パーキンソン病のある利用者では、歩き始めや方向転換、狭い場所を通る際などに足が出にくくなったり、姿勢が不安定になったりすることで、転倒への不安が強くなることがあります。
一方で、転倒を心配するあまり家族が必要以上に介助したり、本人自身が外出や家事を控えたりすると、これまで続けてきた生活や役割が失われてしまうことがあります。
ここでは、パーキンソン病によるすくみ足や歩行不安定があり、転倒を心配しながら夫婦で在宅生活を続けている利用者を例に、第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- パーキンソン病があり歩き始めに足が出にくい
- 方向転換や狭い場所で動きにくくなる
- 屋内で転倒したことがある
- 転倒への不安から外出が減っている
- 家族が心配して必要以上に手を出している
- 本人はできることを自分で続けたい
- 歩行能力や生活動作をできるだけ維持したい
担当ケースに近い部分を選び、本人の動きやすい時間帯、歩行状態、転倒歴、住環境、本人・家族の希望などに合わせて調整してください。
※歩行状態や転倒頻度が急に変化した場合には、病状だけでなく体調、服薬状況、血圧、痛み、住環境等も含めて確認し、必要に応じて医療職等と連携してください。
利用者像の例
- 77歳・男性・要介護2
- 妻と二人暮らし
- パーキンソン病
- 食事・排泄・更衣は概ね自立
- 屋内は歩行器等を使用して移動している
- 歩き始めや方向転換時に足が出にくいことがある
- 玄関や狭い場所で動作が止まりやすい
- 半年以内に自宅内で転倒したことがある
- 妻は転倒を心配し、移動時にすぐ手を貸すことが増えている
- 本人は「できることまでやってもらいたくない」と話している
- 以前は庭の手入れや近所への散歩を楽しんでいた
- 最近は転倒への不安から外出が減っている
- 体調や時間帯によって動きやすさに差がみられる
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|自分で動きたい場合
動きにくいことはあるが、できることまで人にしてもらいたくない。自分で歩いて、自分のことはできるだけ自分でしたい。
別の表現①|外出を続けたい場合
転ぶことは心配だが、家の中だけで過ごすのではなく、また近所を歩いたり外へ出たりしたい。
別の表現②|役割を続けたい場合
以前のように庭を見たり、家で自分にできることを続けながら暮らしたい。
家族の意向
おすすめ文例|転倒を心配している場合
また転倒しないか心配でつい手を出してしまうが、本人ができることはできるだけ自分で続けてもらいたい。
別の表現|夫婦での生活を続けたい場合
本人の動ける力をできるだけ維持し、私も無理をしすぎず夫婦で今の生活を続けたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は妻と住み慣れた自宅で生活を続け、身の回りのことはできるだけ自分で行いたいと希望している。現在も食事、排泄、更衣等は概ね自立しており、歩行器等を使用することで屋内移動も行えている。一方、パーキンソン病による動作のしにくさがあり、歩き始めや方向転換、玄関等の狭い場所では足が出にくくなることがある。自宅内での転倒を経験して以降、本人・妻ともに転倒への不安が強くなり、妻が移動時に先回りして介助する場面や、本人自身が外出を控える場面が増えている。本人が現在行えている移動・生活動作を活かしながら、動きにくい場面や時間帯を把握し、住環境や移動方法を整えることで、安全と自立の両立を図る必要がある。また、転倒への不安だけで活動を制限せず、本人が大切にしてきた散歩や庭の手入れ等を可能な範囲で継続できるよう支援する必要がある。
別の表現|活動性低下を重視する場合
本人はパーキンソン病による歩行の不安定さがあるものの、身の回りの動作には自ら行えることが多く、自立した生活を続けたいという意欲がある。一方、転倒経験をきっかけに外出や家の中での活動が減少しており、今後さらに活動量が低下することが懸念される。本人が安全に行える動作と支援が必要な場面を整理し、必要以上の介助を避けながら身体機能と生活範囲を維持する必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が自分でできる生活動作や移動を継続し、住み慣れた自宅で自立した生活を送れるよう支援する。歩き始めや方向転換等、動作が不安定になりやすい場面を把握し、本人に合った動作方法や住環境を整える。本人の動きを急がせず、必要以上の介助を避け、本人自身が行える場面を確保する。体調や時間帯による動きやすさの変化を確認するとともに、転倒への不安から活動を過度に制限しないよう配慮し、散歩や家庭内での役割等を可能な範囲で継続できるよう支援する。
別の表現|短めにまとめたい場合
本人が現在行えている移動・生活動作を活かし、動きにくい場面への支援と住環境の調整により安全な生活を支える。転倒への不安から活動を制限しすぎず、本人が自分でできることや外出・役割を継続できるよう支援する。
第2表の文例
パーキンソン病ですくみ足や転倒リスクがある場合も、「転倒しないこと」だけを目標にするのではなく、本人が安全に移動しながら、自分でできる生活動作や外出を続けられることを目標として考えます。
課題① 自分でできる移動をこれからも続けたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
動きにくいことがあっても、自分でできる移動はこれからも自分で続けたい。
ニーズの別表現|自立を重視する場合
必要以上に人に支えてもらわず、自分の力を使いながら家の中を移動したい。
長期目標
本人の現在の移動能力を活かし、安全に自宅内を移動して生活できる。
短期目標
動き出しや方向転換時に慌てず、本人に合った方法で安全に移動できる。
サービス内容
歩き始め、方向転換、狭い場所等の動きにくい場面を確認し、本人が安全に行える動作方法を一緒に確認する。本人が自分で動ける場面では必要以上に介助せず見守る。
