パーキンソン病のある利用者では、食事動作がゆっくりになる、飲み込みに時間がかかる、食事中にむせる、食べ終わるまでに時間を要するなど、食事場面に変化がみられることがあります。
こうしたケースでは、単に「むせないようにする」「早く食べてもらう」ことを目標にするのではなく、本人が安全に食事を楽しみ、必要な栄養・水分を確保しながら、自分で食べる力を活かす視点が重要です。
ここでは、パーキンソン病があり、食事に時間がかかるようになり、ときどきむせがみられる利用者を例に、第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- パーキンソン病があり食事時間が長くなっている
- 飲み込みに時間がかかることがある
- 食事や水分でむせることがある
- 食事の後半になると疲れてくる
- 以前より食事量や水分量が減っている
- 家族が誤嚥を心配して食事介助を増やしている
- 本人はできる限り自分で食べたいと希望している
担当ケースに近い部分を選び、本人の食事動作、姿勢、食形態、嚥下状態、食事量、水分量、本人・家族の希望などに合わせて調整してください。
※むせの増加、湿った声、食事量・体重の低下、発熱、食事中の呼吸状態の変化などがみられる場合には、食事方法を自己判断で変更するだけでなく、必要に応じて医師、歯科医師、言語聴覚士等の専門職へ相談してください。
利用者像の例
- 78歳・男性・要介護2
- 妻と二人暮らし
- パーキンソン病
- 屋内移動は歩行器等を使用
- 食事は基本的に自力摂取している
- 箸やスプーンの操作に時間がかかることがある
- 食事開始時は比較的スムーズだが、後半になると疲労がみられる
- 水分摂取時にときどきむせることがある
- 一食に40~50分程度かかることが増えている
- 妻は誤嚥を心配し、途中から食べさせることが増えている
- 本人は「時間がかかっても自分で食べたい」と話している
- 以前から食事を楽しみにしており、特に魚料理を好んでいる
- 最近は食事量がやや減っている
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|自分で食べたい場合
食べるのに時間はかかるが、自分で食べられるうちはできるだけ自分で食べたい。
別の表現①|食事を楽しみたい場合
好きな物をこれからも口から食べて、妻と一緒に食事を楽しみたい。
別の表現②|急かされたくない場合
食べるのが遅くなっているので、急かされず自分のペースで食事をしたい。
家族の意向
おすすめ文例|安全と自立を両立したい場合
むせることがあるので心配だが、本人が自分で食べたいという気持ちも大切にしながら、安全に食事を続けてほしい。
別の表現|食事量を心配している場合
食事に時間がかかり、途中で疲れて食べる量が減ることがある。無理なく必要な食事と水分が取れるようにしたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は食事を生活の楽しみとしており、時間がかかってもできる限り自分で食べたいと希望している。現在も食事は自力摂取できているが、パーキンソン病による動作緩慢等から食具操作や一連の食事動作に時間を要するようになっている。また、食事後半には疲労がみられ、食事量が減ることや、水分摂取時にむせる場面がみられている。妻は誤嚥を心配し、食事途中から介助することが増えているが、本人は自分で食べられる部分は自分で続けたいという思いを持っている。本人が安全に自力摂取できる姿勢や環境、食事ペース等を確認し、自分で食べる力を活かしながら、必要な栄養・水分摂取につなげる必要がある。また、むせや食事量、体重、体調等の変化を継続して確認し、必要に応じて専門職と連携する必要がある。
別の表現|低栄養・脱水予防を重視する場合
本人は自分で食事を摂取する能力を保っているが、動作緩慢や疲労により食事時間が長くなり、一食を食べきれないことが増えている。また水分摂取時にむせることがあり、本人・家族ともに食事への不安を感じている。自力摂取能力を活かしながら、安全な姿勢や食事環境を整え、摂取量や水分量、体重等を確認することで、本人が食事を楽しみながら健康状態を維持できるよう支援する必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が自分で食べたいという思いを尊重し、現在行えている食事動作をできる限り継続できるよう支援する。本人が落ち着いて食事できる姿勢と環境を整え、十分な食事時間を確保する。疲労や動作状態に応じて必要な部分のみ支援し、食事量・水分量・むせ・体重・体調等の変化を継続して確認する。嚥下状態や摂取状況に変化がみられる場合には、必要に応じて医療・歯科・リハビリ等の専門職と連携し、本人が安全に食事を楽しめる生活を支援する。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人の自力摂取能力を活かし、安全な姿勢と十分な食事時間を確保しながら食事を支援する。摂取量、水分量、むせ、体重等を確認し、状態変化時には必要な専門職と連携して、安全に食事を楽しめる生活を支える。
第2表の文例
嚥下機能の低下や食事時間の延長がみられる場合も、「むせないこと」だけを目標にするのではなく、本人が自分で食べる力を活かしながら、安全に食事を楽しみ、必要な栄養・水分を取れることを目標として考えます。
課題① 自分で食べられることは自分で続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
時間がかかっても、自分で食べられるうちは自分の力で食事を続けたい。
ニーズの別表現|自立を重視する場合
すべて食べさせてもらうのではなく、自分でできる食事動作を続けたい。
長期目標
本人が現在の食事動作能力を活かし、自分で食べる生活を継続できる。
短期目標
食事しやすい姿勢や環境の中で、自分で食具を操作し、自分のペースで食事を行うことができる。
サービス内容
