パーキンソン病のある利用者では、夜間にトイレへ行く際、ベッドからの起き上がりや歩き始めに時間がかかり、暗い室内での移動によって転倒への不安が強くなることがあります。
また、本人が一人で移動することを家族が心配し、夜間の排泄のたびに付き添うようになると、家族の睡眠不足や介護負担につながる場合もあります。
ここでは、パーキンソン病があり夜間に複数回トイレへ行くため、本人・家族ともに転倒や睡眠への不安を感じている利用者を例に、第1表・第2表のケアプラン文例を紹介します。
この記事が参考になるケース
- 夜間に複数回トイレへ起きる
- 起き上がった直後に動きにくさがある
- 夜間の歩行や方向転換が不安定
- 暗い廊下や寝室からトイレまでの移動が心配
- 急いでトイレへ向かおうとすることがある
- 家族が毎回付き添って睡眠不足になっている
- 本人はできるだけ自分でトイレへ行きたい
担当ケースに近い部分を選び、夜間の排尿回数、起き上がり・歩行状態、トイレまでの距離、照明、本人・家族の希望などに合わせて調整してください。
※夜間排尿が急に増えた、排尿時の痛みや発熱がある、強いめまいやふらつきがみられる、意識が遠のくような症状がある場合などは、夜間動作だけの問題と考えず、必要に応じて医療職へ相談してください。
利用者像の例
- 81歳・男性・要介護2
- 78歳の妻と二人暮らし
- パーキンソン病
- 日中の排泄は概ね自立
- 屋内は歩行器等を使用している
- 夜間は2~3回程度トイレへ起きることがある
- ベッドから起き上がった直後は動き始めるまで時間がかかる
- 寝室からトイレまでは廊下を通る必要がある
- 夜間に急いで歩こうとしてふらついたことがある
- 転倒したことはないが、壁につかまったことが数回ある
- 妻が物音で目を覚まし、毎回トイレまで付き添っている
- 妻は最近睡眠不足と日中の疲れを感じている
- 本人は「トイレくらいはできるだけ自分で行きたい」と話している
本人・家族の意向の文例
本人の意向
おすすめ文例|自分でトイレへ行きたい場合
夜中でも自分で行けるうちは、自分でトイレへ行きたい。
別の表現①|転倒が心配な場合
夜は足が動きにくいことがあるので、転ばず安心してトイレへ行けるようにしたい。
別の表現②|妻を起こしたくない場合
トイレへ行くたびに妻を起こしたくないので、自分で安全に行ける方法を続けたい。
家族の意向
おすすめ文例|転倒を心配している場合
夜中に転倒しないか心配で毎回起きている。本人が安全に行ける方法があれば、できるところは自分で続けてもらいたい。
別の表現|睡眠不足がある場合
夜間の付き添いが続いて眠れない日が増えているので、本人の安全を保ちながら私も休めるようにしたい。
第1表の文例
利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
おすすめ文例
本人は妻と住み慣れた自宅で生活し、排泄についてもできる限り自分でトイレへ行きたいと希望している。
日中の排泄は概ね自立しているが、夜間は複数回トイレへ起きることがあり、起床直後には身体が動きにくく歩き始めに時間を要する。
夜間に急いでトイレへ向かおうとしてふらつき、壁につかまる場面もみられている。
妻は転倒を心配して毎回付き添っており、夜間の睡眠が中断されることで日中の疲労を感じている。
本人が夜間でも安全に排泄できるよう、起き上がりからトイレまでの移動、照明、歩行環境、排泄動作を具体的に確認するとともに、妻が常時付き添わなくてもよい支援方法を検討する必要がある。
別の表現|家族の睡眠負担を重視する場合
本人は夜間も自らトイレへ行きたいという希望があり、日中は排泄動作を自立して行えている。
一方、夜間は起き上がりや歩行が不安定となることがあり、妻が毎回付き添っているため睡眠不足と疲労が生じている。
本人が安全に行える夜間動作と支援が必要な場面を整理し、環境調整等を行うことで、本人の排泄の自立と妻の休息を両立する必要がある。
総合的な援助の方針
おすすめ文例
本人が夜間もできる限り自分で排泄できるよう、ベッドからの起き上がり、立位、歩き始め、トイレまでの移動、排泄動作を工程ごとに確認する。
夜間の移動経路、照明、足元、支持物等を整え、本人が急がず安全に移動できる環境を確保する。
本人が一人で行える場面と見守り・介助が必要な場面を家族と共有し、妻が毎回付き添わなくてもよい方法を検討する。
夜間排尿や体調の変化についても確認し、本人の安全と妻の睡眠・休息の両方を支える。
別の表現|短めにまとめたい場合
夜間の起き上がりから排泄までの動作と環境を確認し、本人が安全に自分でトイレへ行けるよう支援する。
本人に必要な見守り場面を整理し、家族の夜間付き添いと睡眠負担を軽減できる支援方法を検討する。
第2表の文例
夜間トイレの支援では、「一人で行かせない」「夜中に起きないようにする」と考えるのではなく、本人が安全に排泄できる方法と、家族が無理なく見守れる体制を考えます。
課題① 夜間もできるだけ自分でトイレへ行きたい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
夜中でも自分でできる排泄動作を続け、自分でトイレへ行きたい。
ニーズの別表現|自立を重視する場合
毎回付き添ってもらうのではなく、自分で安全に行けるところは自分で行いたい。
長期目標
本人の排泄能力を活かし、夜間も安全にトイレを使用できる。
短期目標
起き上がった後に慌てず、身体の状態を確認してから安全にトイレへ移動できる。
サービス内容
夜間の起き上がり、立位、歩き始め、トイレまでの移動を確認し、本人が安全に行える方法を整理する。
動き始めを急がず、姿勢が安定してから移動できるよう支援する。
