パーキンソン病のある利用者では、歩幅が小さくなる、方向転換が不安定になる、疲れると歩行状態が低下するなどの変化から、杖だけでは安全な移動が難しくなることがあります。
一方で、本人が「まだ歩行器は使いたくない」「歩行器を使うと弱ったように感じる」と話し、福祉用具の導入に抵抗を感じることもあります。
福祉用具は本人のできないことを代わりに行うためだけではなく、本人が自分の力を使いながら安全に移動し、外出や生活範囲を維持するための手段として考えることが重要です。
ここでは、パーキンソン病により歩行が不安定になっているものの、杖で歩き続けたい気持ちがあり、歩行器等の福祉用具導入を検討している利用者を例に、第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 杖歩行が不安定になってきている
- 転倒やふらつきが増えている
- 長い距離を歩くことが難しくなっている
- 歩行器やシルバーカー等の使用を検討している
- 本人が福祉用具の使用に抵抗を感じている
- 家族は安全のため歩行器を使ってほしいと考えている
- 福祉用具を活用して外出や自立した移動を続けたい
担当ケースに近い部分を選び、本人の歩行能力、使用場所、住環境、移動距離、本人の受け止め方、家族の希望などに合わせて調整してください。
※福祉用具は本人の身体状況や住環境に合っていることが重要です。歩行状態や操作方法を確認し、必要に応じて福祉用具専門相談員、リハビリ職等と連携して選定・調整してください。
利用者像の例
- 76歳・男性・要介護2
- 妻と二人暮らし
- パーキンソン病
- 食事・排泄・更衣は概ね自立
- 屋内では杖や家具等を利用して移動している
- 歩幅が小さく、方向転換時にふらつくことがある
- 屋外では疲労すると歩行が不安定になる
- 半年以内に屋外で一度転倒したことがある
- 以前は近所のスーパーまで歩いて買い物に行っていた
- 最近は妻の付き添いがないと外出しなくなっている
- 家族は歩行器の使用を勧めている
- 本人は「まだ杖で歩ける。歩行器は年寄りみたいで嫌だ」と話している
- 一方で「また自分で近所まで歩きたい」という希望がある
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|歩くことを続けたい場合
道具に頼りきるのではなく、自分の足で歩ける力を使いながら、できるだけ自分で移動したい。
別の表現①|歩行器に抵抗がある場合
歩行器を使うことにはまだ抵抗があるが、安全に歩いて外へ出られる方法なら考えてみたい。
別の表現②|外出を続けたい場合
また自分で近所を歩いたり買い物に行ったりできるようになりたい。
家族の意向
おすすめ文例|安全を重視する場合
転倒が心配なので、本人が納得できる方法で安全に歩けるようにしてほしい。
別の表現|本人の気持ちも尊重したい場合
歩行器を無理に使わせるのではなく、本人が使ってみて歩きやすいと感じられる方法を一緒に考えたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は妻と住み慣れた自宅で生活し、自分の足で歩きながらできる限り自立した生活を続けたいと希望している。
現在も屋内では杖等を使用して移動できているが、パーキンソン病による小刻み歩行や方向転換時の不安定さがあり、屋外では疲労に伴って歩行状態が低下することがある。
転倒経験後は妻の付き添いがなければ外出することが減っているが、本人には再び近所への買い物等を自分で行いたいという希望がある。
家族は歩行器の使用を希望している一方、本人は歩行器を使用することに対して「弱ったように感じる」と抵抗感を持っている。
本人の歩行能力や使用する場所を確認し、本人自身が安全性や使いやすさを実感できる福祉用具を検討することで、自立した移動と生活範囲の維持につなげる必要がある。
別の表現|外出継続を重視する場合
本人は歩行能力の低下により外出機会が減少しているが、近所への散歩や買い物を続けたいという希望を持っている。
現在の杖歩行だけでは屋外での安全性や持久力に不安があるため、本人の能力を活かしながらより安定して移動できる方法を検討する必要がある。
福祉用具を活動を制限するものではなく、本人が自分で歩き外出するための手段として本人と共有し、納得して使用できるよう支援する必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が自分の足で移動したいという希望を尊重し、現在の歩行能力を活かしながら安全に移動できる方法を検討する。
屋内・屋外それぞれの歩行状態や移動距離、住環境等を確認し、本人に合った福祉用具を必要に応じて検討する。
福祉用具の使用を一方的に勧めるのではなく、本人が実際に使用し、安全性や使いやすさを確認しながら選択できるよう支援する。
福祉用具を活用して本人が自分で移動できる範囲を維持し、買い物や散歩等の本人にとって意味のある活動を続けられるよう支援する。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人の歩行能力と希望を踏まえ、安全に移動できる福祉用具や環境を検討する。
本人が納得して福祉用具を活用し、自分で歩く機会と外出・生活範囲を維持できるよう支援する。
第2表の文例
福祉用具を検討する場合には、「歩行器を使うこと」そのものを目標にせず、福祉用具を使うことで本人がどのような生活を続けたいのかを明確にします。
課題① 自分の力を使いながら安全に歩きたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
自分の足で歩く力を使いながら、転倒を心配しすぎず安全に移動したい。
ニーズの別表現|自立を重視する場合
必要な道具を上手に使いながら、自分で移動する生活を続けたい。
長期目標
本人に合った移動方法を活用し、安全に自宅内外を移動できる。
短期目標
