大腿骨頸部骨折後の生活では、家族が転倒を心配して常時介助し、本人の動く機会と家族の休息がともに失われることがあります。
本記事では、本人ができる立ち上がりや移乗を生かし、夫婦で無理のない介助方法と休息を整える事例を紹介します。
ここでは、介護負担の軽減を家族だけの都合にせず、本人の自立と夫婦双方の生活を支える課題として位置づけます。を例に紹介します。
この記事が参考になるケース
- 本人は夫に迷惑をかけたくないため、痛みや自分でできることを十分に伝えずにいる。
家族負担を介助量だけで捉えず、本人と家族が互いに遠慮している状況、役割、睡眠、身体症状、相談のしやすさを確認する。
移乗・歩行介助は本人の能力と住環境に合わせて専門職が評価し、家族が身体を持ち上げる方法を自己流で続けない。
利用者像の例
- 80歳女性。大腿骨頸部骨折後、手すりがあれば立ち上がり、歩行器で室内移動できる。
- 夫と二人暮らしで、本人は洗面や食卓まで自分で移動したいと希望している。
- 夫は再転倒を恐れ、移動のたびに腕を強く支えており、腰痛と睡眠不足が生じている。
- 本人は夫に迷惑をかけたくないため、痛みや自分でできることを十分に伝えずにいる。
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例
手すりを使えば立てるので、できるところは自分でやりたい。夫にも自分の時間を持ってほしい。
家族の意向
おすすめ文例
転ばせるのが怖くて手を出し過ぎている。腰を痛めない見守り方と、休める時間がほしい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は手すりを使った立ち上がりと歩行器移動が可能で、日常動作を自分で行う意欲がある。
夫は再転倒への不安から常時身体介助し、腰痛と睡眠不足が生じ、本人も遠慮して希望を伝えにくい。
専門職と介助・見守り範囲を整理し、本人が合図して動く方法、福祉用具、サービスによる家族の休息を組み合わせる必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人の動作能力を再評価し、自分で行う部分と見守り・介助が必要な部分を夫婦で共有する。理学療法士等から安全な立ち位置と声かけを学び、夫が抱え上げない方法へ変更する。通所や訪問等を活用して本人の活動機会と夫の休息時間を確保し、双方の負担感を確認する。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人の能力に応じて自立・見守り・介助の範囲を夫婦で共有し、安全な介助方法とサービスによる休息を組み合わせて双方の負担を軽減する。
第2表の文例
本人の能力を生かす見守りへ切り替え、夫婦双方の身体的・心理的負担を軽減する。
課題① 自分でできる立ち上がりと移動を続けたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
自分でできる立ち上がりと移動を続けたい。
長期目標
手すりと歩行器を使い、必要な見守りで生活場所へ移動できる。
短期目標
本人の合図で立ち上がり、夫が身体を引かずに洗面所まで移動できる。
サービス内容
理学療法士等が動作を評価し、本人の手順、夫の立ち位置、声かけ、介助が必要な場面を実地で共有する。
課題② 夫に遠慮せず、必要な手伝いと自分で行いたいことを伝えたい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
夫に遠慮せず、必要な手伝いと自分で行いたいことを伝えたい。
長期目標
夫婦で介助範囲を相談し、本人の希望に沿った支援を受けられる。
短期目標
移動前に本人が「見ていて」「手伝って」と希望を言葉や合図で伝えられる。
サービス内容
支援者は本人に直接希望を確認し、家族の説明だけで介助量を決めず、双方の認識を調整する。
課題③ 夫婦それぞれが休息と自分の時間を確保したい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
夫婦それぞれが休息と自分の時間を確保したい。
長期目標
サービスを活用し、夫が定期的に休息でき、本人も安心して活動できる。
短期目標
週1回の通所等を利用し、夫が連続した休息時間を持てる。
サービス内容
ケアマネジャーは本人の活動希望と夫の休息希望を確認し、利用後の疲労・安心感・負担感をモニタリングする。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 自分でできる立ち上がりと移動を続けたい。 | 手すりと歩行器を使い、必要な見守りで生活場所へ移動できる。 | 本人の合図で立ち上がり、夫が身体を引かずに洗面所まで移動できる。 | 理学療法士等が動作を評価し、本人の手順、夫の立ち位置、声かけ、介助が必要な場面を実地で共有する。 |
| 夫に遠慮せず、必要な手伝いと自分で行いたいことを伝えたい。 | 夫婦で介助範囲を相談し、本人の希望に沿った支援を受けられる。 | 移動前に本人が「見ていて」「手伝って」と希望を言葉や合図で伝えられる。 | 支援者は本人に直接希望を確認し、家族の説明だけで介助量を決めず、双方の認識を調整する。 |
| 夫婦それぞれが休息と自分の時間を確保したい。 | サービスを活用し、夫が定期的に休息でき、本人も安心して活動できる。 | 週1回の通所等を利用し、夫が連続した休息時間を持てる。 | ケアマネジャーは本人の活動希望と夫の休息希望を確認し、利用後の疲労・安心感・負担感をモニタリングする。 |
家族介護負担を扱うケアプランのポイント
本人の能力を再評価する
家族の不安をそのまま全介助へ置き換えず、本人が安全に行える工程を専門職と確認する。
双方へ別々に確認する
本人の遠慮と家族の抱え込みを見逃さず、それぞれの希望と負担を言葉にできる機会を設ける。
休息を具体化する
漠然と負担軽減とせず、頻度、時間、過ごし方、サービス利用後の変化を評価する。
文例を使うときのポイント
- 実際のベッド、椅子、トイレで介助方法を確認し、家族へ実技で共有する。
- 本人が自力で行える動作を定期的に見直し、過介助を防ぐ。
- 家族の腰痛、睡眠、気持ちの余裕もモニタリング項目に含める。
まとめ
家族負担の軽減は、本人の能力を奪うことではなく、できる動作を生かして必要な支援へ絞ることから始まります。
専門職による介助方法の共有と休息機会を組み合わせ、本人と家族双方が無理なく暮らせる計画にします。
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