課題② 転倒への不安を減らし安心して生活したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
転ぶことを心配しすぎず、安心して家の中を動けるようになりたい。
長期目標
本人が安全な移動方法を身につけ、転倒への過度な不安を感じず生活できる。
短期目標
転倒しやすい場所や動作を本人・家族が把握し、安全な環境で移動できる。
サービス内容
移動経路、段差、家具配置、足元環境等を確認し、本人が安全に移動しやすい環境を整える。転倒やヒヤリとした場面を確認し、必要な支援方法を見直す。
課題③ 外へ出たり好きな活動を続けたりしたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
転倒が心配でも家の中だけで過ごさず、散歩や庭の手入れなど好きなことを続けたい。
長期目標
本人が安全に配慮しながら外出や趣味活動を続け、活動的な生活を維持できる。
短期目標
体調や動きやすさに合わせて、散歩や庭を見るなど本人が楽しめる活動を継続できる。
サービス内容
本人がこれまで楽しんできた活動を確認し、安全に実施できる方法や環境を検討する。体調や歩行状態に合わせて活動量を調整し、過度な活動制限を避ける。
課題④ 妻も介助しすぎず無理なく生活を支えたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
妻も転倒を心配して何でも手伝うのではなく、本人ができることを見守りながら無理なく生活したい。
長期目標
本人の自立した動作が尊重され、妻も過度な介助負担を抱えず夫婦で在宅生活を継続できる。
短期目標
本人が自分で行える動作と介助が必要な場面を妻・関係者で共有できる。
サービス内容
本人が安全に行える動作と見守り・介助が必要な場面を整理し、家族と共有する。妻が先回りして介助しすぎずに済むよう、本人に合った見守り方法を一緒に確認する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 動きにくいことがあっても、自分でできる移動は自分で続けたい。 | 現在の移動能力を活かし、安全に自宅内を移動して生活できる。 | 動き出しや方向転換時に慌てず、安全に移動できる。 | 動きにくい場面を確認し、本人に合った移動方法を確認する。自分で動ける場面は見守る。 |
| 転ぶことを心配しすぎず、安心して家の中を動きたい。 | 安全な移動方法を身につけ、過度な不安なく生活できる。 | 転倒しやすい場所や動作を把握し、安全な環境で移動できる。 | 移動経路や住環境を確認し、転倒・ヒヤリ場面に応じて環境や支援方法を見直す。 |
| 家の中だけで過ごさず、散歩や庭の手入れなど好きなことを続けたい。 | 安全に配慮しながら外出や趣味活動を継続できる。 | 体調に合わせて本人が楽しめる活動を続けられる。 | 本人の生活歴や希望を確認し、安全に活動できる方法と環境を整える。 |
| 妻も何でも手伝わず、本人のできることを見守りながら生活したい。 | 本人の自立が尊重され、妻も過度な介助負担なく生活を継続できる。 | 自分でできる動作と介助が必要な場面を共有できる。 | 本人の能力と必要な支援を整理し、家族が適切に見守れるよう支援する。 |
パーキンソン病・すくみ足のケアプランで意識したいポイント
「歩ける・歩けない」の二択で評価しない
同じ利用者でも、場所、時間帯、動作の種類によって動きやすさが異なる場合があります。「歩行介助が必要」とまとめるのではなく、どの場面なら自分で行えるのかを具体的に確認します。
すくみ足が起こる場面を具体的に確認する
歩き始め、方向転換、狭い場所への出入りなど、本人が特に動きにくい場面を整理します。ケアプランには「すくみ足あり」だけではなく、どの生活場面で困っているのかを反映します。
転倒予防と活動制限を同じものにしない
転倒を防ぐためにすべての移動を介助したり外出をやめたりすると、本人が本来持っている能力を使う機会まで減ってしまいます。安全を確保しながら活動を続ける方法を考えます。
本人が動きやすい時間帯を把握する
本人が「朝は動きにくい」「この時間は動きやすい」など生活の中で感じている変化も重要な情報です。日による違いも含め、活動や外出を行いやすい時間帯を確認します。
できるADLまで家族が代行しない
家族が転倒を心配するあまり、立ち上がりや移動、更衣など本人が自分で行える動作まで介助している場合があります。本人が安全にできる部分と支援が必要な部分を分けて考えます。
本人にとって意味のある活動を残す
「歩行訓練をする」こと自体が生活目標ではありません。散歩、庭仕事、買い物、家の中での役割など、本人が歩く理由となる生活活動をケアプランに取り入れます。
状態変化を継続して確認する
歩行状態、転倒、日常生活動作、食事、排泄、体調等の変化を継続して確認し、現在の支援方法が本人に合っているかを見直します。
文例を使うときのポイント
- どの場面ですくみ足や動作困難があるのか具体的に確認する
- 本人が自分で行える移動・ADLを把握する
- 転倒した場所や状況を確認する
- 住環境や移動経路を確認する
- 体調や時間帯による動きやすさの違いを見る
- 転倒予防を理由に活動を制限しすぎない
- 本人が続けたい外出・趣味・役割を確認する
- 家族が介助しすぎていないかも確認する
まとめ
パーキンソン病によるすくみ足や転倒リスクがある場合、「転倒しないこと」だけをケアプランの目的にすると、本人の活動や自立まで制限してしまうことがあります。
歩き始めや方向転換など本人が動きにくい具体的な場面を把握し、住環境や動作方法を整えながら、現在行えている移動や生活動作をできる限り本人自身で継続できるよう支援することが重要です。
散歩や庭仕事など本人にとって意味のある活動を残し、本人の自立と安全、家族の安心を両立させることで、その人らしい在宅生活につながるケアプランになります。
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