本人の歩行状態に合った福祉用具を使用し、安定して歩行できる場面を増やすことができる。
サービス内容
屋内・屋外の歩行状態、方向転換、疲労、移動距離等を確認し、本人に合った移動方法や福祉用具を検討する。
課題② 自分が納得できる福祉用具を使いたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
家族に言われたから使うのではなく、自分が使いやすいと思える道具を選びたい。
長期目標
本人が福祉用具の目的と使い方を理解し、納得して生活の中で活用できる。
短期目標
実際に福祉用具を試し、本人が安全性や使いやすさを確認したうえで使用方法を選択できる。
サービス内容
本人の希望を確認しながら複数の移動方法を検討し、実際の生活場面で操作性や安全性を確認する。
本人が感じた使いやすさや不安を確認し、必要に応じて用具や設定を見直す。
課題③ 安全に外へ出て買い物や散歩を続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
安全に歩ける方法を使って、また近所への買い物や散歩を続けたい。
長期目標
本人が安全な移動方法を活用し、希望する外出や地域での活動を継続できる。
短期目標
本人の体調と歩行状態に合わせて、無理のない距離の外出を行うことができる。
サービス内容
本人が行きたい場所や移動経路を確認し、福祉用具を活用して安全に外出できる方法を検討する。
外出時の疲労や歩行状態を確認し、距離や休憩方法を本人の状態に合わせて調整する。
課題④ 妻も転倒を心配しすぎず本人の移動を見守りたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
妻も本人が移動するたびに付き添わず、安全な方法で歩けることを見守りたい。
長期目標
本人が安全な移動方法を活用し、妻も過度な不安や付き添い負担なく生活できる。
短期目標
本人が一人で安全に移動できる場面と見守りが必要な場面を本人・妻・関係者で共有できる。
サービス内容
福祉用具使用時の歩行状態を家族と共有し、本人が安全に自立できる場面では必要以上に付き添わず見守れるよう支援する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 自分の足で歩く力を使いながら、安全に移動したい。 | 本人に合った移動方法で安全に自宅内外を移動できる。 | 本人に合った福祉用具を使用し、安定して歩行できる場面を増やせる。 | 歩行状態・疲労・移動距離等を確認し、適切な移動方法を検討する。 |
| 自分が使いやすいと思える福祉用具を選びたい。 | 福祉用具の目的を理解し、本人が納得して活用できる。 | 実際に試し、安全性や使いやすさを確認して選択できる。 | 生活場面で操作性を確認し、本人の意見を踏まえて調整する。 |
| 安全な方法で近所への買い物や散歩を続けたい。 | 安全な移動方法を活用し、希望する外出を継続できる。 | 体調に合わせ、無理のない距離の外出を行える。 | 外出経路・距離・疲労等を確認し、安全な活動方法を検討する。 |
| 妻も移動のたびに付き添わず、安全に見守りたい。 | 本人が安全に移動し、妻も過度な付き添い負担なく生活できる。 | 一人で安全に移動できる場面と見守りが必要な場面を共有できる。 | 福祉用具使用時の能力を確認し、本人・家族で支援方法を共有する。 |
パーキンソン病・歩行器導入のケアプランで意識したいポイント
福祉用具を使うこと自体を目標にしない
歩行器を使用することは手段です。買い物へ行く、散歩する、自宅内を自分で移動するなど、本人が福祉用具を使って何を続けたいのかを確認します。
本人の抵抗感にも理由がある
「まだ必要ない」「年寄りみたいで嫌だ」と話す背景には、自分の身体能力への思いや自立へのこだわりがある場合があります。単に拒否として扱わず本人の思いを確認します。
実際に使って判断する
説明だけでは本人が使用感を想像しにくいことがあります。可能であれば実際の生活場面で使用し、本人自身が歩きやすさや安心感を確認できるようにします。
屋内と屋外を分けて考える
屋内では杖、屋外では歩行器など、場所によって適した移動方法が異なる場合があります。「一つの用具を常に使う」と決めつけず生活場面ごとに考えます。
住環境との相性を確認する
本人に合った歩行器でも、廊下が狭い、段差がある、方向転換する場所がないなど、住環境によって使いにくい場合があります。実際の動線を確認します。
用具導入後も状態を確認する
福祉用具を導入して終わりではありません。操作方法、歩行状態、疲労、転倒・ヒヤリ場面、本人の使用感等を確認し、必要に応じて再調整します。
福祉用具で活動範囲を広げる視点を持つ
福祉用具は「危ないから使わせるもの」ではなく、本人が自分で動ける範囲を保ったり広げたりするための手段として考えることが重要です。
文例を使うときのポイント
- 現在の杖歩行や歩行状態を確認する
- 屋内と屋外の移動を分けて考える
- 方向転換や疲労時の状態を見る
- 本人が福祉用具をどう感じているか確認する
- 本人が実際に試す機会を作る
- 住環境や移動経路との相性を確認する
- 福祉用具を使って続けたい活動を明確にする
- 導入後も操作性や歩行状態を見直す
まとめ
パーキンソン病によって歩行が不安定になり福祉用具を検討する場合には、「危ないから歩行器を使う」と一方的に決めるのではなく、本人がどのような生活を続けたいのかを確認することが重要です。
本人が福祉用具に抵抗を感じている場合には、その気持ちを尊重し、実際に使用して歩きやすさや安全性を確認できるようにします。
本人の身体能力や住環境に合った用具を活用し、買い物や散歩、自宅内の移動など本人にとって意味のある生活を続けることが、福祉用具を活かしたケアプランにつながります。
関連するケアプラン文例
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