課題② 夜でも見やすく歩きやすい環境で移動したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
夜でも足元が分かりやすく、安心してトイレまで移動できるようにしたい。
長期目標
夜間も本人が移動しやすい住環境が保たれ、安全に排泄できる。
短期目標
寝室からトイレまでの移動経路が整理され、夜間でも足元を確認して移動できる。
サービス内容
寝室からトイレまでの照明、床面、家具配置、支持物、歩行補助具の位置等を確認し、安全な移動経路を整える。
課題③ 夜間も慌てず落ち着いて排泄したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
尿意があっても慌てて動かず、自分のペースで安全に排泄したい。
長期目標
夜間も本人の動作状態に合わせて落ち着いて排泄できる。
短期目標
夜間の排泄時に急いで立ち上がったり歩いたりせず、安全な動作を行うことができる。
サービス内容
夜間の排泄状況と本人が急ぎやすい場面を確認し、十分な時間を確保して排泄できるよう支援方法を共有する。
課題④ 妻も毎晩付き添わず睡眠を確保したい
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
妻も夜間の排泄のたびに起きる生活を減らし、安心して睡眠を取りたい。
長期目標
本人の夜間排泄の安全が保たれ、妻も必要な睡眠と休息を確保できる。
短期目標
本人が一人で安全に行える場面と妻の見守りが必要な場面を共有できる。
サービス内容
本人の夜間動作を確認し、常時付き添う必要があるかを具体的に整理する。
妻の睡眠状況や疲労についても確認し、本人の安全と家族の休息を両立できる方法を検討する。
第2表の完成イメージ
上の文例をつなげると、実際の第2表では次のような形になります。
※表は全体のつながりを確認するためのものです。文章をコピーするときは、上の各文例にあるコピーボタンを利用してください。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 夜中でも自分でできる排泄動作を続け、トイレへ行きたい。 | 本人の排泄能力を活かし、夜間も安全にトイレを使用できる。 | 起き上がった後に身体の状態を確認し、安全に移動できる。 | 起き上がりからトイレまでの動作を確認し、安全な移動方法を整理する。 |
| 夜でも足元が分かりやすく、安心してトイレまで移動したい。 | 夜間も移動しやすい環境が保たれ、安全に排泄できる。 | 寝室からトイレまでの移動経路を安全に保てる。 | 照明、床面、家具、支持物、歩行補助具等を確認する。 |
| 尿意があっても慌てず、自分のペースで排泄したい。 | 夜間も本人の状態に合わせて落ち着いて排泄できる。 | 急いで立ったり歩いたりせず、安全に行動できる。 | 夜間の排泄状況を確認し、十分な時間を確保できる支援方法を共有する。 |
| 妻も排泄のたびに起きず、安心して睡眠を取りたい。 | 本人の安全が保たれ、妻も必要な睡眠・休息を確保できる。 | 一人で安全に行える場面と見守りが必要な場面を共有できる。 | 夜間動作と妻の睡眠状況を確認し、必要な支援方法を整理する。 |
パーキンソン病・夜間トイレのケアプランで意識したいポイント
日中の排泄能力だけで判断しない
日中は一人でトイレへ行けても、夜間は眠気や暗さ、起床直後の動きにくさなどによって状況が変わる場合があります。夜間の実際の動作を確認します。
ベッドを出た直後を確認する
起き上がった直後にすぐ歩こうとすると不安定になる場合があります。端座位や立位が安定するまでの様子も確認します。
「急ぐこと」が転倒につながっていないかを見る
尿意が強くなるまで我慢し、慌ててトイレへ向かうことで歩行が不安定になっている場合があります。夜間排泄の流れ全体を確認します。
暗さと移動経路を確認する
夜間は日中より視認性が低下します。照明だけでなく、床に物が置かれていないか、歩行補助具が手の届く位置にあるかなども確認します。
夜間排尿の回数にも注目する
何時頃に何回起きているのかを把握すると、本人の睡眠状況や家族の介護負担も見えやすくなります。急な変化があれば体調面についても確認します。
家族の睡眠もアセスメントする
本人が夜間に数回起きるたび家族も起きている場合、介助時間そのものは短くても慢性的な睡眠不足につながることがあります。
毎回の付き添いが本当に必要か確認する
転倒への不安から家族がすべての夜間移動に付き添っていることがあります。本人が一人で安全にできる動作と支援が必要な場面を具体的に分けることが重要です。
文例を使うときのポイント
- 夜間の排尿回数と時間帯を確認する
- ベッドからの起き上がり状態を見る
- 立ち上がった直後のふらつきを確認する
- 寝室からトイレまでの移動経路を見る
- 夜間照明や足元環境を確認する
- 急いで移動していないか確認する
- 家族の夜間付き添いと睡眠状況を見る
- 本人が一人でできる場面を残す
まとめ
パーキンソン病のある利用者が夜間にトイレへ行く場合には、排泄動作だけではなく、ベッドからの起き上がり、立ち上がり、歩き始め、移動経路まで一連の流れとして確認することが重要です。
夜間でも本人が自分で行える動作を残しながら、照明や足元環境を整え、急がず安全に移動できる方法を考えます。
さらに家族の夜間付き添いや睡眠不足にも目を向け、本人の排泄の自立と家族の休息を両立することが、在宅生活を長く続けるためのケアプランにつながります。
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