けながら、自分でできる排泄動作を継続し、安心してトイレで排泄できる。 | 尿意・便意を感じた際に、環境や声かけを活用してトイレへ移動できる。 | 排泄パターンを確認し、本人ができる動作は見守り、必要な部分のみ支援する。 |
| トイレの場所が分からなくなって慌てず、安心して排泄したい。 | 本人に分かりやすい環境が整い、必要な支援を受けながらトイレを使用できる。 | 場所が分かりやすくなり、迷った際にも声かけで安心して移動できる。 | 動線や表示を工夫し、本人が分かりやすい環境を整える。 |
| 失敗したときも恥ずかしい思いをせず、清潔に気持ちよく過ごしたい。 | 本人の尊厳が守られ、清潔で快適な生活を継続できる。 | 失敗時に本人の気持ちに配慮した支援を受け、清潔保持を行える。 | 羞恥心に配慮し、できる更衣動作は本人に任せながら必要な支援を行う。 |
| 本人の気持ちを大切にしながら、家族も排泄介助を抱え込みすぎずに生活したい。 | 本人の排泄方法と家族の負担のバランスを保ちながら在宅生活を継続できる。 | 失敗が起こりやすい状況と対応方法を関係者で共有できる。 | 排泄状況と家族負担を共有し、必要に応じて支援方法を見直す。 |
認知症・排泄・トイレ失敗のケアプランで意識したいポイント
「失禁がある」で終わらず、どこで困っているかを見る
尿意は分かっているがトイレの場所が分からない、移動に時間がかかる、衣類を下ろすのが間に合わないなど、排泄の失敗が起こる理由は人によって異なります。排泄動作を細かく分け、どこまで本人自身で行えているのかを確認します。
排泄できたときの条件も確認する
失敗した時間帯だけでなく、問題なく排泄できた時間や状況にも注目します。食後は自分からトイレへ行ける、声をかけると間に合うなど、うまくいっている条件が支援方法の手がかりになります。
本人ができる動作を奪わない
排泄に失敗することが増えたからといって、移動や衣類操作まですべて介助する必要があるとは限りません。本人が自分でできる部分を残すことは、身体機能の維持だけでなく、本人の尊厳や自信を守ることにもつながります。
羞恥心への配慮を忘れない
排泄は非常に個人的な行為です。失敗を大きな声で指摘したり、多くの人の前で排泄状況について話したりすると、本人の自尊心を傷つける可能性があります。本人の気持ちに配慮し、個別に穏やかに支援します。
環境調整で改善できることもある
トイレまでの距離、照明、表示、衣類の着脱しやすさなど、環境によって排泄のしやすさは変わります。本人の能力だけを問題とせず、生活環境側からも支援方法を考えます。
急な排泄状態の変化にも注意する
以前は問題なく排泄できていた利用者に急に失敗が増えた場合などは、認知症だけで説明せず、体調や身体状態の変化についても確認し、必要に応じて医療職等へ相談します。
文例を使うときのポイント
- 尿意・便意の有無を確認する
- トイレまでの移動、場所の認識、衣類操作などを分けて考える
- 失敗が起こりやすい時間帯や状況を把握する
- 問題なく排泄できた場面も確認する
- 本人が自分で行える排泄動作を残す
- 羞恥心や自尊心に十分配慮する
- トイレの表示や動線、衣類等の環境を確認する
- 家族の夜間対応や介護負担にも目を向ける
まとめ
認知症のある利用者に排泄の失敗がみられる場合、失禁という結果だけを見るのではなく、トイレの場所、移動、衣類操作、タイミングなど、どの場面で困っているのかを丁寧に整理することが重要です。
本人が現在行えている排泄動作を活かし、分かりやすい環境や適切な声かけを組み合わせることで、トイレで排泄する機会を維持できます。失敗した際にも本人の羞恥心と尊厳を守り、家族の負担にも配慮することが、本人らしい生活を支えるケアプランにつながります。
関連するケアプラン文例
- ケアプラン文例【認知症・夫婦二人暮らし】
- ケアプラン文例【認知症・独居】
- ケアプラン文例【認知症・入浴拒否】
- ケアプラン文例【認知症・デイサービス拒否】
- ケアプラン文例【認知症・外出・道迷い】


コメント