本人が安定して食事できる姿勢や食事環境を整え、十分な食事時間を確保する。本人が自分で行える食事動作は見守り、疲労等により難しい部分のみ必要な支援を行う。
課題② むせに注意しながら安心して食事を楽しみたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
むせることを心配しすぎず、安全に好きな食事を楽しみたい。
長期目標
本人の嚥下状態に配慮した方法で、安全に食事を楽しむことができる。
短期目標
食事中のむせや声の変化、疲労等を確認しながら、落ち着いて食事を摂ることができる。
サービス内容
食事中のむせ、咳、声の変化、食事ペース等を確認し、本人を急かさず落ち着いて摂取できる環境を整える。状態変化がみられる場合には必要な専門職へ情報共有する。
課題③ 必要な食事と水分を取り体調を保ちたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
食事に時間がかかっても必要な量を無理なく食べ、水分も取りながら元気に過ごしたい。
長期目標
必要な栄養・水分摂取を保ち、体調や体重を大きく崩さず生活できる。
短期目標
食事量・水分量・体重等の状態を確認しながら、無理なく食事を継続できる。
サービス内容
食事摂取量、水分量、食事時間、体重等の変化を確認する。食事後半の疲労等にも配慮し、本人が無理なく摂取できるよう支援方法を検討する。
課題④ 妻も食事のたびに不安を抱えず一緒に食事を楽しみたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
妻もむせることを心配して付ききりにならず、本人と一緒に穏やかに食事を楽しみたい。
長期目標
本人に合った食事支援方法が共有され、妻も過度な不安を抱えず食生活を支えることができる。
短期目標
本人が自分で食べられる部分と支援が必要な場面を妻・関係者で共有できる。
サービス内容
本人が食べやすい姿勢、食事ペース、疲れやすい場面等を共有し、家族が必要以上に食事介助を行わなくてもよいよう支援方法を整理する。家族の不安についても確認する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 時間がかかっても、自分で食べられるうちは自分で食事を続けたい。 | 現在の食事動作能力を活かし、自分で食べる生活を継続できる。 | 食事しやすい姿勢で、自分のペースで食事を行うことができる。 | 食事姿勢・環境・時間を整え、自分で行える動作は見守る。 |
| むせを心配しすぎず、安全に好きな食事を楽しみたい。 | 嚥下状態に配慮した方法で安全に食事を楽しむことができる。 | むせや疲労等を確認しながら落ち着いて食事できる。 | 食事中のむせ・声・疲労等を確認し、変化時には専門職へ共有する。 |
| 必要な食事と水分を取り、元気に生活したい。 | 必要な栄養・水分を確保し、体調や体重を維持できる。 | 摂取量や体重を確認しながら無理なく食事を継続できる。 | 食事量、水分量、食事時間、体重等を確認し、状態に合わせて支援する。 |
| 妻も食事のたびに不安にならず、一緒に食事を楽しみたい。 | 妻が過度な不安を抱えず、本人の食生活を支援できる。 | 自力摂取できる部分と支援が必要な場面を共有できる。 | 本人に合った食事支援方法を共有し、家族の不安や負担も確認する。 |
パーキンソン病・嚥下機能低下のケアプランで意識したいポイント
「食べられる・食べられない」だけで評価しない
食事を完食できていても、非常に時間がかかっている、途中で疲れている、むせが増えているなどの変化がある場合があります。摂取量だけではなく食事場面全体を確認します。
本人の自力摂取能力を残す
食事時間が長いという理由だけで全介助にすると、本人が自分で食べる機会を失うことがあります。食具操作や口まで運ぶ動作など、本人が行える部分はできる限り活かします。
食事を急かさない
十分な食事時間を確保し、本人のペースを尊重します。介護側の都合で次々と食物を口へ運ぶのではなく、本人の咀嚼・嚥下のペースを確認することが重要です。
食事後半の疲労を見る
食事開始時には問題がなくても、後半になると姿勢が崩れたり食事動作が遅くなったりする場合があります。食事時間と疲労の関係も確認します。
むせだけで嚥下状態を判断しない
むせの有無だけではなく、食後の声の変化、食事時間、摂取量、体重、体調等も含めて継続的に確認します。変化がある場合には専門職へ具体的な状況を伝えます。
食形態を自己判断だけで変更しない
食べにくそうだからという理由だけで食形態や水分の状態を大きく変更するのではなく、本人の嚥下状態や希望を踏まえ、必要に応じて専門職と相談しながら検討します。
「食べる楽しみ」をケアプランに残す
食事は栄養摂取だけではなく、本人の楽しみや家族との交流にもつながります。好きな料理、家族との食卓、本人が大切にしてきた食習慣などもケアプランに反映します。
文例を使うときのポイント
- 本人がどの食事動作まで自分で行えるか確認する
- 食事姿勢や食具の使いやすさを見る
- 食事時間と後半の疲労を確認する
- むせや咳、声の変化等を確認する
- 食事量・水分量・体重の変化を見る
- 本人を急かさず十分な食事時間を確保する
- 食形態等を支援者だけの判断で変更しない
- 本人が好きな食事や食事の楽しみも確認する
まとめ
パーキンソン病によって食事に時間がかかったり、嚥下機能の低下が心配されたりする場合には、「むせないこと」だけを目標にせず、本人が自分で食べる力をどのように活かすかを考えることが重要です。
本人が安定して食事できる姿勢や環境を整え、十分な時間を確保しながら、摂取量、水分量、むせ、疲労、体重等の変化を確認します。
安全面に配慮しながらも、本人の好きな食事や家族と食卓を囲む時間を残し、「食べる楽しみ」と健康管理を両立することが、その人らしいケアプランにつながります。
関連するケアプラン文例
- ケアプラン文例【パーキンソン病・すくみ足】
- ケアプラン文例【パーキンソン病・オンオフ】
- 個別機能訓練計画書【パーキンソン病】


コメント